過大入力保護機能やエフェクトを搭載したFireWireオーディオI/O

MARK OF THE UNICORN896MK3

828MK3に続いて発表された、896HDの後継となる最大28イン/32アウト、24ビット/192kHz対応のフラッグシップ・オーディオI/O、896MK3。本機の目玉は何と言っても、かけ録りできるエフェクトを内蔵したという点だ。ここでは新機能を中心にレポートしていこう。

ヘッドフォン端子やボリューム・ノブなど
出力系のアサインが自由自在


まず外観で分かる変更点から挙げてみよう。コントロールできるパラメーターが大幅に増えたため、新たにLCDディスプレイを採用。その下に4つのノブが増えており、各ノブは一回り小さくなった。ヘッドフォン端子が独立した2系統に増え、右側の端子ではメイン・アウト以外の信号も任意に切り替えてモニター可能だ。アナログ・インプットでは背面にあった+4dB固定モードを省略して前面に−20dB PADを搭載。よりシンプルで操作性が良くなった。またS/P DIFコアキシャル端子が追加されたほか、ADATデジタル端子は2系統(16ch)に倍増され、新たにS/MUXにも切り替えで対応した点がうれしい。さらにマスター・ボリューム・ノブにはメイン・アウト以外のあらゆる出力をアサインできる上、7.1chまでのサラウンドなどで複数の出力をまとめてコントロールすることも可能になった。

最大7バンドのEQとコンプを
全入出力チャンネルに装備


それでは気になるエフェクト部分を見ていこう。前身である896HDにもDSPによるデジタル・ミキサーが内蔵されてはいたがエフェクト類は未搭載で、先に発表された828MK3から新たにEQ、コンプ、リバーブが内蔵された。エフェクトの構造としては、EQとコンプがDSPパワーの許す限りすべてのイン/アウトにアサイン可能で、レコーディングだけでなくライブの音出し時の音質調整などにも柔軟に対応できる。リバーブは一系統だが、すべてのイン/アウトから送ることができ、主にボーカル録音時のモニター・リバーブとして重宝するだろう。これらエフェクトの搭載に伴い、コンピューター側の制御ソフトも従来のCueMix ConsoleからCueMix FXに変更された。EQはハイパス/ローパスを含めて最大7バンド構成で、EQカーブまで選べ、ドラム・パーツの処理にも細かく対応できる本格派。同社のDigital Performer付属のMasterWorks EQに似た使用感で、よりシャープで効きが良い印象だ。 コンプ部はアタック/リリースまでそろえた通常のスタイルに加え、後段にTELETRONIX LA-2Aを再現したというレベラーもあり、同時使用が可能。どちらもかなり効きが良いが、あくまでもデジタル・コンプという感じで、深くかけても元音の持つ高域を損なわないのが扱いやすい。加えて入力側にはハードウェア・リミッターV-Limitと、ソフト上でのSoft-Limitという2重の過大入力保護機能も追加。特にデフォルトでオンになっているV-Limitでは、不適切な入力を大幅に補正できるので、かなりラフなレベル設定でもちょうどいい入力具合に自動設定してくれる。以上、ダイナミクス処理に関してかなり大幅な機能追加が行われたと言えるだろう。注意点としては、コンプはスレッショルドを下げるとメイクアップ・ゲインが自動的に上がるタイプなので、効果は明確な反面、慣れないとついレベル・オーバーしがちであること。またV-Limitは初心者にはかなり便利だが、上級者にはその動作具合が見えにくい印象を受けた。まずはCueMix Fxを立ち上げて各エフェクトの効果を十分に把握してから録音に臨みたい。また、リバーブは5タイプが用意されているが(96kHz以上では使用不可)、全体にホールっぽいつやのある質感。もちろんTimeを短くすればルーム・リバーブ的にも使える。リターン信号はDAWソフト上のインプットにもアサインできるので、ボーカルのモニター用リバーブをそのまま同時録音し、すぐ再生できるのが実用的だ。なお、音質に関しては同社のキャラクターを継承。気持ち良く伸びた高域に見合うだけの、低域の豊かさがある。ヘッドフォン・アウトも、896HDより音に余裕がある印象があった。そして、内蔵エフェクトによって結果的に録音される音にはかなりの違いが出るだろう。例えばリハスタでのドラム録音などでの可能性が広がるわけで、これらの新機能を積極的に使いこなしていただきたい。

▲付属のCueMix FXソフトウェア



▲リア・パネル。左上から右にAES/EBU入出力、メイン・アウトL/R(XLR)、アナログ出力×8(XLR)、下にアナログ入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)×8。電源端子の右はワード・クロック入出力、S/P DIFコアキシャル入出力、ADAT入出力×2(S/MUX対応/S/P DIF兼用)、FireWire端子×2

MARK OF THE UNICORN
896MK3
オープン・プライス(実勢価格:150,000円)

SPECIFICATIONS

▪外形寸法/483(W)×88(H)×195(D)mm ▪重量/3kg

REQUIREMENTS

▪Windows/Windows XP/Vista(32/64ビット)、INTEL Pentium/Celeron 900MHz以上のCPU(または互換プロセッサー)、256MB以上のRAM(512MB以上を推奨)、IEEE1394ポート
▪Mac/Mac OS X 10.4.9以上(10.5対応)、PowerPC G4/700MHz以上のCPU(INTEL Mac対応/ハイサンプリング・レート時はPowerPC G4/1.2GHz以上を強く推奨)、256MB以上のRAM(512MB以上を推奨)