簡易的にデッドな環境を構築するポータブルな吸音用アクセサリー

SE ELECTRONICSReflexion Filter

レコーディング・スタジオのボーカル・ブースに足を踏み入れ重たい扉を閉めると、そこは密閉された防音空間。普段とは感覚が変わり、一瞬無重力空間を歩いているような錯覚に陥ることもあります。自宅でのレコーディングも最近では苦労なくできるようなりましたが、自宅でそのようなデッドな音を録ることは今まで考えもしませんでした。このデッドな録り音によってもたらされることは、とてつもなく大きいのではないかと、吸音用アクセサリーのReflexion Filterを使って初めて考えさせられました。

マイク・ホルダーに取り付けて使う
デザイン性に優れたポータブル仕様


半円形の芸術的なデザインを持つReflexion Filterは、背面がアルミ素材、内側がスタジオのブースの壁にも使われているような黒い吸音材でできています。使い方は、マイク・スタンドに専用の固定用金具を取り付け、Reflexion Filter本体とマイクを設置。するとマイクの背後を本体が覆うような形になります。高さ調節はマイク・スタンド側で行い、角度調節やマイクと本体の距離を調節するのは固定用金具で行います。実際に取り付けてみると、今まで見たこともないマイク・スタンドに早変わり。持ち運びができるほか、固定用金具も頑丈に作られていて安定感があると思いました。機材オタクから見ると、Reflexion Filter自体のデザインがいいので、取り付けた状態で部屋に置いてあるとそれだけで美しいです。それでは実際に録音する前に、Reflexion Filterがある状態と無い場合でどう変わるのかを確かめてみます。まず無い状態でマイクに向かって声を出すと、当然ですが声はマイクの向こう側へとまっすぐ通り抜けていきます。一方Reflexion Filterを設置した場合、声は本体の中心に向かってはね返っていきました。その音も単に反射しているわけではなく、スタジオのブース内で発声したときの反響に似た感じで適度に吸収されるので、マイクが置かれた中心部に音が凝縮される感じ。また、マイクをReflexion Filterに近づけるほど、音はデッドになっていきました。

歌や演奏のニュアンスを逃さない
繊細なレコーディングが可能に


それでは実際にボーカルを録ってみましょう。ここで1つ書いておかないといけないのは、今回録ったのは僕自身の声なので、感想はあくまでも僕の声についてです。まず、Reflexion Filterが無い状態だと、空気感をたくさん含みオケと溶け込んで、若干存在感の無い薄い感じ。いつものぼんやりとした僕の声で、普段と同じ部屋鳴りがします。ところが、Reflexion Filterを使って録ってみると、ボーカルがはっきりと前に出てくるのが分かります。聴き慣れたフレーズですが、差は歴然。今までいまいち自信がなかったぼんやりとした声でも、しっかりとした音で録れたのです。張り上げて歌うときにはよりパンチが増し、逆に息遣いが聴こえてほしくてオンマイクで録ったときは、小さな音も逃さずとても繊細に録れました。次に、同じようにアコースティック・ギターを録ってみました。ギターやストリングスなどの楽器に関しては、曲の方向性によって録り方も変わるので一概にデッドがいいとは言えませんが、やはりギターの余韻までしっかりとした存在感を持った密度のある音で録れました。また、音の大小に関係なく、歌や演奏のニュアンスを失わずしっかりと録音できることにより、マイクのキャラクターなどの違いもはっきりと分かってくると思います。そしてどんな音にしたいのかを考え、機材を選び、ミックス時にどんなエフェクトをかけるかを考えれば、すぐに目的の音までたどり着くことができるでしょう。DAW時代だからこそ、ミックスで空間を作るときに本当の意味で細かな調整ができるように、デッドな音で録ることの重要性が分かりました。実際、Reflexion Filterを使用して録った音のエフェクトのかかり方は格段に良かったのです。そして何より音が太く録れるということは、誰にとっても本当に大きなメリットになるでしょう。自宅でプロ並みの音を手に入れるための効果的な手段であるとともに、プロのエンジニアの方にもぜひ使ってほしいアクセサリーの1つだと思いました。20070201-07-002

▲マイク設置時の様子

SE ELECTRONICS
Reflexion Filter
54,600円

SPECIFICATIONS

■外形寸法/360(W)×300(H)×200(D)mm
■重量/3.6kg