大胆な空間のカスタマイズで迫力と華やかさを演出するエフェクター

RUPERT NEVE DESIGNSThe Portico 5014

過去、NEVEやFOCUSRITEといったメーカーを立ち上げ、またAMEK製品の設計なども手掛けてきたルパート・ニーヴ氏の新ブランド、RUPERT NEVE DESIGNS。既にハーフ・ラックのアウトボード、The Porticoシリーズとしてマイクプリ/EQの5032や2chテープ・エミュレーター5042といった製品をリリースし話題となっているが、今回は何と空間の広がりをコントロールできるというエフェクター、5014を発表した。満を持した感ありまくりの本製品を、早速チェックしていこう。

L/R独立ゲインで自由に調節
-6〜+12の広域な可変幅


この5014、分かりやすく言えば、打ち込みだけで距離感が同じようになってしまったトラックに距離感を持たせたいときや、音が前に出過ぎる場合、もしくはもともとモノラルっぽい楽器を自然に広げるためのもの。主にミックス・ダウンなどの楽曲制作の最終調整のときに活躍しそうだ。まず、最初に目に留まったのはこの手の製品らしからぬ大きく使い勝手の良いL/R独立のインプット・ゲインで、−6〜+12dBという広い可変幅を持っている。本機をセンド/リターンで接続し、バイパス状態でゲインを−6/0/+12の3段階に分けて、リターンのレベルを合わせながらそれぞれ試聴してみたが、ルパート・ニーヴ氏の製品らしい少しザラつきのあるウォームなサウンドになってくれる。初めから裏ワザ的な使い方の紹介になってしまったが、ベースやバスドラを録音するとき、あるいはオケ中で少し音の質感を変えたいようなときに使える"ニーヴ"サウンドである。インプット・ゲインの上にはインプット/アウトプットを切り替えて使うLEDメーターを装備。5014はインプット/アウトプットの設定で出力レベルが変わるので、目視できるのは便利だ。そして中央にあるのは、リア・パネルにあるバス入力との切り替えスイッチ。このバス入力を使えば、ほかのThe Porticoシリーズのバス出力と本機を接続して使用することができる。

太い音でオケの中に配置可能
打ち込みものの大胆な効果も演出


いよいよ5014の心臓部に触れていく。まずWIDTHつまみは、もちろん字のごとく音の広がりを変えていくためのもの。左に回しきるとMONO、右に回しきるとWIDEとなるのだが、単純にミキサーのパンで真ん中に置いた場合と、この5014を通して"MONO"にした場合では聴こえ方が違う。5014を介したときの方がより柔らかく、自然にオケの中に溶け込む印象だ。また、より多くの使い方をされそうなMONO→WIDEへの変換だが、ベースやボーカルなどにはあまり劇的な変化は見られなかった。しかし元が少し広がった楽器に対してはその効果はハッキリと見られ、特に鍵盤ものには威力を発揮した印象だ。コーラスでは揺れるし、一般的なステレオ・イメージャーでは楽器のニュアンスが無くなりがちだが、この5014では太くしっかりした音のままオケの中に配置できるのが強みだろう。その横のDEPTHつまみは、WIDTHつまみとの組合せたときにのみ有効なパラメーターで、WIDTHつまみをONにしないと機能しない。このDEPTHつまみはいわば距離感を演出するもので、リアルかつこの5014でしか出せない効果だ。ラインで取り込んだものやオンマイク過ぎてオケの中で少し引っ込んでもらいたい場合にバッチリ使える。例えば、アコースティックな楽曲での部屋感をいい感じで出してくれる。もちろんバシバシな打ち込みの楽曲でも、スピーカーの外側から音が襲いかかってくるような効果を大胆に演出できる。なお、そのほかの機能としては EQセクションやインサート・スイッチがある。EQは中低域の120Hz〜2.4kHzを15dBブースト/カットでき、2種類のQカーブをセレクト可能だ。本機を原音に足して使うときには、少し出っぱってしまった音域をこのEQでカットすることができた。また、逆に聴こえやすい帯域を持ち上げ、さらに広がり感を調整できてしまう。インサート・スイッチは、外部のエフェクトなどを使用するときに用いるスイッチで、WIDTHつまみとEQセクションの間にエフェクトをインサートできる。5014を試して感じたのは、やはり音の太さだ。ステレオ・イメージャー的なものはそんなに実音を重視しないものが多いように思われるが、本機はルパート・ニーヴ氏が得意とする入出力段のトランスにもこだわり、楽曲の中心となるベースやピアノにエフェクトしても曲がやせることなく、むしろ勢いが増し華やかに聴かせられた。一般的なエフェクターではないかもしれないが、この手のものをお探しの場合はぜひとも試してもらいたい。

◀リア・パネルの接続端子類。左からDC12V入力、インサート用のSEND出力(TRSフォーン)とRETURN入力(TRSフォーン)、バスL/R入力(TRSフォーン)、アナログ入出力L/R(XLR)

RUPERT NEVE DESIGNS
The Portico 5014
オープン・プライス(市場予想価格/241,500円前後)

SPECIFICATIONS

■ゲイン/-6dB〜+12dB
■EQ/パラメトリック(120Hz〜2.4kHz、ワイドQ/ナローQ、±15dB)
■外形寸法/235(W)×225(D)×45(H)mm
■重量/2.8kg