コンソールさながらの環境を構築できるモニター・コントローラー

AUDIENTCentro

こんな製品が出てきては、レコーディング用コンソールは窮地に追いやられてしまうのではないだろうか。今回紹介するAUDIENTのモニター・コントローラーCentroはまさに今の音楽制作環境に"こういうのを待っていたのよ"と、人々をうならせるツールになりそうなニオイをプンプン漂わせる製品なのであります。

MIX入力/REC入力の活用で
幅広いモニター環境を構築可能


レコーディングでコンソールを使用しないスタイルを採用した場合、困ることの1つにCUE送りやトークバックといったコミュニケーション機能の構築が挙げられると思います。サイズも大きく、高価な純正のコントローラーの導入が不可能な場合、これまでは小型ミキサーでお茶を濁したり、DAWマスターなどと呼ばれるコンソールのセンター・セクションの簡易版のような装置をカスタム・メイドしたりして対応しているのが現状でした。そんな中に現れたのがこのCentro。トークバックはもちろん、CDプレーヤーなど、周辺機器のワイアリングをシンプルにまとめてストレスのないモニター環境を提供してくれる実に多機能、至れり尽くせり、待ってました的な存在なのです。その仕様を紹介していくと、2Uラック・サイズの本体とコントローラーで構成されます。入出力部を備えた本体のリア・パネルにはアナログ入力がステレオ6系統、デジタル入力が同じく6系統。出力はアナログがステレオ4系統、デジタル・ダイレクト出力が1系統、スピーカー出力が3系統となっています。さらに、外部トークバック・マイク用入力とそのスイッチ入力を装備。フロント・パネルには接続できる全ソースに対してのアジャスト・トリムが並んでいるので、必要に応じて±12dBで調整が可能。これだけの入出力部が備わっていればほとんどの制作システムに対応できるはず。え?入力数の多いセレクターならほかにもある? Centroのすごいところはそれだけじゃありません。何とこれらのソースを付属のコントローラーを使っていろんなルーティングを可能にしたり、さらに便利なモニター環境をお届けしてしまうというのですから驚きでしょ?例えば、MIX入力、ST入力1といったメインのステレオ入力がセレクター経由でメイン・モニターに送られるのに対し、REC入力に入った信号はセレクターを経由する以外に直接CUE出力にアサインできます。さらに、ソース・セレクトに立ち上がっているアナログ・ソースはすべてグルーピングが可能なのでMIX入力とST入力1に立ち上がっている信号をミックスしてスピーカーから聴ける便利機能が用意されているのです。グループは任意のセレクト・スイッチをダブル・クリックで解除とリコールができるおまけ付き。

大型コンソールのセンター・セクション
そのままの充実した仕様


こういった機能はどんなときに使うかと言えばコントロール・ルームとブースにいるミュージシャンで違う音を聴きたいというとき。弦の録音をするときなどにミュージシャンは自分たちの演奏している音をヘッドフォンに返さないでほしいといったリクエストが出ることがあります。そんなときにMIX入力に送っているストリングスを抜いた2ミックスをパラってREC入力に送り、CUEセクションのREC/SRCのセレクト・スイッチでRECを選んで入力をスルーさせた音をミュージシャンに送ります。コントロール・ルームではストリングスだけを別の出力からCentroのST入力の1つに送ってMIX入力とグルーピングした音をモニターすれば問題解決という訳です。SSLコンソールがあればQUADバスを使って簡単にできることですが、意外とこうした機能は忘れられがちなのでしょう。多少の工夫を必要とする場合が多々ありますが、Centroならそうしたこともクリアした強い味方になってくれます。音質は、湾岸音響で現在使用しているモニター・システムと比較すると、わずかに高域が派手に感じます。しかし、問題になるほどではないでしょう。トークバックに関しても嫌なノイズはなくクリア。外部マイクと組み合わせて使えば広い場所でも問題なさそうです。外部マイク用のファンタム電源が本体内部の基盤に搭載されているため、コンデンサーを使う場合は設定が少々面倒ですが、そうそう変更のあるものでもないのでさほど気にする必要もないでしょう。ほかにも3系統あるスピーカー出力の1つをサブウーファー用にして2.1chモニターで使用できたり、簡易的に左右の位相チェックができる位相反転スイッチなど、まさに大型コンソールからセンター・セクションを抜き出したかのよう。そのモデル名がすべてを物語っていたのです。探っていけばまだまだ使い方を発見できそうですが、紙幅が尽きましたので、この辺で。

▲本体のリア・パネル。上段左からREMOTE LINK(D-Sub9ピン)、トークバック・スイッチ、デジタル・ダイレクト出力(XLR)、デジタル入力×5系統(S/P DIFオプティカル、S/P DIFコアキシャル×2、AES/EBU×3)、アナログ入力×ステレオ6系統(XLR×4系統、RCAピン×2系統)、下段左から電源ケーブルのインレット、電圧切り替えスイッチ、スピーカー出力×ステレオ3系統(XLR)、REC出力(XLR)、F/B MIX THRU×ステレオ1系統(XLR)、CUE出力×ステレオ2系統(XLR)、トークバック・マイク出力



▲コントローラーのリア・パネル。左からヘッドフォン出力、ALT 2 MODE切り替えスイッチ(MONO/SUB)、REMOTE LINK(D-Sub9ピン)

AUDIENT
Centro
313,950円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/10Hz〜40kHz(+0/−0.3dB)
■D/Aコンバーター/最高24ビット、192kHz
■外形寸法/本体:483(W)×89(H)×220(D)mm、コントローラー:240(W)×155(H)×45(D)mm
■重量/本体:5kg、コントローラー:0.9kg