Kaoss Padを内蔵した24ビット/48kHz対応デジタルDJミキサー

KORGKM-402/KM-202

フィジカルなインターフェースで人気を博すエフェクターKORG Kaoss PadをDJミキサーに内蔵させるという強烈(かつ合理的)なアイディアとビジュアル的インパクト、そして確かな操作性で2001年の発売以来多くの愛好者を生み出してきたDJミキサーKaoss Mixerの最新モデルがついに発売されました。DJパフォーマンス自体の進化に伴い、毎年多様なモデルが発表され競争の激しいDJミキサー界ですが、その中でも飛び抜けて個性的な本機。そのポテンシャルを早速検証していきたいと思います。

多彩なプレイ・スタイルに
柔軟に対応するラインナップ


今回発表されたラインナップは、4ch仕様のKM-402と2chのKM-202という2機種。カラーは白×緑という、最近の機材ではなかなかお目にかからないスタイリッシュないでたちです。共にフル・デジタルで24ビット/48kHzに対応。共通のスペックとしては通常のDJミキサー部の各チャンネルにトリムと3バンドEQ、Kaoss Padのオン/オフ・ボタンを搭載。KM-402にはそれに加えてフェーダー・アサイン・ボタンがあり、クロス・フェーダーに任意のチャンネルをアサインできます。MASTER部にはLEVELとPANのツマミがあり、クロス・フェーダーのカーブ特性を決めるX-FADER CURVEとヘッドフォン端子がフロント・パネルに用意されているのも共通。エフェクト数も同じで、要するに両者の違いはチャンネル数のみ。シンプルに2つのソースをミックスできればいいという人はKM-202、より多くの音源を扱いたい人はKM-402と、DJスタイルによって選択できます。そんな2機種の操作上の相違点ですが、まずモニターの手順が異なります。KM-402は各チャンネルにあるCUEボタンのスイッチングで、KM-202の方はトップ・パネル右にあるCUE MIXフェーダーでそれぞれモニターするチャンネルを選択します。マイク入力に関しては、KM-402はPGM1のINPUT SELECTスイッチをMICにすればOK。KM-202には単独のMIC INが設けられており、PGM1/2に任意のバランスで信号を送ることができます。これらの操作はトップ・パネルを見れば一目りょう然。両機ともに各ボタンやツマミなどの視認性がよく、基本的には取扱説明書を見なくともすぐに音を出せるであろうシンプルな設計。一度触ってしまえば、特に混乱することもなくDJプレイを楽しめるでしょう。

Kaoss Pad&EQ SELECTORで
精密なサウンド・メイクを実現


次に、肝心のKaoss Pad部分を細かく見ていこうと思います。用意されたエフェクト・プログラム数は100種類で、その内訳はフィルター×16、モジュレーション×12、LFO×23、ディレイ×15、リバーブ×6、グレイン・シフター×5、ルーパー×13、シンセサイザー×10という多彩な内容。これも使い方はまったくもって簡単で、使用したいチャンネルのKAOSSボタンをオンにし、任意のエフェクトをPROGRAM/BPMノブでセレクト、DRY/WETノブをWET側にしつつパッドを操作すれば、早速エフェクトがかかります。この辺りの手軽さはオールインワン・ミキサーの大きな利点でしょう。お気に入りのエフェクトとパラメーターを記録して瞬時に呼び出せるPROGRAM MEMORYキーは3つ用意されています。Kaoss Padのだいご味と言えば、やはり直感的な使用感。頻繁に使用するエフェクトを記録させておくことで、よりアグレッシブなパフォーマンスが期待できます。また今回、エフェクトをオフにした際も残響音を付加するFX RELEASE機能が搭載されたのも大事なポイント。エフェクトを入力音に自然に溶け込ませることができるなど、スムーズなDJプレイに一役買うこと請け合いです。ディレイやルーパーなどのエフェクトはタップ・テンポ機能で抽出したBPMに追従させられるので、リズミカルにエフェクト音をコントロール可能。サンプリング機能が割愛されていたりパッドの形状は変更されていますが、そこは評価の高いKaoss Pad KP3譲り。詳しい内容については後述しますが、とにかくダイナミックかつ効果的なエフェクトが満載です。次にもう一つの大きな特徴であるEQ SELECTORについて触れてみたいと思います。この機能はEQの特性をトップ・パネル上のツマミで簡単に変更できるという個性的なもので、KM-Q/ROUND-D/BOOST/SLAMMING/ISOLATOR/HYPEDの6種類の中から自分好みのものを選択できます。例えば比較的緩いカーブのKM-Qはミックス時に、ISOLATOR、HYPEDといった効きの強いものはエフェクト併用時にといった使い分けで、より繊細かつアクティブに音色を操作できます。タイプ変更時の音切れもなく、この辺りはさすがにデジタル・ミキサーならではの機能と言えるのではないでしょうか。

キレの良いクロス・フェーダー
カーブ調整も自由自在


と、若干前のめり気味に特徴的な機能を紹介してきましたが、そもそも本機はDJミキサー。という訳で、よりベーシックな部分にもフォーカスしてみたいと思います。まず一番大切な音質面ですが、デジタル・ミキサーらしく高域の抜けがとても良いハイファイな鳴り、というのが第一印象。特にCDターンテーブルなどデジタル機器との相性は抜群で、パキッと調子の良い音が鳴ります。トリムの効きも良く、ヘッドフォン・アウトの音も素直で良い感じです。続いてクロス・フェーダーですが、これが軽くて本当に切れがいい! スクラッチがうまくなったように錯覚します。初代Kaoss Mixerも切れの良さには定評がありましたが、今回デジタル化されたことにより、さらにその部分が明解になったようです。フェーダー左右のあそびの調整もできるので、スクラッチDJには申し分ない仕様かと思います。ちなみに前述のX-FADER CURVEを左に回せばすぐにフェーダー・カーブを緩められるので、クロス・フェーダーでロング・ミックスするDJもご心配なく。チャンネル・フェーダーはクロス・フェーダーよりもほんの少しだけ重くしてあり、個人的にはまったくもっていい感じです。ほかに前後の入出力端子部分には取り外し可能なジャック・ガードが装備され、運搬時のダメージ防止に一役買っています。地味ながらもこうした配慮はいいですね。

充実のエフェクトを駆使し
アグレッシブなDJプレイを!


ここからは実践編です。とはいえ自由度の高いエフェクトが満載なだけに必ずしも絶対的な使い方ではないので、あしからず。まず曲をつなぐタイミングに多用したのがPROGRAM 51の"Delay"。もちろんタップ・シンクするので、フェード・アウト間際に薄くかぶせることでミックスの聴こえがよりスムーズに。EQを併用して出音に変化を加えるのもいいですね。ミックスと言えばPROGRAM 66"Reverb"、62"Delay&Reverb"といった定番も外せないところ。ツマミをWETに振って全体的にかければ当然ダイナミックな印象ですし、少しDRY気味にすれば曲の表情を変えられます。あと、ライブ・パフォーマンス的に使用するのであればやはり77〜89のルーパー系は外せないでしょう。これは入力音を一定時間で切り取りループできる機能で、要するにパッドをたたきながらリアルタイムでオーディオ・エディット的なことができる優れものです。BPMに合わせてのループや違うテンポでトリガーして独自のグルーブを生むなんてこともお手の物。曲の一部をKaoss Padでループさせておいて別曲をミックスすることもできるので、あっと言う間に元曲のグルーブを大胆に変化させられます。と、ここまで主にDJプレイに焦点を当てて紹介してきましたが、もちろん音作りの面でもユニークな使い方が考えられます。例えば豊富にそろえられたフィルターやひずみ/劣化系エフェクトはサンプル・ソースを取り込む際に有効ですし、PROGRAM 70"Reverse Gate Reverb"、72"Grain Shifter"などは全く原音をとどめないところまで加工できるので、トリッキーな音を瞬時に作成できます。そんな多岐にわたるPROGRAMの中でも個人的にお気に入りだったのは、テープ・エコー的に果てしなくフィードバックするPROGRAM 65"Feedback Echo"。とにかく長いディレイ音を使用したい際はこれ!といった感じで、レコードやCDのみならずマイクに使っても効果てきめん。あとミニマルなダブにかけた18"Talk Filter"の音もツボ。なんて挙げていったらきりがないのですが、とにかく充実&個性的なエフェクトたちなので、触っていくうちにお気に入りのPROGRAMが必ず見つかるでしょう。パッドを触ったりこすったりと、肉体的な動きをそのままDJプレイに反映できる本機のインターフェースは、機材に触れる楽しさをユーザーに提供してくれます。さまざまなタイプのプレイを想定した自由度の高い仕上がりなので、楽しみながら使い込んでいけば自分なりの技を発見できるのではないでしょうか。Kaoss PadとDJミキサーそれぞれを別途そろえることを考えるとコスト・パフォーマンスも高いので、両方に興味がある方にはエントリー・モデルとしても良いかと思います。

◀KM-402のリア・パネル。左よりMASTER OUTPUT(RCAピン)、BOOTH OUTPUT(RCAピン)、LINE IN(RCAピン)とPHONO IN(RCAピン)各1系統で構成されるPGM入力部が3ch分並び、一番右にあるPGM1はLINE IN(RCAピン)とMIC IN(フォーン)各1系統という構成になっている



◀KM-202のリア・パネル。左よりMASTER OUTPUT(RCAピン)、BOOTH OUTPUT(RCAピン)、LINE IN(RCAピン)とPHONO IN(RCAピン)各1系統で構成されるPGM入力部が2ch分並び、その右がMIC IN(フォーン)



▶両機に共通で搭載されているKaoss Padセクション。上のPROGRAM/BPMノブでエフェクトの種類を決定し、ディスプレイの下にあるDRY/WETノブでかかり具合を調整。その右のPROGRAM MEMORYボタンには好みのPROGRAMナンバーを3つまで登録できる。タッチ・パッドは小ぶりなものとなっており、その下にはPAD HOLDボタンとTAPボタンが並ぶ

KORG
KM-402/KM-202
KM-402/74,550円、KM-202/59,850円

SPECIFICATIONS

■エフェクト・プログラム数/100
■サンプリング周波数/48kHz
■量子化ビット数/24ビット
■周波数特性/20Hz〜20kHz(±1.0dB typ)
■定格入力インピーダンス/10kΩ(LINE IN)、40kΩ(PHONO IN)、50kΩ(MIC IN)
■外形寸法/288(W)×107(H:ツマミ高さ含む)×384(D)mm
■重量/5kg (以上、KM-402/KM-202共通)