本誌２月号の特集でハンディ・レコーダー５機種の徹底比較を行った。そのタイミングには間に合わなかったが、今回TASCAMが新たなハンディ・レコーダー、DR-1を発売する。実売が30,000円前後ということなので、激戦価格帯に名乗りを上げたような形での登場だ。
1GBのSDカード付属
最長約18時間の長時間録音に対応
まずぱっと見たところ、ステレオ・コンデンサー・マイクが本体上部に搭載されており、黒地のスッキリした外観。液晶ディスプレイは大きめで、オレンジのバック・ライトも装備されている。さらに、ディスプレイとは別にピーク・インジケーターも用意。ボタン類は、巻き戻し／早送り／PLAY&PAUSE／大きな自照式のリング付きREC/PAUSEといったトランスポート類に加え、MENU／LOOP（ループ再生モード設定）／I/O（ループ区間設定）／PB CONTROL（再生スピード／ピッチ変更用）／FX（エフェクト用）などが並んでいる。録音メディアとして1GBのSDカードが付属し、SDカードのほかSDHCカード（4〜32GB）にも対応。1GBのSDメモリー・カードが付属するのは、この価格帯の機種では出色だろう。録音時間は、24ビット／48kHzのWAVファイルで約1時間2分、MP3（128kpps/44.1kHz）では約18時間38分の長時間録音も可能だ。付属のリチウムイオン電池を使用し、内蔵マイクでMP3録音した場合は、最高約7時間の長時間のレコーディングもできる。
ステレオ・マイクの角度を90°変更可能
マニュアル不要のシンプルな操作感
では早速使ってみよう。録音ボタンを押すとボタンの回りが赤く点滅する。これは分かりやすくていい。入力レベルは右サイドのダイアルで設定する。試しに録音した犬の鳴き声はすごくリアル。さらに、そのまま外へ持って出てみた。道行く車の音を録音したものを聴くと、左右の広がりが感じられる。逆相成分は少なく、はっきりした音像だ。ただし音質は硬め、低音は少なめだ。続いて筆者がフィールド・レコーディングでよく使用しているステレオ・マイクをMIC 1 IN端子に接続。インターナル・マイクと切り替えながら音質をチェック。今回使ったステレオ・マイクは低音が出るマイクなので、少し風が吹いてもものすごい音が入ってしまう。しかしインターナル・マイクに切り替えたとき音がすっきりしている印象を得た。このくらい低音がすっきりしている方が、ハンディ・レコーダーに不慣れなアマチュアの方には使いやすいかもしれない。また、マイク一体型ハンディ・レコーダーは総じて、ハンドリング・ノイズが入りやすい。手でホールドして使用する際は、手袋をすれば随分軽減できるし、床置きの場合はスポンジ状の土台に乗せるといいだろう。本体上部のステレオ・マイクは単一指向で、ノブを前に倒すことで収音方向を変えることができる。ノブが上にあるときの指向は上、ノブが前にあるときは前になる。つまり、収音方向は上向きから前方までの90度可変というわけだ。操作は特にマニュアルを読まなくても大丈夫なほどシンプル。本機には、7種類のリバーブなど計11種類のエフェクトも内蔵されている。しかも再生時にかけるタイプではなく、録音時のかけ録り用という大胆さ。また、録音時にオーバーダビング機能を使えば、カラオケに歌やソロを乗せるような使い方も可能。再生時のスピードやキーを変更できるPB CONTROL機能も搭載されており、速弾きの難解なフレーズを、ハーフ・スピードで聴いて耳コピするようなときに便利だろう。そのほか、メトロノーム機能やチューナー機能を搭載し、再生時にループしたいポイントをI/Oボタン１つで設定することもできる。以上のように、本機は楽器の練習などに大いに力を発揮してくれそうなその多機能ぶりが魅力。バンド少年たちにはたまらないハンディ・レコーダーと言えるだろう。
▲本体右側。左からOUTPUT VOLUMEキー、MIX BALA NCEキー、SETTINGキー、INPUTボリューム、ヘッドフォン・アウト／LINE OUT兼用端子（ステレオ・ミニ）
▲本体左側。左からDC IN 5V端子、SDカード・スロット、POWERキー、HOLDスイッチ
▲左写真は本体上部。左からMIC 1 IN端子（ステレオ・ミニ）、LINE IN端子。右写真は本体下部。モノラルのMIC 2 IN端子（フォーン）
SPECIFICATIONS
▪サンプリング周波数／44.1/48kHz
▪記録メディア／SDカード（64MB〜２GB）、SDHCカード（４〜32GB）
▪外形寸法／70（Ｗ）×27（D）×135（H）mm
▪重量／208g
