環境に合わせて特性を自動補正できる新世代のアクティブ・モニター

JBL PROFESSIONALLSR4326P

今回、5月に発売されたばかりのパワード・モニター・スピーカー、JBL PROFESSIONAL LSR4326Pを試聴することとなった。資料によれば、自動で音場補正する“RMCシステム”と、独自の設計コンセプト“LSR理論”を導入。部屋の形状にかかわらず、自然な音質と精微な音像を描写する優れたモニタリング環境が実現できるという。自動音場補正システムがどの程度のクオリティか、楽しみにしていた。

自動補正や音量/EQ設定など
ネットワーク化による集中管理が可能


40年近いエンジニア生活の中でJBLスピーカーに初めて出会ったのは1970年代前半のこと。当時は、フォークやロックの台頭もあり、スピーカーもワイドレンジでフラットな周波数特性と低ひずみ率、耐入力の高さと高い能率、広いダイナミック・レンジが必要とされてきた時代だった。また、ジャズにおいてもトップ・シンバルのチンチンと小気味の良い響きは、JBLの独壇場だったのではないかと思う。それからしばらくは、どこのスタジオでもJBLがメインのスピーカーとして使われていた。当時はJBLの耐入力の高さもあってか、結構な爆音で聴いていた覚えもある。その後は時代とともにさまざまなメーカーが各種モデルを研究開発し、各スタジオは導入したスピーカーの違いで独自色を出している。しかし、いつも問題になるのはルーム・アコースティックによって、モニター環境が左右されてしまうことだ。今回のLSR4326Pはそうした問題を解決できるというもの。ニアフィールド・モニターというと、音楽スタジオでは長らくYAMAHA NS-10Mシリーズが定番となっているが(現在は製造終了)、このLSR4326PはNS-10Mとほぼ同じ寸法で、違和感なく卓の上にセットができた。パワード・モデルなので、電源とオーディオ・ケーブルが必要。それに加え各スピーカーをイーサーネット・ケーブルで接続することで、ネットワーク化することも可能となっている。さらにコンピューターからのコントロール用にUSB端子も備えている。そして最大の特徴は自動音場補正システム“RMC”(Room Mode Correction)である。この調整も簡単。まずは付属の測定用無指向性マイクをリスニング・ポイントに立て、リアの端子に接続(ステレオの場合はLch)。そして、フロント側にあるRMCボタンを3秒間押すだけだ。その5秒後、自動的にサイン波スウィープ音がかなりの大音量で鳴り、設定が終了する。このときネットワーク化しておくと、1本ごとの測定を順に行ってくれるので便利だ。またワイアレス・リモコンも付属していて、このRMCを含めEQ調整や任意のスピーカーのソロ再生などすべての操作が行える。音量調整もできるので、他のスピーカーと切り替えても違和感ないように設定しておけるのはうれしい。そのほか、最高96kHzに対応するデジタル入力(AES/EBUおよびS/P DIFコアキシャル)が付いていることも注目すべき点だ。さらにLSR4300 Controlというソフトが付属しているのもポイントで、USB接続したパソコン(Windows/Mac)ですべてのコントロールを行うことができる上、設定の保存も可能となっている。

JBLの歴史を感じさせる
高域の伸びやかさとまとまりの良さ


そして実際に鳴らした印象だが、さすが1946年からのJBLの歴史を感じさせる、高域の伸びやかさ、まとまりの良さが感じ取れた。試聴はスタジオのコントロール・ルーム(ラージ・コンソールのある部屋とプロジェクト・スタジオ規模の部屋)で行ったのだが、自動音場補正システムも測定が簡単に行える割には、かなりしっかりとしているようだ。補正用EQをスルーにして比較してみると、補正の無い状態では重低音の干渉などが感じられ、その効果を確認できた。ただし、この補正によって低域のパワー感はサイズ相応のものになってしまう。コンソールが置ける規模のスタジオならば、1サイズ大きなLSR4328P(315,000円/ペア)の方が適しているのかもしれない。また、本機はJBL独自のLSR(Linear Spatial Reference)理論に基づき、センター以外でも正確な音像定位と忠実な音質が得られる設計という触れ込みだ。実際にも、確かに指向性を広く採っているように感じられた。試聴前は、逆に定位があいまいになるのではないかと心配にもなったのだが、実際はしっかりとした定位も実現しているように思う。機会があれば、RMCとネットワーク機能を活用して、5.1chサラウンドのようなマルチスピーカー環境でのテストも行ってみたいと思った。
JBL PROFESSIONAL
LSR4326P
252,000円(ペア)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/55Hz〜20kHz(±1.5dB)
■最大音圧レベル/106dB SPL
■ドライバー構成/159mm(LF:436H)+25mm(HF:431G)
■パワー・アンプ出力(<0.1%THD)/150W(LF)+70W(HF)
■入力感度/94dB SPL(1m)
■AD変換/24ビット/96kHz(64倍オーバー・サンプリング)
■サンプリング・レート/32/44.1/48/88.2/96kHz
■外形寸法/236(W)×387(H)×262(D)mm
■重量/13kg(1本)