USBメディアのファイルを使った新感覚のDJ用ツイン・プレーヤー

NUMARKD2 Director

“DJが重いレコードを持ち運ぶ時代はそのうち終わり、APPLE iPodやハード・ディスク、メモリー・カード辺りを持ち込んでプレイする時代が来るかも”なんて言っていたのはついこの間の話。しかし、もう来ちゃってましたよ、そんな時代がっ! D2 Directorは、iPodやハード・ディスク、フラッシュ・メモリーなどUSB接続メディア内のファイルを使ってプレイできる優れモノのDJ用ツイン・プレーヤーです。

接続したUSBメディア内にある
WAV/MP3/ACCをDJプレイ


サイズは約3Uのラック・マウント対応で、奥行きはわずか8cm程度。あくまで本体は、テンポ・スライダーとジョグ・ダイアルが2組付いたツイン・プレーヤーで、音源としては前述したUSBメディアを接続して使います(本体のUSB端子は3個ですがハブを使用することで拡張も可能)。音源はA/Bのプレーヤーに割り当て、両者の音はリア・パネルから出力。それを従来のDJミキサーに入力してプレイを行うというもので、なるほど納得。ミキサー部を外部のものに任せるという潔さが気に入りました。使い慣れたDJミキサーを使用できるので、自分が持つミックス・スキルをそのまま生かすことができると同時に、クラブのDJブースや家での設置に必要なスペースは最小限で済みます。現状の環境に負担をかけずに追加できるというのは大きなポイントになりますね。再生可能なファイル・フォーマットは、WAV、MP3、AAC。手順としては、それらのファイルが入っているUSBメディアを用意して本機に接続し、LIBRARYボタン>PUSH SELECTノブを回して大型ディスプレイ(視認性良し)に表示される“Files”を選択。するとUSBメディア内にある曲が表示されるので、メニュー・バーに出てくる“to A”もしくは“to B”の位置にあるボタンを押し、A/Bどちらかのプレーヤーにアサインして、PLAYボタンを押せば曲が再生されます。その次に再生したい曲は、同様の手順でもう片方のプレーヤーにアサインして、外部DJミキサーのヘッドフォン・アウトでモニタリングしながら、本体のピッチ・スライダー(最大−25%/+100%)でテンポを合わせていくというやり方。この辺りは従来のCDターンテーブルでDJミックスする形に近い感覚です。ただしピッチ・ロック機能はなく、テンポ変更の際は音程も一緒に変わります。BPMの表示も出るし、ループやジョグ・ダイアルでのスクラッチ(自分としては若干しっくりこなかったのですが)もでき、あらかじめパソコンで楽曲のプロファイルを作成しておけば、楽曲の展開が分かる波形らしきものを表示させることもできます。MP3などのようにタグが付いているものであれば、曲名、アルバム、アーティスト、ジャンルなどで絞り込んで曲の検索もできるし、本体もしくは付属のUSBキーボードからテキストを打ち込んで素早く検索することも可能です。

楽曲のプレイリスト作成が充実
CDタンテ/DJソフトとも違う感覚


また便利な使い方として、“Files”の部分でプレーヤーのA/Bに直接アサインするのではなく、メニューバーのto Crateボタンを押して“Crate”というエリアにいったん曲を待機させる方法があります。これが秀逸で、接続しているUSBメディアにある幾多のファイルの中から使いたい曲をあらかじめここに収めておくことで、選曲をスムーズに行えるというわけです。アナログ盤でのDJプレイでは、使用候補のレコードをボックスから引き出して箱の角に斜めに掛けておくことが多いのですが、この機能はまさにそんな作業と同じ。もちろんリスト内の順番は変えることができるし、設定によっては曲が終わった側のプレーヤーに“Crate”の最上段にある曲を自動アサインさせることも可能となっています。さらには同じくLIBRARYボタン>“Files”の段階で“Playlist”を選べば、その曲がプレイリストに登録されるのですが、これはDJ前に何百何千とある手持ちのレコードの中から、今夜のギグのレコード・バッグに入れる曲を選ぶ作業に似ています。ただし本機の場合はレコード100枚をバッグに入れる(20kgオーバー!)のと違って、重さを気にせず何曲でも登録しておけるし、ジャンルや雰囲気によって幾通りものプレイリストを用意しておけます(プレイリストは一度USBメディアを抜いても再接続時に呼び出し可能)。この手軽さはCDターンテーブルを凌駕し、DJソフトに付きまとう動作の心配までも無用のものとしてくれます。しかも、パフォーマンスとしては2つのプレーヤーの自動テンポ合わせ機能などは無く、基本的なミックス技術は必要なので、お手軽なDJツールではないのが逆に良いです。前述のように小型でDJブースでも設置場所を取らないので、これがクラブで常設になった日には、ポケットにUSBメモリーだけを突っ込んで手ぶらでDJしに行けちゃいますね!

▲リア・パネル。左からDCイン、フェーダー・スタートA/B、ライン・アウト×2系統(RCAピン)、USB×2。なお本製品にはファイル名の打ち込みなどで使うUSBキーボードも付属

NUMARK
D2 Director
83,790円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz(±0.1dB)
■外形寸法/480(W)×133(H)×102(D)mm(本体)
■重量/約2.3kg(本体)