楽器から歌までオールマイティに使える小口径コンデンサー・マイク

M-AUDIOPulsar II

どうもこんにちは、エンジニアの武藤です。今回はM-AUDIO Pulsar IIというコンデンサー・マイクをチェックしてみたいと思います。価格的に宅録向けという印象がありますが、それはそれ。先入観無しに実際にスタジオで試してみようと思います。

透明感のあるレンジの広い音で
アコギのコードが奇麗に響く


まず届いた製品を開けてみて、"あっ、木箱に入ってて高級そうだ"というのが第一印象。これ、結構大事です。木箱から出して手に持ってみると適度な重量があり、真ちゅう製のボディからも高級感がうかがえます。指向性は単一で、ダイアフラムの大きさは直径3/4インチ。本体には大音量の楽器にも対応できる−10dBのPADスイッチや、低音ノイズの混入を防ぐ80Hzローカット・スイッチも付いています。早速、実際にスタジオで使ってみた感想を書いていこうと思います。まず最初に、アコースティック・ギターの録音に使用してみました。通常、僕はスチール弦のギターでコード・ストロークを録音する場合、NEUMANN U67やU87AIなどを使用するので、それらのイメージと比較しながらのチェックとなります。実際にPulsar IIで録ってみたサウンドですが、前述のマイクに比べると中低域には若干物足りなさを感じたものの、コード感が奇麗に響き、レンジが広く透明感のある音という印象です。アルペジオの場合はアタック音をしっかりとらえており、なおかつ6本の弦がそれぞれフラットに鳴っている状態で録れました。通常、この形状のマイクはセッティングがシビアなのですが、Pulsar IIは周波数特性に変な癖が無いため、ポイントさえ決まればとても原音に忠実なサウンドで録れると思います。次に、ナイロン弦のギター(指弾き)で試してみました。セッティングにもよりますが、ダイアフラムの大きいマイクを使用すると中低域(500Hz近辺)にピークを持つことがあり、EQで補正しなくてはならなかったりします。しかし、このPulsar IIは小口径であることも手伝ってか、EQでその部分を補正する必要が無く、ナイロン弦のギターが本来持っている、温かな音色を忠実にとらえてくれました。

歌録りにも十分使えるクオリティ
特に高域の伸び方が素晴らしい


さて、"お、このマイクなかなか良いな"と強く感じたのは、ボーカルのレコーディングで試したときです。女性/男性ボーカル共に、付属のウィンド・スクリーンを使用してフルコーラスの録音で試してみました。楽器に比べてデリケートで曲中で一番大事なボーカル・パートを録るには、正直この値段のレベルのマイクだと力不足なものが多いというのが個人的な印象としてありました。しかし、Pulsar IIの場合はサビなどの声を張る部分においても吹かれやひずみが無く、ファルセットのような弱めに歌う部分も、S/Nは全く気になりません。特に何声も重ねていくコーラスは高域の伸びが素晴らしく再現されており、EQで補正しなくても良いくらいでした。こうしてチェックしてみた印象からすると、Pulsar IIは女性ボーカルとアコースティック・ギターの収音に特に適しているのではないかと思います。残念ながら今回は試すことができませんでしたが、個人的には、パーカッションやドラムのスネアなど打楽器系に使ってみたいとも感じました。ただ、これはあくまで"レコーディング・スタジオ"という、選択肢がたくさんある環境の中でチェックしてみた意見であり、これが自宅録音となれば、十分オールマイティに使えるマイクと言えると思います。また、金額的にとても魅力であることは言うまでもありません。例えばこの値段でコンデンサー・マイクが手に入るなら、2本買っても約5万円ですよね。そうすると、家にピアノがある人、家にコンガがある人、家に2人同時に歌いたがるボーカリストがいる人など、どんなケースでもステレオ録音ができてしまいます。最近はレコーディング機材が手軽に手に入るようになったため、アーティストが自宅である程度作り込んできて、それをスタジオで完成させるというセッションが多くなっています。そんなとき、自宅で録ったアコースティック・ギターやボーカル・パートなど、テイク自体は素晴らしいものの、"音が良くないため録り直し"となる場合が結構あるのです。かといってアーティストに良いマイクを薦めようにも、僕らがいつもスタジオで使っているものはどれも高額で、なかなか薦めづらかったりします。でも、この値段でこのクオリティのPulsar IIならば、気楽に薦めることができますね。大事なのは、自宅でレコーディングした音がスタジオで録った音に混ざるかどうかです。僕がこのマイクを実際使ってみたところ、十分プロユースに耐えうるものだと思いました。

▲付属の木製ケース。マイク・ホルダー、ウィンド・スクリーン、布製バッグも用意されている

M-AUDIO
Pulsar II
オープン・プライス(市場予想価格/24,990円前後)

SPECIFICATIONS

■指向性/単一
■周波数特性/20Hz〜20kHz
■感度/−37dB@1kHz、 0dB=1V/Pa(13.8mV/Pa)
■最大SPL/134dB@0.5% THD、 144dB(−10dB PAD使用)
■等価ノイズ/16dBA
■出力インピーダンス/300〜600Ω
■外形寸法/22(φ)×132(H)mm
■重量/115g