16種のアンプを追加し画面も一新したアンプ・シミュレーター・ソフト - サンレコ〜音楽制作と音響のすべてを届けるメディア

WAVESGTR3

真鍋吉明（the pillows）

ここ最近妙に騒がしくなっているアンプ・シミュレーター周辺ですが、さらに加速度を増しつつある中でWAVESよりGTR3が発表されました。本来のアンプの世界に比べてアンプ・シミュレーターの歴史は比べようも無いほど浅いですが、今のギタリストにとっては興味深い進化を遂げているのも事実。そんな中でも既に老舗的なイメージのメーカーもあれば、そのブランド・イメージからは意外な印象を受けたメーカーもあったりしますが、プラグインの世界では強力なブランド・イメージを持つWAVESのこの分野への進出に、最初はとても意外に感じました。そんなGTRも既にバージョン3。どんな可能性を示してくれるのか早速レビューしたいと思います。

19種のギター・アンプに
ベース・アンプのモデリングも追加

まずはAPPLE Power Mac G5 2.5GHz＋Mac OS X 10.4.10＋DIGIDESIGN Pro Tools LE 7.3環境にGTR3をインストール。なお、今回はRTAS版でのチェックですが、TDM版も用意されています。ソフトを起動してインターフェースを見ると、説明書が必要ない程に簡潔で分かりやすい印象です。今バージョンからはこの画面が一新されていて、以前は独立したプラグインとして用意されていた各機能を一つにまとめて、それぞれ"STOMP""AMP""TUNER""PRESET"というページを切り替えて設定するという構成になっています。では早速、核となるAMPページを見てみましょう。ギター用にはMARSHALL、FENDER、VOXなどのアンプを基にした19のモデリング・アンプと16のモデリング・キャビネットを用意。新しく追加されたアンプはMARSHALL 100W Stackや50W Stack、さらにポール・リード・スミス氏が所有する高級アンプなども含まれています。その中でも"Warm""Scream"というサウンドは、付属DIとの相性も抜群な音が楽しめました。特に"Warm"は、その名の通りの音でリアルなギター本来の温かさを感じさせてくれます。また、それぞれには豊富なプリセットが用意されていて、音決めもスピーディに行えます。これらのギター・アンプとは別に、今バージョンからはベース・アンプのモデリングも用意されています。これは決しておまけではなく本格的な7つのアンプと6つのキャビネットで、AMPEG、MESA/BOOGIEを筆頭にスタンダードから個人的に試したかったSADOWSKYなどのメーカーまで用意。特にAMPEGのクオリティの高いモデリングやレゲエを匂わせるプリセットの数々などには思わずニヤリとさせられました。さらに従来同様、すべてのアンプでNEUMANN、AKGといった11種のモデリング・マイクを設定可能です。距離に関してもオン／オフマイクを選択でき、録音現場そのものを再現できます。

３種類増えた26種のエフェクト
ギターのダイナミックさを引き出すDI

GTR3の各ページの中で、最も驚いたのがSTOMPページのルックスです。ギタリストなら見飽きたくらいの、いつもの足下にあるエフェクター・ボードがそのまま画面にあります。しかもニクいことにどれも少し汚れていて細かい傷が付いています（笑）。ディストーション系、モジュレーション系、空間系、ゲート/コンプ系とベーシックからマニアックなモノまで、前バージョンより３種類増えて計26種類が用意され、見た目もカラフルにセレクトできます。特にひずみ系の音やモジュレーション系のクオリティは驚きました。選択もワンクリックでできるので実際には誰もやらない危険なセッティング（笑）でも気軽に挑戦してみたくなります。この場合でも弾いていないときに発生するノイズのリアルさ、自然さを感じます。ここまででもそのクオリティには十分驚かされていましたが、GTR3がほかのソフトと大きく違う点がWAVES/PRS Guitar InterfaceというDI。初代のGTRから付属していたものなので新機能という訳ではないのですが、これが強力です。このDIを通したときのレンジ感はまさにギターの持つダイナミックさが最大限に引き出してくれます。専用DIまでも開発してしまうあたりにメーカーの意気込みを感じます。これほどの音のクオリティをギタリストがなじみやすく簡潔なインターフェースにまとめることができたのは、メーカー自身のクオリティの表れかもしれませんね。アンプからではなく、モニター・スピーカーから鳴る最高のギター・サウンドからまた新しい音が生まれる予感がします。