簡単操作のコンプレッサーを4基内蔵した軽量なアナログ・ミキサー

YAMAHAMG124CX

筆者の本職はレコーディング・エンジニアですが、最近カフェでのミニ・ライブでPAを手掛けることも増えてきました。"うちの店でもやってみたいんだけど......"と相談されることもしばしば。YAMAHAの小型ミキサーMGシリーズは、従来から手ごろな価格ながら安定した出音で、そうしたシチュエーションにも薦めやすいものでした。そのMGシリーズに、マイク入力用コンプレッサーを搭載した4モデルが新たに登場しました。今回チェックするのは12chモデルのMG124CXです。

12ch/4バスの豊富な入出力
コンプはナチュラルな音質


まずボディ・カラーは、従来の淡いブルーからぐっと濃い藍色となり、かなり落ち着いたイメージです。ツマミ類のレイアウトもゆとりがあり、それぞれ色分けされているので音に集中してオペレートが行えそう。入出力端子はすべてトップ・パネルに配置され、入力はモノラル4ch+ステレオ4系統。ステレオのうち2系統はMIC入力端子(モノラル)も実装しています。モノラル入力4ch分にはINSERT端子も搭載。CDプレーヤーなどの接続に使用できる2TR IN、そしてステレオAUX RETURNが各1系統。外部エフェクターが使用できます。マイクプリはファンタム電源対応です。出力はメインのSTEREO OUTのほか、MONITOR OUT、GROUP OUT(いずれもステレオ)で4バス仕様。2系統のモノラルAUX SEND(うち1系統は後述の内蔵エフェクト用としても使用可能)、REC OUTも備えています。カフェでのミニ・ライブやストリート・ライブなどに使用するには、十分な入出力と言えるでしょう。そして、冒頭でも触れたようにch1〜4のMIC入力にはコンプレッサーが搭載されています。早速ボーカルに試してみましたが、かなりナチュラルな印象。音のキャラクターを変えずにそのまま前に出してくれます。あまりに気持ち良く持ち上がってくれるので、ライブ時などはハウリングに気を付けて適度にかけるのがよさそうです。シタールでもこのコンプレッサーを試してみたのですが、かなり深くかけてもアタックのニュアンスが崩れず、幾らでも余韻を持ち上げられました。シタールのような繊細な楽器に適応できるのであれば、大抵の楽器で問題なく使用できると思います。しかも、このコンプレッサーは面倒なパラメーター設定の必要がなく、つまみ1つで操作できるという点が素晴らしいです。ミニ・ライブなどで"コンプがあったらいいのに"と感じることが多いので、これは重宝しそう。"持っていけばいいのでは?"と言われてしまえばそれまでですが、なかなかそうはいかないもの。そんな現場の悩みを察してくれた機能なのでしょうか。

マルチエフェクト"SPX"も搭載
3.2kgの軽量化と音質を両立


さらに本機には同社の高品位デジタル・マルチエフェクト、"SPX"も装備されています。16種類あるプリセットにはリバーブ、エコー、コーラス、フランジャーなどのほか、オート・ワウやディストーションも搭載。こちらも面倒な設定は必要なく、PROGRAMでプリセットを選び、PARAMETERでリバーブ・タイムやLFOなどを調整するだけなので悩まずに操作できます。また、各チャンネルのEQはゲイン可変幅も広く、位相も狂わずに"しっかりかかる"といった印象を受けました。以上のような機能が装備されているにもかかわらず本体重量3.2kgととにかく軽いのも特長。これだけ軽いとサウンド面が心配になってきますが、安価なミキサーにありがちな"ドンシャリ感""ひずみっぽさ"などの癖はありません。本機のサウンドは"素直"かつ"豊か"といった印象です。特にアコースティック楽器には最適なキャラクターだと思います。コスト・パフォーマンスに優れ、簡単な操作でプロ並みの音が出せる本機。自宅のシステムにもいいのですが、持ち運びも手軽に行えるので簡易PAシステムを構築するのにはもってこいの機材と言えるでしょう。

▲リア・パネル。左から電源スイッチ、電源入力

YAMAHA
MG124CX
49,140円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz(−3/+1dB)
■全高調波歪率/0.1%
■クロストーク/−70dB(1kHz)
■入力インピーダンス/3kΩ(マイク)、10kΩ(ライン、2R IN、AUXリターン)
■出力インピーダンス/75Ω(ステレオ・アウト、150Ω(モニター・アウト、グループ・アウト)、600Ω(REC OUT)
■外形寸法/364.2(W)×86.1(H)×436.6(D)mm
■重量/3.2kg