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LINE6Pod X3

石塚“BERA”伯広

アンプ・シミュレーターの老舗ブランド、LINE６から新たにPod X3が発売された。現時点でのアンプ・シミュレーターの集大成とも言える本機の性能をチェックしていきたいと思う。

大量のモデリング・アルゴリズムと
使いやすいツマミの配置が魅力

まず、従来のPodシリーズと大きく違う点はXLR端子によるマイク入力に対応している点。６種類のボーカル用プリアンプのモデリングを内蔵しており、アンプ・シミュレーターとしては78種類のギター・アンプ、24種類のギター・アンプ・キャビネット、29種類のベース・アンプ、22種類のベース・アンプ・キャビネット、98種類のエフェクターといったモデリングが搭載されており、その数はPodXTの約2倍となっている。外観は初代Podからの流れを引き継ぐデザインで、入力はギター／ベースなどの楽器に使用するHi-Z仕様のアナログ入力INPUT１（フォーン）と、トリム調整可能なマイク入力INPUT２（XLR／ファンタム電源非装備）がそれぞれ１系統、アナログ出力（TRSフォーン）がステレオで１系統、さらにデジタル出力（S/P DIFコアキシャル）も装備されている。そのほかに同社のFBV、FBV Shortboardなどといった別売りのフット・コントローラーを接続するFVB PEDAL端子とUSB 2.0端子が用意されている。音色をコントロールする操作子の配列も分りやすく、銀のツマミ類は左からDRIVE、BASS、MIDDLE、TREBLE、PRESENCE、REVERB、TONE VOLUME、MASTER VOLUMEとなっており、一般的なアンプのツマミ配列に酷似している。回し心地も重量感があり、扱いやすい。

ギター・アンプのモデリングでは
スピーカーの振動などもリアルに再現

それでは、早速音色をチェックしてみよう。今回はPod X3をデジタル・ミキサー、YAMAHA 01Vにアナログ接続して、モニターにはDYNAUDIO ACOUSTICS BM5を使用した。ギター・アンプのモデリングはPodXTより進化している感じ。特にMARSHALLはJCMからMajorなど、往年の人気モデルがほとんどカバーされているので選択に悩むだろう。個人的にはVOX AC-30 Top Boostのモデリングが非常に気に入った。中高域の抜けと押し出し感はかなりの好印象で、特にスピーカーのシミュレートがリアルだ。例えば、弦を手でたたくとアンプのスピーカーから"ボフッ"という音が出るが、そのときにスピーカーが振動している感じまでもがきちんと再現されている。低域からいい感じの倍音が出ている証拠だろう。それに加えてエフェクトの音色も素晴らしい！同社DL4、DM４などといったStompbox Modelerシリーズのプログラムがかなり反映されていてモジュレーション、ディレイともに"マジック"を感じた。アナログ・コーラスのモデリングも良いし、リピート音がアナログ的に変化するテープ・エコーのモデリングは他社を一歩リードしていると思う。これだけでも購入の価値はある。さらにマイク入力用に用意された6つのマイクプリの性能も特筆に値する。レコーディングで頻繁に使われるNEVE 1073のモデリングを試してみたが、適度なコンプ感があり中高域に押し出し感が出て効果的だ。輪郭がはっきりするのでボーカル用プロセッサーを持っていない人には有効だろう。ほかにはAVALON DESIGN VT737やAPI 512などのモデリングもある。また、Pod X3は信号経路が何と2系統装備されている。Pod２台分に相当するこの機能は非常に多くの使い道があって、例えば１本のギターから異なる2種類の音色を作ってそれぞれを別チャンネルで出力したり、ギターとボーカルを別々に入力してそれぞれに異なった設定を施して、別チャンネルから出力したりできる。ギター弾き語りの録音などで実力を発揮しそうだ。そして、Pod X3の大きな特徴はASIO/Core Audio対応のオーディオ・インターフェースにもなるということ。実際にドライバー・ソフトをインストールして録音／再生してみた。中央のディスプレイ上でDAWからの再生音と実際の演奏をミックスしてモニタリングできるのでレイテンシーも気にしなくてよいし、かけ録りをすればCPUに負担をかけずに強力な音作りが可能となる。プラグインとは違い、ギター・アンプを触っているような感覚で直感的なエディットが行えるのもいい。ギター／ベース／ボーカル関連の周辺機器を少なくまとめることができるので、ギタリストやエンジニアはもちろん、新しいオーディオ・インターフェースを探しているユーザーにもお薦めだ。