現代的な音に合うワイド・レンジでファットな特性を持つヘッドフォン

EQUATION AUDIORP-21

アメリカの新興メーカーであるEQUATION AUDIOからヘッドフォン、RP-21が届きました。“Beyond Equal”(同等以上)をコンセプトに掲げている同社は、プロ・オーディオ界で長いキャリアを持つエンジニアやスタッフにより設立されたプロフェッショナル集団で、用途別に特化したマイクのシリーズやヘッドフォンを作っているとのこと。今回はそのヘッドフォンのラインナップの中でも“レコーディング、ミキシング用”とされるモデルです。

密閉度の高い構造を持ち
長時間使用にも適した軽量設計


資料によるとRP-21は基本的にスタジオでの作業を想定して作られているようです。密閉型で、耳自体は押さえつけずにすっぽりと覆いその周囲の部分にクッションが当たるタイプの構造になっています。経験上、ヘッドフォンを長時間使用する場合は、どれだけ装着感が良くても、結局はできるだけ軽い方がより疲労感が少ないのですが、RP-21は見た目の割にとても軽量。長時間の使用にも問題がなさそうで、押さえつけ感もしっかりしていて密閉度が高いです。頭頂部が当たるバンドの部分はメッシュになっていて滑り防止、ムレ防止の役目を果たしています。また、ケーブルは片出しタイプで脱着可能となっており、左側のユニットにジャックがあります。付属のケーブルを差し込んで回すとロックされ、不用意に抜けることはありません。突然の断線にもケーブル交換で対応できるのは便利です。

深いところまで伸びたローエンド
自然でバランスの良い高域


ヘッドフォンを選ぶコツはズバリ“試聴する”、これに尽きます。ヘッドフォンという機材は構造的にそれほど複雑なものではないので、自分が聴いてみて、使ってみてどうかがすべて。スペックなどの数値的なものだけで判断するのはなかなか難しいものです。今回は、私自身が使用していてなじみ深いSONY MDR-CD900STと比較してみようと思います。MDR-CD900STは“色付けの無い素直な音”のモニター・ヘッドフォンだと認識していますが、このRP-21は、それに比べとてもワイド・レンジな印象を受けました。低域から高域までしっかり出ている感じで、特に低域がかなり下の方まで伸びているようです。そのため、テクノ/ハウスやヒップホップなどの打ち込みの重量系キックなどはかなりの重さを感じます。若干70〜90Hz辺りの低域が持ち上がっている気もしますが、ローエンドが深いところまで伸びているのでファットに聴こえるというのもあるのでしょう。その割に濁りなどは無く、生演奏のアコースティックもの(ピアノやストリングス系など)の低域などもすっきりと見えるので、逆にローエンドの処理がやりやすいのではないでしょうか。一方、低域に対する高域のバランスも良好で、帯域的に不自然なピークなどは感じません。低域がしっかり出るものは、そのせいで高域が物足りなかったり無茶なバランスになったりしがちですが、RP-21は多くも少なくもないとても自然な高域バランスです。以上を踏まえての本機の感想は“ワイド・レンジでファット”です。自分のこれまで使っていたヘッドフォンに慣れている人だと多少戸惑うかもしれません。イメージ的に本機は“現代の音楽ソースのレンジ感を余すことなく再生する”方向性と言えるのではないでしょうか。そういう意味でもこのRP-21は、現代のソースにマッチした十分な性能を持つヘッドフォンだと言えます。現代のサウンドの長所も、従来のサウンドの機微も見落とさないヘッドフォンなので、これから新しいヘッドフォンを探している人はぜひ選択肢に加えてみるとよいでしょう。ヘッドフォンやスピーカーなどのモニター機器全般は結局慣れたモン勝ちの世界だと言っても過言ではありません。そのモニター機器を使っていかに多くの音源を聴き、自分自身がその特性をどのように把握するかが大切だと思います。自宅での作業など、モニター環境にある程度制限がある場合、ヘッドフォンによるモニタリングはとても有効な手段の1つです。時代の音に適したモニターが求められているのはヘッドフォンも例外ではなく、周囲の環境と連動したものを選ぶことが重要だと思います。
EQUATION AUDIO
RP-21
16,590円

SPECIFICATIONS

■タイプ/密閉型
■感度/100dB(±3dB)/1mm@1kHz
■周波数特性/10Hz〜22kHz
■出力インピーダンス/32Ω
■重量/350g