USBオーディオ/MIDIインターフェースまで装備した音源モジュール

ROLANDSonicCell

ROLANDから"次世代型音源モジュール"SonicCellが発売されました。何をもって"次世代型"かというと、音源モジュールでありながら、USBオーディオ/MIDIインターフェースも内蔵しているという点ですね。キーボードとコンピューターとこれさえあれば、ライブから宅録までできてしまうというおいしいやつ。ということで早速検証してみたいと思います。

Fantom-X直系の音源に
アコースティック系の波形を追加


手に取ってみると、これがまた軽い! ACアダプターを除くとわずか1.2kgです。見た目もシンプルで、トップ・パネルには9つのボタンとダイアル、ディスプレイがあるだけです。まず音源モジュールとして使ってみましたが、説明書を読まなくてもMIDIチャンネルの設定、音色のセレクトが簡単にできました。特にこのダイアルがスイッチにもなっていて使いやすい。欲しいパラメーターのところまで回して押すと、設定/変更ができます。そしてこの小さなディスプレイがまたなにげに良いのです。"高視野角/高輝度の有機ELディスプレイ"とのことですが、どの角度からでもはっきりと見え、ライブで非常に助かります。肝心の音色ですが、Fantom-X直系の音源に、ピアノやストリングス、ドラムなどのアコースティック系の波形を加えた計1,024のパッチに29のリズム・セット、64のパフォーマンスがプリセットとして搭載され、最大同時発音数は余裕の128音。パフォーマンス・モードでは16chのマルチティンバー音源にもなります。ピアノ/エレピ系だけで100音色以上もあるのはキーボーディストの自分にとってうれしいことですね。クラブで重宝しそうなシンセ音、特にリードやパッド系はさらに充実しています。そしてウェーブ・エクスパンション・ボードを2枚搭載可能で拡張性も問題なし。さらに1,000を越えるウェーブフォームからも音を作れるし、エフェクトは78種類のタイプから選べるマルチエフェクト3系統に加え、コーラスとリバーブの計5系統を同時使用でき最終出力にはマスタリング用の3バンド・コンプも用意。音源モジュールとして全くそん色ありません。

付属のプラグイン・エディターで
コンピューター上でも操作が可能に


そして、ここからがSonicCellの真骨頂な話。シンセサイザーにUSB端子が付いていて音色のエディット/保存ができるのは珍しくありませんが、本機では"どうせUSBでコンピューターと接続するならインターフェースにしちゃえ!"という発想で作られているのではと(筆者の推測ですが)。実際、SonicCellは2イン/2アウトのオーディオ・インターフェース、16chのMIDIインターフェースという仕様。オーディオ・インターフェースとしては最高24ビット/96kHzに対応し、ギターやボーカル用のマイクなども接続できるようにXLRとTRSフォーンの両方に対応するコンボ・ジャックを採用。コンデンサー・マイク用にファンタム電源の供給も可能です。ここまでだと筆者も音源にインターフェースを付けることのメリットがよく分からなかったのですが、付属のプラグイン・エディター・ソフトをコンピューターにインストールすると"なるほど!"と手拍子一つ。そうです、このエディターがAudio Units、VSTiに対応しているのでSonicCellがコンピューターへの負荷を最小限に抑えた16chマルチティンバーのソフト・シンセ的な状態で使えるのです(ホストDAWの動作確認情報はROLANDのWebサイトで確認できます)。もちろんWindows/Mac両方に対応。筆者はSTEINBERG Cubase4のユーザーなので、VSTプラグインとして設定すると、簡単に使えました。ボリュームからエフェクトまでコンピューターの画面上でいじれるので使い心地も満開! さらにUSBメモリーで音色のバックアップはもちろんのこと、AIFF/MP3/WAVなどのオーディオ・データやMIDIデータをストリーミング再生することができます。これであらかじめ用意したトラックを再生しながらライブ演奏なんてことも簡単にできます。総じて、SonicCellは面白い! いろんな用途が考えられる、まさに"次世代型音源モジュール"だと思います。初心者にはSonicCellとMIDI鍵盤、コンピューターさえあれば、音楽制作をスタートできるという意味でお勧めですし(そんなあなたのためにCAKEWALK Sonar LEが同梱されています)、上級者の方にはROLAND Fantom-Xの音色を手軽にDAW環境に取り込めるという意味でお勧めですね。この1.2kgの箱をカバンにつめるだけでROLANDの音色を持ち運べ、そのままUSB経由で高音質でコンピューターに取り込めるということで重宝したいと思うSonicCellでした。"次世代型"は軽かった!

▲専用プラグイン・エディターSonicCell Editor。SonicCellの各パラメーターの設定をコンピューター上で行える。対応OSはWindows XP/VistaとMac OS X 10.4.3以降



▲リア・パネル。左からUSB COMPUTERコネクター、USB MEMORYコネクター、MIDI OUT/IN、INPUT LEVELつまみ、LINE(R)入力(フォーン)、ライン/マイク/ギター入力(TRS/XLRコンボ)、INPUT SOURCEスイッチ、OUTPUT(フォーン×2)、電源スイッチ、DCイン

ROLAND
SonicCell
オープン・プライス(市場予想価格/80,000円前後)

SPECIFICATIONS

■最大同時発音数/128
■パート数/16
■外形寸法/294(W)×175(H)×55(D)mm
■重量/1.2kg(ACアダプター除く)