ミリタリー・グレードの真空管を搭載した低価格コンデンサー・マイク

ALPHA-MODECM3

今回レビューするのはALPHA-MODEの真空管コンデンサー・マイクCM3です。外見は昔懐かしいビンテージ機を意識したようなルックスで、恐らくAKG C28やNEUMANN KM56などがモデルになっているだろうと察することができます。先に印象を書いてしまえば、3万円を切る価格からははるかに想像を超えた装備と存在感になっているCM3。メーカーの企業努力にはひたすら脱帽です。

低価格ながら充実の仕様
付属品一式が収まるケースも付属


手元に届いたデモ機を開封して、まず目を見張るのが高級機種を思わせるアルミ製のキャリング・ケース。マイクロフォンが入れられている木箱も丁寧な作りで、さらにマイクロフォン本体にも十分な高級感があります。付属品はそのほかに電源サプライ・ユニット、電源〜本体間の専用ケーブル、サスペンション・ホルダーとなっています。正直にお伝えすると、付属ケーブルには高級感はありませんし、電源ユニットの外見、また本体の細部を見ると、わずかですが作りが粗く見える部分もあります。しかし価格を考えれば十分満足できるものです。真空管を搭載しているのは冒頭でも述べた通り。採用している真空管は中国軍でも使用された実績のあるサブミニチュア管とのことです。上向きに付いたダイアフラムは直径20mm、厚さ6μmで、指向性は単一のみとなっています。

原音に忠実な明るいサウンド
ブラシや息のニュアンスもよく出る


さて肝心のサウンドですが、はっきり言って個人的には満足です。基本的なマイクロフォンの良しあしというのは、個性的なカラーを持っているか、または、どれだけ原音忠実に収音できるかだと思います。今回のCM3は、どちらかと言えば後者の原音忠実のタイプだと感じました。メーカー資料では、中域から低域はフラットなのですが、原音忠実といえども、印象はかなり明るいサウンド。逆に、補正する意味合いで低域を若干持ち上げたくなるように感じました。またSN比や感度に関しても十分に業務用レベルと言い切れます。個々のソースで試した印象も記していきましょう。まずアコースティック・ギターでは、とにかく明るいサウンドが印象的。高域というよりは4kHz辺りの中高域から上が持ち上っているように感じられました。またコンデンサー・マイクらしく情報量は多く、ピアニッシモからフォルテシモまで忠実に表現しているようです。ただし、やはり中低域が若干不足しているように感じたので、200Hz辺りを少し持ち上げてあげると、よりナチュラルなサウンドになると思います。また、本機は指向性が割と狭いので、カブリが少なく録れることを考えるとスネア・ドラムにも向いているかと思い、試してみました。結果はやはり好印象で、とても明るく繊細なサウンド。特にジャズなどでブラシのニュアンスを出すには非常に向いていると思います。一方、ロック的なサウンドでは、求めるサウンドにもよりますがEQで音の重心を下げた方がいいかもしれません。最後にボーカルですが、これも明るく元気のある印象ですので、女性ボーカルの方が向いているように思いました。特に高域では声の倍音が非常に印象的で、ハスキーな女性ボーカルや、ファルセットでブレスが多くなるような声質にはかなり力を発揮するのではないかと思います。息と声の中間のような、さらさらした倍音が気持ち良く感じられるのです。

高級マイクと比較しても
見劣りしない音質


なぜこの価格でこんなにすごいのか、不思議でなりません。そこで、若干悔しい気持ちもありながら、高級機との比較をしてみることにしました。比較対象はスタジオでよく用いられているNEUMANN U87。自分の声をDIGIDESIGN Pro Toolsに取り込み、CM3をU87の音に似せてEQ処理してブラインド・テストしました。はっきり言って、CM3の方がほんのわずかSN比に劣る以外、その違いはほとんど分かりません。いや、正確に言えば違いは分かるのですが、“分かったからどうしたの?”という程度のことで、使用上は同等なサウンドと言えると思います。普通はEQで似せてもなかなかここまでにはならないのに、これにはさすがに驚きました。セッティングをしているときに気が付いたのですが、CM3の唯一(?)の弱点は、マイクのボディが共鳴して“鳴り”が生じることです(テストした個体の問題かもしれません)。サスペンションを使用すれば録り音のサウンドには問題が感じられませんが、ミックス段階で音色を詰めていくと気になることもあるでしょうから、何らかの工夫で解消しておいた方が、安心して使用できるような気がしました。アマチュアの方がCM3を購入して後悔することはまずないと思いますが、自分のスタジオでそれが必要かと問われれば、“要検討”になると思います。ただしそれは、スタジオに現在あるNEUMANNやAKGなどに追加する必要があるのか、という意味においてです。はっきり言ってこの価格で、これら高級機に対抗できるというのはすごいの一言です。今回ペアでテストできなかったのは残念ですが、いろいろな楽器で使えるマイクだと思います。あっぱれ、価格破壊!
ALPHA-MODE
CM3
オープン・プライス(市場予想価格/26,105円前後)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz
■指向性/単一
■出力インピーダンス/200Ω
■SN比/74dB以上
■自己ノイズ換算レベル/13.4dB(IEC 268-4準拠)
■最大入力許容音圧/128dB(THD=0.5%@1kHz)
■外形寸法/29(φ)×191(H)mm(本体)、310(W)×35(H)×143mm(D)mm(ケース)
■重量/280g(本体)、5kg(一式)