強くしっかりした音で正確な再生感のスタジオ・モニター・ヘッドフォン

AUDIO-TECHNICAATH-M50

AUDIO-TECHNICAから密閉ダイナミック型のスタジオ・モニター・ヘッドフォンが発売されました。プロフェッショナル・ユースに対応した現場仕様とのこと。同社のヘッドフォンは、友人のミュージシャンがツアーの際に常に首から下げていて、その姿が印象的だったことを思い出します。最近、所用で町田に出かけた際に、偶然にも本社ビルを見かけたばかり。これも何かのご縁かもしれません。それでは早速、ATH-M50の音やその仕様を見てみましょう。

モバイル・ユースも視野に入れた
モニター用ヘッドフォン


スタジオ作業の際のモニター用、もしくはリスニング用であれば、本来はモバイルに適した仕様になる必要性は無いわけですが、昨今の事情はやはり何でもすべてモバイル。というわけで、このATH-M50は携帯するのに便利な折りたたみ機能搭載、収納ポーチ付き。しかし、これは考えてみれば意外と重要なことかもしれません。自宅スタジオで作業した後、別のスタジオでダビング作業をして、さらにミックスでまた別のスタジオなどというパターンは昨今では当たり前。その際に同じヘッドフォン、つまり同じモニター環境で作業ができればストレスはかなり軽減されるでしょう。さらに、スタジオでの作業もあれば、2週間ツアーでずっとホテル暮らしになるパターンも多いプロミュージシャンの方々には、旅先のホテルでも自宅やスタジオのような環境で作業をされたい方が大勢いることと思います。自分も締め切りを抱えたまま旅の空の身になることがしばしばです。PC周辺機器の録音環境におけるモバイル化の充実に比べて、やはり肝心のモニター環境だけは難しい部分が多いのですが、ヘッドフォンの高性能化と携帯の利便性が上がることで、この問題も解決。このATH-M50は、AUDIO-TECHNICAが、このような昨今の事情を考慮した上で制作した製品だと感じました。

原音に忠実な再生音は
分かりやすい定位で立体感も十分


本機の周波数特性は15Hz〜28kHzで、DJ用のヘッドフォンなどと比べると低域は多少抑えめ、高域はより再現性を高くした仕様です。最大許容入力は1,600mW。ネオジウム・マグネット仕様のドライバーは磁気ひずみの低減と高いエネルギー効率を実現するそうで、要するにひずみにくいということでしょう。自分が普段使用しているヘッドフォンはインピーダンスが高めのものですが、この製品は38Ω。やはり自分の普段のヘッドフォンと比べると、音量は大きくしっかりした音で、非常に強くコシのある再生音です。密閉感は無理なく強く、遮音性能は高いです。これはイアパッドの作りの丁寧さと、パッドの左右90°ずつ動いてどんな頭(というより耳の外側)にもアジャストする可変性の高さからくるものでしょう。片耳モニターにも適してして、スタジオ・モニター用ヘッドフォンとはいえ、さりげなくDJ的な現場仕様感もあります。プラグは金メッキ仕様。とてもしっかりとした作りで、安心感があります。実際にヘッドフォンまわりが接触不良を起こすケースはよくありますから。コードの作りもしっかりしていて、カール・コードを採用しています。これはいいですね。スタジオでヘッドフォンで作業していると、気がついたらヘッドフォンのコードが身体に巻き付いていた、なんてことがよくありますが、カール・コードなら常にコードまわりはすっきりとできます。重量は284g。標準といったところでしょうか。装着していて気になる重さではありません。出力音圧レベルは99dB/mW。これも標準、もしくはやや高めといった数字です。キックなどの低音を伴うアタック感、量感や深みといった部分のチェックに十分適していると感じました。さて、自分なりに使用してみて感じたことですが、音量の大小から発生する音の質感の違いは少ないです。全体を通して聴く場合と、単発の音にフォーカスして聴く場合とを比べても、どちらも過不足ない使用感です。余裕のある再生音で、特定の帯域に対する張り出し感もありません。強いて言えば、低域と高域にやや特徴があるように感じられます。自分が普段使用するものよりも、ゆとりが感じられます。ボーカルやドラムなどの空気感を伴うソースでは、その傾向がより顕著に感じられました。中高域のより存在感のある帯域は非常にフラットに聴こえますので、結果として全体の印象はやや広い空間を感じます。低域は自分が普段使用しているものよりは、若干タフな音に聴こえました。密閉感と音圧からの部分もあると思われますが、録音の際に単音にフォーカスする場合は、原音に忠実な再生感で、使いやすいと感じました。定位も非常に分かりやすいです。平坦な印象も無く、立体感も十分に感じられます。上下左右の空間の広がりと同じだけの奥行きもしっかり再生されていると思いました。ライン入力されたシンセや、空気感を伴うパーカッション類など、さまざまなソースに対してもフラットな再生感があり、またトータルで聴いた場合にもそれぞれのソースの細かいニュアンスを失うことなくクリアに再生できます。スタジオ作業用のモニターとして素晴らしい能力を感じるヘッドフォンであると感じました。
AUDIO-TECHNICA
ATH-M50
オープン・プライス(市場予想価格/17,800円前後)

SPECIFICATIONS

■タイプ/密閉ダイナミック型
■周波数特性/15Hz〜28kHz
■許容入力/1,600mW
■出力インピーダンス/38Ω
■重量/284g (コード除く)
■付属品/収納ポーチ