クリア系〜テープ・エコー風まで対応の真空管付きデジタル・ディレイ

DAMAGE CONTROLTime Line

独創的なルックスと新次元のサウンドで驚きと注目を集めるDAMAGE CONTROL。今回はデジタル・ディレイTime Lineを紹介する。同ブランドは同様のフット・ペダル型ディストーションやオーバードライブなどでクオリティの高いサウンドを提供しているが、Time Lineはどんな音を聴かせてくれるのか?

8つのディレイ・モードを搭載
真空管のひずみ具合も付加可能


本機はコンパクト・エフェクターではない。電源はACアダプターで、持ち運ぶにはやや大きい気がするが、本体に8つのディレイ・モード(後述)を搭載し、24ビット(内部処理は32ビット・フロート)/96kHzのAD/DAを備え、本体だけで設定を8つメモリーできるので、同様のラック・タイプを考えると、逆に小さく軽い方かもしれない。入出力端子はイン/アウト共にフォーンで、ステレオの接続にも対応。MIDI IN/OUTも装備されている。パネルを見ると両サイドに入出力ゲイン用の真空管が配され(AD/DAの前後で真空管を通ることになる)、中央の“Magic Eye”と呼ばれる小窓にはエフェクトの状態に合わせてマークが不思議に浮かび上がってくる。コントロール部には5つのツマミがある。中央のツマミ以外は2段式になっており、2つのパラメーターが操作可能。まず左上はディレイの肝であるタイムとフィードバックのツマミ。ディレイ・タイムの可変幅はMODモードで1〜25ms、SLAPモードで25〜250ms、その他のモードでは250ms〜2.5sとなっているが、数値での細かなタイム設定はできない。しかしリアルタイムに“キュンキュン、グワグワ”とディレイ効果を楽しめるのはツマミ操作ならではのだいご味だ。中央のツマミでは、前出のディレイ・モード/メモリー切り替え、およびメモリーのセーブや、ループ音のリセットが可能。右上のツマミは原音/エフェクト音のミックス・バランスと、真空管によるエフェクト音のドライブ具合を設定できる。これはTime Lineならではの機能なので、本機しか出せないサウンドも作り出すことができそうだ。左下のツマミはモジュレーションの深さ/速さ。最後に右下のツマミはハイカット・フィルターと“SMEAR”という独特な表記のパラメーターがアサインされている。これはディレイ音のアタックをつぶし、マイルドにするもの。テープ・エコーの雰囲気を再現するためのもののようだ。

深みのある上品なディレイ音が特徴
LOOPモードの多重サウンドもクリア


次は各モードのサウンドをチェック。SLAP/LONGモードはシンプルなディレイで、本機の基本キャラを把握するのに最適。細かなタイム設定はできないが、少しにじんだディレイ音が気持ちいい。♪.モードはフット・スイッチよりテンポを入力すると、それに合わせて勝手に付点八分のディレイ・タイムにしてくれるので、お約束のU2ディレイでもプレイしてみよう。PONGモードはいわゆるピンポン・ディレイで、フィードバックが左右から交互に返ってくる。MULTIモードはテープ・エコーをモディファイ。ここで先ほどのSMEARのパラメーターが生きてくる。テープに録音されいい感じにアタックがつぶれた感じをばっちり再現している。REVERSEモードはディレイ音が逆再生でフィードバックされるマニアックな機能。LOOPモードは、最大27秒のループ再生/録音が可能。ギタリスト諸君、ぜひとも遊んでくれたまえ! 音をどんどんダビングしていけば、多重録音によるアンサンブル作りが可能。しかし、通常はそんなにダビングを重ねると最初のころに録音したサウンドがどんどん見えなくなってしまうのだが、クリアなままループされ続ける。どうなっているんだろうか……? さすが、わざわざLOOPモードを装備しただけのことはある。新しく、そして楽しい♪ なお、このLOOPモードでは各ツマミの使い方が変わり、専用マシンと化す。全体的に感じたことは、とにかくサウンドの雰囲気が深く上質。チェック時にほかの人にギターを弾いてもらい、何気なくこの原稿を書きながら聴いたが、“こんなサウンドのディレイって、今まで無かった”とふと感じた。今までのモデリング系エフェクターの弱点は高域の倍音成分の少なさであった。しかし、このTime LineはANALOGUE DEVICES製の高品質プロセッサーでの内部処理や真空管の特性のおかげでヌケの悪さを解消している。このクオリティなら、レコーディング/ミックス・ダウン時のボーカルやサックスなどのメロディ楽器の処理にも十分通用するだろう。ギタリスト向けの機材であることは間違いないが、その細やかなニュアンスをレコーディングの現場でも生かしてほしい。

▲リア・パネルには左からインプットL/R、アウトプットL/R(すべてフォーン)、MIDI IN/OUTが並ぶ

DAMAGE CONTROL
Time Line
オープン・プライス(市場予想価格/50,000円前後)

SPECIFICATIONS

■インピーダンス/入力:1MΩ、出力:100Ω
■内部プロセッシング/32ビット・フロート、96kHz■ダイナミック・レンジ/ドライ音:123dB(A-weighted)、ウェット音:110dB(A-weighted)
■外形寸法/229(W)×83.8(H)×185(D)mm
■重量/約1.7kg