PIONEERからDJM-1000/800の弟分とも言うべき4chのDJミキサー、DJM-700が発売された。最大の特徴は24ビット／96kHzのハイクオリティなサウンドだ。これまでに現場でDJM-1000/800を共に使用したことがあるが、その印象は非常にクリアかつ、しんのある力強い音というもの。果たしてDJM-700はどうか？ 実際にクラブでチェックした。
分かりやすい操作子のレイアウト
クリアでヌケがいい出音
僕がDJの活動拠点としている青山LOOPで、早速DJM-700をセット。サイズやパネル・レイアウトはDJM-800/600とほぼ同じで、各チャンネルごとに縦に入力ゲインやEQ、CUEなどの操作子を配置。シンプルで効率的な設計なので、同社のDJミキサーを使い慣れていない人にも分かりやすい。4chそれぞれに２系統の入力切替が付き、通常のDJスタイルであれば余裕の入力数だ。では、実際に音を出しながらDJプレイをしてみると、出音は実にクリアだ。非常に抜けがいい！と瞬間的に感じた。通常、LOOPで使っているアナログ回路のモデルの音になじんでいるせいか明確に音の違いを感じる。ただクリアなだけでなく、しんのある音となっているのが素晴らしい。この辺りに現場サイドと製作サイドの一体感......実際クラブで鳴らしてどう感じるのか？に重点を置いていることを強く感じる。ミックスしたときの音の混ざり具合も安定した感じで、スムーズ。ボリューム・フェーダーの重さは個人的にはもう少し手ごたえが欲しいところだが、最近のDJミキサーでは定番の重さだろう。EQつまみはやや固めの設定で、個人的にはものすごく好みの重さ。使い勝手も良い。各音のキレも良く、ミキシングしやすいと言えるだろう。
ビート・エフェクトに加え
エフェクト周波数フィルターを搭載
続いてはトップ・パネルの右側にある各エフェクトをチェックしていこう。DJM-700にはDJMシリーズで既におなじみの"ビートエフェクト"に加え、"エフェクト周波数フィルター"を新たに搭載している。ビートエフェクトは自動検出したBPMに合わせてエフェクトをかけられる機能で、DELAY、ECHO、TRANS、FILTER、FLANGER、PHASER、REVERB、ROBOT、CRUSHの９種類が高音質エフェクトとして使用可能。そして、DJM-600のビートサンプラーが"ROLLサンプラー"に進化。この概要を説明すると、選択した出音のビートを記録し、繰り返し再生することでエフェクト効果を生み出すもの。その繰り返し再生は、そのまま／リバース、ピッチ・アップ／ダウンの４パターンから選択可能だ。後者の２パターンは新搭載で、これらを使えばサンプリングした音を出しつつ針を戻して曲をリピートさせるなど、多彩でトリッキーなプレイが表現できる。次はディスプレイ下部に配置されたエフェクト周波数フィルター。ON/OFFボタンが奇麗なブルーに点灯して視覚的にも気持ちが良いし、暗闇でも瞬時にボタンに手を伸ばせる。これは周波数帯域でエフェクトをかける／かけないをコントロールしつつ、ビートエフェクト効果を変化させるものだが、フィルターのかかり具合が実に気持ちが良い。使い方だが、あらかじめエフェクトをかける周波数帯域を選んでおいてON/OFFで効果を出すのもいいが、つまみをダイレクトにいじるのがライブ感といった意味でも面白いだろう。なお、リア・パネルにMIDI出力端子があり、本機をMIDIコントローラーとして使用可能だ。また、カラーはシルバー以外に黒も用意されている。以上、新機能中心で紹介したが、安心感のある扱いやすさと多彩で使えるエフェクト類、そしてエッジのきいたしんのあるサウンドというのが全体的な感想だ。高い基本性能を守りつつ、さらに進化した世界基準モデルがDJM-700と言える。
▲リア・パネル。上段左から電源スイッチ、BOOTH/REC出力、CH-4/3/2のフォノ＆ライン入力、CH-1のライン入力２系統（以上、すべてRCAピン）、MIC入力（フォーン）、下段左からMASTER出力×２系統（XLRとRCAピン）、MASTERレベルのアッテネーター（−6/−3/0dB）、SEND＆RETURN、サンプリング周波数切り替えスイッチ（48/96kHz）、デジタル出力（S/P DIFコアキシャル）、MIDI出力
SPECIFICATIONS
■AD/DA／24ビット、96Hz
■周波数特性／20Hz〜20kHz
■全高調波歪率／0.005％以下
■SN比／104dB（ライン）
■外形寸法／320（W）×108（H）×378（D）mm
■重量／6.6kg
