単一指向/無指向カプセルを交換可能な真空管コンデンサー・マイク

MOJAVE AUDIOMA-100

正直、僕はMOJAVE AUDIOという社名は初めて聞く名前だったのですが、インターネットで検索してみると、輸入代理店のWebサイトに“Royerリボンマイクの創始者であるDavid Royerが、新たにバキュームチューブ・コンデンサー・マイクをデザインしました”と書いてあるではないですか。リボン・マイクと言えばROYERというくらい有名なメーカー。いやが上にも興味をそそります。早速検証してみましょう。

温かくEQ処理も施しやすいサウンド
特に無指向カプセルの音が好印象


送られてきた箱を開けてみると、しっかりした専用ハード・ケースの中に収められたMA-100が現れました。ハード・ケースの中にはパワー・サプライ、ショック・マウント、専用ケーブルなどの必要なアクセサリーがすべて収納されています。 本マイクは、資料では“スモール・ダイアフラム・バキュームチューブ・コンデンサー・マイクロフォン”とうたわれているので、真空管の感じがどのようにサウンドに現れるか気になるところです。また“ミリタリー・グレードのJAN 5840真空管、JENSENのトランスを採用”といった魅力的な紹介も書いてあります。個人的にJENSENのトランスは好きなので、こういった良いパーツが使われている製品の音には、素直に期待が持てます。では早速、音を聴いてみたいと思います。本機には、単一指向と無指向のカプセルが付属していますが、最初は単一指向のカプセルで使用してみました。仕事でアコースティック・ギターを録音する機会があったので、いつも使っているAKG C451とM-100を共に立ててみたところ、M-100は温かみのある音を聴かせてくれました。初めは少し抜けが悪く、“中域に寄っているかな”とも思ったのですが、いろいろ試してみると5kHz付近に少しピークがあり、その印象によるものだったようです。このピークはマニュアルに記載された周波数特性のグラフでも確認できます。次にEQで高域を上げてみると、音がぐっと伸びて明るく抜けてきました。さらにぐりぐりとEQをいじってみると、とてもEQの反応が良いので、録音後の処理もしやすいのではないでしょうか。次にカプセルを無指向に交換して試してみました。カプセルの交換はくるくるっと回して簡単に付け替えることができます。先ほどと同じようにアコギを録ってみたところ、単一指向よりも自然な音の印象が得られました。無指向ということもあるのですが、フラットな音色で出音に近い感じがします。個人的には無指向カプセルの音の方が好印象でした。今回のレコーディングではどちらかというと粒立ちを求めてC451を採用したのですが、全くキャラクターの違うマイクなので曲に合わせて使い分けたいですね。

ピアノの録音では身の詰まったサウンドに
短距離や大音量での収音に適した印象


続いてピアノでも試してみました。先ほどの良い印象は変わらなかったのですが、ピアノとM-100の距離を近づけていくと、アコースティック・ギターで試したときよりも身の詰まった音を聴かせてくれました。NEUMANN U47 Tubeと音の質感は良い勝負。特に中域の感じが良いですね。弱く弾いたときより強く弾いたときが好印象。そういえば“高い音圧レベルにも耐えられるのでスネアに使ってみてください”とWebサイトに書いてあったのを思い出しました。今回は残念ながら試せなかったのですが、短距離での収音や大音量での収音時の方が印象が良いので、スネアやギター・アンプなどオンマイクで狙うときに良さそうです。そう言えば、ROYERのマイクはギター・アンプにも良いですからね。まさにあの雰囲気を出せるのではないでしょうか。今回お借りしたのは1本だったので、モノラルでの収音のみだったのですが、ステレオでも試してみたいと思いました。ステレオで録る場合に良いビンテージ・マイクはたくさんありますが、古いものなので、マッチングの取れたものを2本そろえるのは難しいのです。そういった場合にマッチングが取れた新しいマイクでビンテージ風の質感を得られるのはありがたいですね。また、この価格で買える小型ダイアフラムの真空管コンデンサー・マイクというのも珍しいと思います。用途や場所を気にせず立てられるのは便利ですね。スネアをはじめとしたドラムの収音など、立てづらい場所にもすっとセッティングできそうです。ぜひ、今度はスネアやエレキ・ギターなどで試してみたいものです。全体的な印象として、ハイファイという感じではなかったのですが、特徴のあるサウンドで、選択肢の一つとして持っておくには良いのではないかと思いました。20080101-09-002

▲M-100付属のハード・ケース内。パワー・サプライ(左上)、本体(左下)、単一指向カプセル(中上)、ショック・マウント(中央)、マイク・ホルダー(中下)、専用ケーブルが付属

MOJAVE AUDIO
MA-100
126,000円

SPECIFICATIONS

▪指向性/単一、無指向(カプセルを交換)
▪周波数特性/30Hz〜18kHz
▪入力感度/−37dB re.1V/Pa(±1.5dB)
▪最大入力音圧/140dB
▪インピーダンス/450Ω
▪セルフ・ノイズ/通常14dB、加重時16dB
▪全高調波歪率/0.4%@140dB SPL(プリアンプのみ)
▪外形寸法/1.9(φ)×139(H)mm
▪重量/130g