CDターンテーブルのまさにパイオニアであるPIONEERはスクラッチのできるCDJ-1000をリリースして以来、マイナー・チェンジを繰り返して確実に進化し、着実に世界中に広まっていきました。筆者も制作やクラブ・プレイなどでお世話になっています。現在、現場でのCDJシリーズの浸透度はダントツでナンバー１だと思います。
そして今回出た最新機種CDJ-400。スクラッチに対応するCDJシリーズの中で一番お求めやすい価格という部分が着目されがちですが、実はそれだけではなくて、新たに加わったヤバい機能も含め、順を追って見ていきましょう。
スクラッチやマスター・テンポなど
上位機種譲りの機能を搭載
最初に目を奪われるのはその大きさです。ほぼA4サイズとコンパクト。我が家のAPPLE MacBookなんかと同じサイズで、楽々持ち運べます。重さも2.7kg（！）とかなり軽量。リア・パネルは通常のアナログ出力×１系統、そしてS/P DIFデジタル出力を用意。さらにトップ・パネルと合わせて計２つのUSB端子（後述）も付いています。まずは普通にCDを入れてチェック。今までプラッター（中央の丸い部分）にあったJOG DISPLAYが無くなった代わりに、プラッターの縁のLEDが回転してその役割を担っています。プラッター部分も直径115mmにダウン・サイジングされ、コスれるギリギリの大きさという印象。複雑なフレーズのスクラッチには向いてないかもしれませんが、クラブ・プレイの中でちょこっとコスって出すにはバッチリでしょう。音程はそのままにテンポ変更ができるマスター・テンポももちろん装備。同じような機能は今や多くのDJ機器に導入されていますが、その音質／精度に疑問を感じる機材も少なくありません。しかしこのCDJ-400に限らず、CDJシリーズのマスター・テンポは曲調や音像にもよりますが、原曲のフォルムを崩さずにテンポを可変できる範囲が広いのと、その音質の良さもダントツなのです。その音質／精度は特記すべき点でしょう。
いろいろ遊べる内蔵エフェクト
多彩なループ機能も魅力的
さて、今回筆者が一番気になっていた機能が、USBデバイス内のMP3をそのままプレイできたり、スクラッチできることです。早速、我が家にあるUSBメモリーにMP3ファイルを何曲か放り込み、トップ・パネル左上のUSB端子にブッ挿してみると……ディスプレイに曲タイトル、BPMが表示されました。そしてパネル右上のダイアルで曲を選んでプッシュ、曲が出た瞬間、ものすごく興奮しましたよ。これは上位機種にもぜひとも導入してほしい機能です。CDJ-1000の登場以降、プリプロやレコーディングの制作環境では“CDに焼けば何でもコスれる”という認識が浸透したと思います。今回この機能が加わることで、さらにCD焼かずにコスれちゃいますね。また、内蔵エフェクトのかかり具合も良好で、プレイに幅が出ます。フランジャー効果のJET、ワウ効果のWAH、ロール再生されるROLLといった通常の３タイプに加え、スクラッチ時にのみ付加されるエフェクトもバブル・スクラッチ奏法をシミュレートしたBUBBLE、ミュートのオン／オフが行えるTRANS、そしてWAHの３種類を用意。個人的にROLLとTRANSが気に入りました。ループ機能も充実しており、特にループ区間を自動分割して並び替えるLOOP DIVIDEには、かなりヤラれました。ビートの切れっ端をループして、LOOP DIVIDEをONにすれば新たなサンプル・チョップのアイディアもわくでしょう。さらに本体後ろにあるUSB端子とパソコンを接続すると、同社のDJSやRANE Serato Scratch LiveなどのDJソフトをフィジカル・コントロール可能。ほかのソフトでも汎用的なMIDIコントローラーとして使えるのが驚きです。この辺はまだチェック時は追求しきれませんでしたが、新たな可能性を秘めた機能だけに興味津々です。ホームDJの新たなスタンダードとも言えるCDJ-400。出張ホーム・パーティに本機を持っていき、音楽好きがCDやUSBメモリー持参で集合！そんな未来も遠くなさそうだなぁと思わせてくれる機材です。
▲リア・パネル。左からパソコン接続用USB、RCAピンのアナログR/L出力、コントロール端子、S/P DIFデジタル出力
SPECIFICATIONS
▪周波数特性／4Hz〜20kHz
▪SN比／≦115dB（JEITA）
▪再生可能メディア／オーディオCD、CD-R/RW（オーディオCDフォーマット、MP3ファイル）、USB接続デバイス（MP3ファイル）
▪外形寸法／217.9（W）×107.5（H）×296.3（D）mm
▪重量／2.7kg
