VESTAXから24ビットのフルデジタルDJミキサー、PMC-580Proが発売された。1990年代の中盤に発売された名機PMC-50の系譜に位置する同社のフラッグシップだ。各チャンネルに７種類の独立したエフェクトの搭載が最大の特徴で、マイクとマスターにも独立したエフェクトを搭載しており、最大で同時に６種類の異なるエフェクト処理が行える驚異的なモデルだ。
フェーダーや入出力など
細部まで配慮がなされた基本仕様
まずは基本的な仕様だが、メタリック・ブラックで統一されたデザインは高級感が漂う。各フェーダー類の配置も使い勝手が良く整然としている。本機から導入されたエフェクトも直感的に使えるよう分かりやすく配置。フェーダーの手ごたえも程良い重量感があり、個人的にはこれまでのPMC-50やPMC-55より好みだ。使用頻度の高いクロスフェーダー、PGMフェーダー（チャンネル・フェーダー）は交換可能となっている。入力はPHONOとラインがそれぞれ4系統、デジタル×２系統、USB×1系統と現在のDJ環境を考えた合理的な内容と言える。出力はマスター（フォーン／XLR／S/P DIFデジタル）、ブース（フォーン／XLR）、レコーディング（RCAピン）、センド＆リターン（RCAピン）などと十分だ。実際にアナログ／CDターンテーブルを各２台、コンピューターを１台接続して試してみたが出音も素晴らしい。デジタルらしいカチッとした音でありつつ、低域がやや強調されたような鳴りで"しんのある抜ける音"だ。また、入力ゲイン幅に余裕があるためか、各ソースのレベル差を調整しやすい。どのフェーダーも出力カーブが調整できるのでスクラッチやロング・ミックスなどのスタイルに応じて設定可能。このように細部まで配慮がなされており、使い勝手は申し分無い。
チャンネル／マスター／マイク用の
充実したエフェクト群を搭載
続いて、各チャンネルにスイッチで並ぶエフェクトは"ループ""ディレイ""ローカット・ディレイ""リバーブ""フランジャー""可変式フィルター"の6種類。使い勝手とフロア映えを両立したエフェクトが並ぶ。これらは"モーメンタリー""オルタネイト"の２モードで使用可能で、前者はボタンを押しているときだけエフェクトがかかり、後者はボタンでON/OFFするタイプだ。エフェクトからいずれかを１つセレクトし、ロータリー式ボリュームでエフェクト・レベルを調整して使用する。実際のプレイではこれにプラスして各チャンネルの3バンドEQ／アイソレーターの切り替えスイッチを駆使して多彩な演出をしていく。文章にすると少々ややこしいが、実際は極めてシンプルで、出音に対して思うがままにエフェクトをかけることが可能。原音とエフェクト音の混ざり具合も絶妙で、エフェクト・レベルの扱い次第でじんわりとした効果や、激しく盛り上げるような演出が作り出せて自在に音を操っている感触だ。驚くべきは、さらにマイクに３種類、マスターに11種類ものエフェクトを搭載していること。各チャンネルとマスターに異なるエフェクトを同時にかけてプレイしても音が濁らずに両者のキャラがきちんと立ちながら奇麗に音が出てくるし、原音がやせ衰えることも無い。また、その際に各チャンネルとマスターのエフェクトは本体のBPMカウンターと連動する。欲を言えばチャンネルとマスターで別々にタイムや周期が設定できればより技のバリエーションが増えるが、総評は"次世代を見据えた最良音モデル"と断言できる。筆者は現場ではエフェクトを多用するタイプなので、正直こういったDJミキサーを待ち望んでいた。これから先、アナログ／CD／コンピューターを併用しながら同時にエフェクトを駆使してリアルタイムで新たな音を紡ぎ出していくDJは、より増えていくだろう。そういう意味でも本機は"NEXT STYLE DJ"のためのミキサーと言えよう。
▲リア・パネル。左から電源スイッチ、ACアダプター用コネクター、マスター出力とブース出力（共にXLR／TSフォーン）、REC出力とセンド＆REC出力、REC入力、ライン入力×４系統、PHONO入力×４系統（以上すべてRCAピン）、グランド端子、デジタル出力（S/P DIFコアキシャル）、デジタル／アナログ入力切り替えとデジタル入力（S/P DIFコアキシャル）×２系統、USB／アナログ入力切り替えとUSB端子
SPECIFICATIONS
▪周波数特性／20Hz〜20kHz（±3dB）
▪SN比／75dBv以上
▪サンプリング周波数／48kHz
▪ビット・レート／32ビット（ミキサー部）、24ビット（エフェクト部）
▪外形寸法／326（W）×100（H）×406（D）mm
▪重量／8.5kg
