トランジェント機能やモジュレーターも備えたアナログ・フィルター

JOMOXM-Resonator

ドイツのJOMOXによるM-Resonatorは、ステレオ入出力に対応し、L/Rそれぞれに別の設定ができる画期的なアナログ・フィルター・マシンである。また元来のフィルター的な役割を担うだけでなく、エンベロープ・ジェネレーターの装備により、原音のアタック/リリースをコントロールできる。さらにL/R同士でモジュレーションをかけ合うことも可能で、FM変調によるリング・モジュレーター的な役割を持たせることもできる。ものすごくシンセライクなフィルターなのである。

コンプ的な役割のEGセクションで
入力音のグルーブ変化が楽しめる


本体はコンパクト・エフェクターほどのサイズで、端子類はリア・パネルに装備されている。入出力はフォーン端子でステレオ1系統用意されており、モノラル入力/ステレオ出力という接続も可能だ。次にパネルの操作子について。入力音は大まかに言って、エンベロープ・ジェネレーター・セクション→フィルター・セクション→モジュレーション・セクションの順に流れることになる。各セクションを見ていこう。まずは本機の特徴とも言えるエンベロープ・ジェネレーター(以下EG)セクションから。パネル中央上にあるEnvelopeセクションにはAttackとReleaseツマミが用意されているが、アナログ・シンセで言うところの、VCFのEGかと思いきや、どちらかというとSPL Transient Designer的なボリュームのアタックとリリースだと想像してもらいたい。つまり、コンプレッサーやノイズ・ゲート的な役割を果たすのである。このEGが非常に面白い。原音のアクセントや各音符の長さをこの2つのパラメーターでコントロールするのだが、何かしらのリズムを通してAttackとReleaseツマミをいじってやると違ったグルーブを作り出すことができる。もともとの音には無かったアクセントが生まれたり、長めだったデュレーションが短くなったりすることによって、別次元のグルーブが生み出されるのである。その意味でもTransient Designerに似ていると思った。

低域に癖を付ける新感覚の処理や
変調ツマミで複雑な倍音も作り出せる


ではフィルター・セクションを見ていこう。左右に分かれて配置されているそれぞれのCutoffツマミは、文字通り通常のフィルターやシンセで言うところのカットオフ・フリケンシーのことであり、これを+方向に回すと高周波までフィルターが開いて音が明るくなり、−方向はその逆となる。フィルター・タイプはローパス仕様だ。同様にFeedbackツマミがいわゆるレゾナンスであり、+方向に回すとカットオフの帯域に癖を付けることができる。あるレベルに達すると、忠実に発振までしてくれる。面白いのは、このFeedbackを−方向に回したときだ。あまり聴き覚えのないフィルタリングができる。帯域的に言うと100〜500Hz辺りにどんどん癖が付く感じだろうか。例えばブレイクビーツなどにかけた場合、キック辺りに面白い癖を付けることもできる。極端にかけてしまえば、ビートの中のキックと同じタイミングでベース・ラインらしきものが作り出されたりする。CutoffとFeedbackの組み合わせいかんによっては、L/Rで別々のグルーブを作ったりも可能で、そういう意味では、元来のフィルターよりもいい意味でフィルターらしくない別の使用方法を見いだせるのではないかと思う。入力音量を10dB下げる中央のGainスイッチを挟み、中央下に並ぶMix 2-1/Mix 1-2/FM 2-1/FM 1-2は冒頭でも述べたモジュレーション用ツマミ。LからR、またRからLに対してカットオフ周波数の変調をしたり、FM変調させたりすることができる。ここでかなり強烈な倍音を作り出すことも可能だ。ここまで音作りの幅が広いとなれば、フィルター・セクションにハイパスやバンドパスといった別のフィルター・タイプを装備してくれたら、とことんいじり倒す者としてはうれしかったりした。もう1つ、Bypassスイッチをオンにして原音と比較すると分かるのだが、フィルターを完全に開いていても幾分レンジが狭くなる点が本当に惜しいところだ。しかしながら、かなり突っ込んだサウンド・メイクができるのは、パネル上に並ぶパラメーターをご覧になれば一目りょう然だと思う。音作りの新たな方向性をイメージさせてくれる面白いマシンだ。20071001-05-002

▲リア・パネルの入出力端子は、左からアウトプットL/R、インプットL/R(すべてフォーン)

JOMOX
M-Resonator
52,290円

SPECIFICATIONS

■外形寸法/145(W)×53(H)×155(D)mm
■重量/700g