AUDIXがプロフェッショナル仕様のダイナミック・ボーカル・マイクとしてOM 1をデビューさせてから既に20年になりますが、今回同社が発売するのはハンドヘルド・タイプのボーカル用コンデンサー・マイク、VX 5です。AUDIXと言えば“性能が良く良心的な価格の製品を提供する会社”というのが評判で、今ではさまざまなタイプのマイクが幅広い層に支持されております。そんな中でも今回のVX ５は既に発売されている上位機種、VX 10のロープライス版としての登場になりました！
あらゆる場面での使用を想定した
バランスのいい超指向性マイク
このVX 5の特長は、あらゆる場面を想定しライブ・パフォーマンスはもちろん、レコーディングでの使用にも十分活躍できるようにデザインされていることです。まず、ライブでの使用を意識したボディは強じんなダイキャストに包まれていて、指向性はスーパー・カーディオイド・タイプ。エレクトリック・コンデンサー・カプセルには14mmの金蒸着ダイアフラムが使用されていて、周波性特性は40Hz〜16.5kHz、出力インピーダンスは150Ω、さらに−10dBのPADと低域ロールオフ・フィルター（150Hz）のスイッチが装備されています。そして−10dBのPADが入った状態で、最大音圧レベル（SPL）は140dBなので、大音量にも十分対応できるコンデンサー・マイクになっております。さて、実際に手に取ってみると、まずハンドリングとしての感触はスリムなフォームに握りがしっくりきます。そして227gの軽さにも驚きました。手に持ったときのバランスの良さからもパフォーマンス向けであることが実感できます。さらに、３段階のポップ・フィルターとして外側のステンレス・メッシュ、中央のインナー・スクリーン、そしてカプセルを覆うメッシュが装備されており、非常に効果的です。ライブでの激しいポップ・ノイズおよびハンドリング・ノイズにも全く問題ありません。実際、かなり激しいパフォーマンスにも十分対応できると思います。
９kHz辺りに作られたピークが
ブリリアントな音を演出
また、スーパー・カーディオイドの特性がよく出ている傾向として、軸上のレスポンスが正確です（軸外は−20dB以下）。どんなに激しく動き回っても、ボーカリストの周囲に存在するステージ・サウンド、例えばドラムやアンプなどの生音の回り込みが極度に抑えられていて、モニター・エンジニアにとってもコントロールしやすい状態になります。まさにスーパー・カーディオイドならではの結果ではないでしょうか！さらにVX ５はかなりフラットな周波数特性ではありますが、資料に掲載されている周波数特性のグラフを見ると実は９kHz辺りに少しだけピークがあります。これは大変面白いと思いました。VX ５の第一印象が、かなりブリリアントに感じる要因はこのピークにあるのだと思います。だからと言って、高域がバッドな音質になることはありません。全体的な音質としては、スッキリとしたクリアなもので、かつ滑らかな温かいサウンドが特長だと思います。さらに近接効果による低域増は予想より少ないと感じました。ただし極度のオンマイクによるボーカルの場合には、装備されている150Hzのロール・オフ・フィルターによる効果が期待できます。また、ライブ時においてボーカル・マイクへのステージでの回り込みが激しい場合にもこのフィルターを使用すると確実に良い効果が得られるでしょう。このVX 5はハンドヘルド・ボーカル・コンデンサー・マイクとしての条件を、さまざまな要素から効果的にクリアしています。また、音質的にも、コンデンサー・マイクらしく周波数特性がフラットであり、そしてこのマイクから伝わってくる音は耳に優しく、上品な輝きのある温かい音質が保たれています。今すぐ使ってみたいと思わせる、かなり魅力的なマイクと言えるでしょう。なお、名称としては“ハンドヘルド・ボーカル・コンデンサー・マイク”となっておりますが、実際にこのVX 5を使用してみたい場面はかなり幅広くあると思います。コーラス、アコースティック・ギター、フルートなどの木管楽器、ブラス、パーカッション、ストリングス、ドラムのオーバーヘッドにと、オールラウンドにライブでも、レコーディングでも使用できる理想的なマイクだと思います。価格も良心的ですし、実にバランスのいいコンデンサー・マイクが登場したのではないでしょうか。
SPECIFICATIONS
■指向性／超指向
■周波数特性／40Hz〜16.5kHz
■インピーダンス／150Ω
■最大音圧レベル／140dB
■感度／6.9mV/Pa （1kHz@1Pa）
■スイッチ／ー10dB PAD、ローカット
■ファンタム電源／9〜52V
■外形寸法／22（φ）x173.5 （H）mm
■重量／227ｇ
■付属品／マイク・ホルダー （MC1）、キャリング・ポーチ
