2組のステレオ・マイクで録音の自由度を高めたハンディ・レコーダー

ZOOMH2

部屋で外からかすかに聴こえる虫の声を録音、反対側には扇風機の音、チューニングされていないガット・ギターの美しい不協和音、そのとき車が通りを横切る。このままだとずっと録音しそう……。“デジカメ感覚のハンディ・レコーディング”というキャッチが付けられた、ZOOM H2。ここに本機のテーマが明確に表現されています。早速試してみたいと思います。

片手で操作可能な“携帯感覚”
360°サラウンドの録音が可能


フィールド・レコーディングは僕の趣味でもありますが、このような機材で大事なことはまず操作性。“この瞬間をとらえたい!”と思ったとき、起動、マイキング、ゲイン調整、仮録音、本番……って間に合う訳がありませんよね。その点H2は簡単。いきなり録音できました。ほとんどの操作を片手でできるのでまさに“携帯感覚”です。それだけではありません。収音範囲が異なる2つのXY方式ステレオ・マイクを本体の前後に搭載している点が大きな特長です。フロント・マイクは90°の収音範囲で歌や楽器などに、リア・マイクは120°と広めなのでライブやフィールド・レコーディングに適しています。しかも、両者は切り替えて使えるほか、サラウンド2chとサラウンド4chという録音方法もあります。前者はフロントとリアの両方でステレオ録音する方法。後者はフロントとリアそれぞれでステレオ録音し、計4ch分を録音できる方法です。サラウンド2chでギタリストとボーカリストが本機を挟んで対面で録音してもいいし、サラウンド4chはバンドのリハーサルなどに便利。収音範囲が360°になるので“一方向の音しか録れていない!”ということもありません。しかも、3Dパン機能で録音後に前後左右のバランスを取ることも可能なのです。さらに本機はUSBオーディオ・インターフェース機能も搭載し、USBマイクとしても使えます(Windows XP/Vista、Mac OS X 10.2以降でMME、Core Audio対応)。ちなみに外部マイクも使用可能で、デスクトップ・スタンドやマイク・クリップ・アダプターも付属しています。録音形式は最高24ビット/96kHzのWAV、あるいはMP3に対応(サラウンド4ch録音はWAVのみで、ステレオ・ファイルが2つ作成されます)。記憶媒体はSDメモリー・カードなので、モーターの駆動音に悩まされる心配もありません。4GBのSDHCメモリー・カード使用時は、16ビット/44.1kHzのサラウンド4ch録音で約3時間の録音が行えます。また単3電池2本で約4時間の駆動が可能です(ACアダプターも付属)。

細かなニュアンスまで奇麗に集音
部屋の大きさまで感じ取れる立体感


まずは楽屋で冷蔵庫のモーター音を録ってみました。フロント、リア共に感度良好! 次にサラウンド4chで汽笛の音を。立体感のある音です。水しぶき、カモメの鳴き声……イイじゃん! この素材頂きます! さらにライブ会場でサウンド・チェックを録ってみると、細かなニュアンスからダイナミックな音までまで奇麗です。部屋の大きさまで感じられる立体感がいい! 続けてバンドのリハーサルも。充実感のある奥行きが表現されています。ルーム感はリハーサル・テイク以上! ギターにも手を伸ばしてみました。チューナーやメトロノームなどの細かい機能も充実して、忘れ物が多い僕には最高です。単三電池2本で約4時間の駆動が可能なのも便利ですね。サラウンド4chはアンビエンスとして使うのも良さそう。スタジオなどでは異なる向きにマイクを立てることでやっと得られる空気感を、表現できます。H2は、非常に音楽的で楽器的なレコーダー。久々に機材からインスピレーションをもらいました。60BPMで歩く革靴の音とか、そんな思いつきもすぐ録れる“デジカメ感覚”の楽しい機材です。20071001-03-002

▲ボディ右側。左からUSB端子、LINE IN(ステレオ・ミニ)、MIC GAINスイッチ、EXT MIC IN(ステレオ・ミニ)


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▲左側。左からPHONES/LINE OUT(ステレオ・ミニ)、VOLUME +/−キー、電源スイッチ、DC 9V入力

ZOOM
H2
29,400円

SPECIFICATIONS

■記録メディア/SDメモリー・カード(16MB〜2GB)、SDHCメモリー・カード(4GB)
■録音時間(4GB SDHCメモリー・カード使用時)/WAV/44.1kHz/16ビット/ステレオ:約6時間、MP3/44.1kHz/128kbps/ステレオ:約68時間
■最大録音ファイル・サイズ/2GB
■外形寸法/64(W)×110(H)×32(D)mm
■重量/110g