シンプルで操作性に優れた２trポータブル・メモリー・レコーダー - サンレコ〜音楽制作と音響のすべてを届けるメディア

FOSTEXFR-2LE

土方裕雄

“PD-6、FR-2で培ったプロ用レコーダーとしての血統を受け継ぎつつも高いコスト・パフォーマンスを実現、アマチュア・ユーザーにも使いやすい業務機”というコンセプトを掲げたFOSTEXの2trポータブル・メモリー・レコーダー、FR-2LEが登場しました。同社によると必要最小限の機能に絞り、アマチュアにも手の届く価格に抑え、フィールド収録時における操作性やエラーレスで確実に記録する業務機としての信頼性を持たせた作りとのことです。早速フィールドに出てテストしてみました。

最高24ビット／96kHzに対応
TAMIYA製RCバッテリーも使用可能

本機は最近のハンディ・レコーダーに比べると一回り大きい感じですが、重量は800gと軽量で使いやすいデザインです。メーカーは単なる小型化ではなく、安定した収録が望める余裕のある構造を目指したようです。基本仕様は、最高24ビット／96kHzに対応し、BWFのほかMP3（192kbps）も選択できます。記録メディアはTYPE IIのコンパクトフラッシュ・カードで、4GBでは16ビット／44.1kHzで約6.3時間のステレオ録音が可能。またファイル名にRTC（リアルタイム・クロック）、つまり記録開始の日時を自動的に付加する機能があり、データ整理などで重宝するでしょう。このRTCのタイム・スタンプ情報はBWFファイルに記録され、DIGIDESIGN Pro ToolsのようなBWF対応DAWでは、該当するタイムライン上へ自動的にファイルをインポートできます。入力はマイク入力（XLR）とライン入力（フォーン）搭載のコンボ端子を２系統装備。マイク入力はファンタム電源も供給可能です。出力はモニター・アウトL/R（RCAピン）とヘッドフォン（ステレオ・ミニ）を備え、コンピューターへのファイル転送用にUSB 2.0端子も搭載しています。電源は単三乾電池４本、または専用ACアダプターが利用でき、野外などでの長時間収録には別売のTAMIYA製RC用バッテリーも使用可能です。さらに本体に小型ステレオ・コンデンサー・マイクも内蔵。簡易的な録音は本体のみで完結できます。

視認性に優れた大型ディスプレイ
マイクプリは中域に厚みのある音質

今回は海岸での波音を、内蔵マイクと外部入力につないだガン・マイク、SENNHEISER MKH 60とMKH 30で収録しました。内蔵マイクでの収録時は本機を手持ちしましたが、ローカットしても風音でボコボコと鳴るため、マイク面にタオルをかぶせて防ぎました。またガン・マイクはウインド・ジャマーを付けスタンドに固定しました。まずは設定から。海岸は風があるため内蔵ハイパス・フィルターをオンにし、ガン・マイク使用時にはファンタム電源を入れ、フォーマットはBWFで24ビット／96kHzを選択しました。これらの操作はトップ・パネルのキーを使い、大きく視認性に優れたディスプレイで行います。操作自体はとてもシンプルで誰でも使えるでしょう。また録音レベルはフロント・パネルのTRIMつまみとロータリー式の録音レベル調整つまみで設定します。録音後の確認はヘッドフォンだけでなく内蔵スピーカーでも可能。これは現場で複数のスタッフとチェックするときに役立つでしょう。今回収録したサウンドはスタジオのDAWでチェックしたのですが、USB経由でファイル転送したところ、USB 2.0ということもあり十分な転送速度でした。そのサウンドですが、マイクプリは中域に厚みのあるキャラクターです。96kHzでの録音ということもあり、なぎさの泡の粒が一つ一つ聴き分けられる感じがしました。また内蔵マイクも意外と健闘。その音は“遠目に海岸の波音が聴こえる”といった印象です。内蔵マイクはインタビューなどが主な用途と思われますので、MP3モードでテーブルの上に本体を置き、1m弱ほど離れた距離で会話を収録。これも話し声を聴き取るのに十分な音質でした。少人数での会議などの記録にも役に立つことでしょう。テレビ番組の野外取材などでは、いまだにバックアップ用録音機としてDATが使われていますが、テープ・メディアのチェックは手間がかかるため、本機のような容易にデータを呼び出せるレコーダーが望ましいと思われます。価格や操作性、耐久性と信頼性において、FR-2LEは十分にその候補となるでしょう。アマチュアの方でも、気に入ったマイクとともに、これ１台で気軽にフィールド・レコーディングを楽しめると思います。