伝統のサンプラー/シーケンサー機能が凝縮されたモバイル型MPC

AKAI PROFESSIONALMPC500

サンプラーとシーケンサーの一体型マシン、MPCシリーズに、最新機種のMPC500が登場です。筆者とMPCの関係は、当時の最新機種だったMPC3000に始まり、次にディスプレイで波形を見られるようになったMPC2000XL、そしてハード型サンプラーでは現在の最高性能を誇るMPC4000と、トラック・メイクのセンター・マシンとしてより使いやすく高度なモデルを求め、約10年間で3種類のMPCを操作してきました。最近では、MPCに求められる仕事も打ち込みのセンター・マシンという従来の機能だけでなく、楽器として生でプレイするといった方向へ変化しています。そんな要望に応えるように登場したのが、このMPC500です。

単三電池6本で動作し
屋外への持ち出しもラクラク


まずは見た目ですが......本体を見て驚くのは、その大きさ。今までのMPCシリーズで一番小さく圧倒的に薄い。もちろん最軽量で、何と単三電池6本で動きます。これなら屋外へ持ち出すことも簡単。DATAホイールや、ツマミ、パッドなどのパーツはMPC1000と同じものを流用し、パッドの数はコンパクト化を図って12個。初めて見たときは、"おやっ?"と思いましたが、たたいた感じに違和感は全くありません。ディスプレイは2行で、バック・ライトは同社初のブルー。このバック・ライトはスイッチ1つで消せるので、電池の消耗が気になる場合はオフにできます。この機能も長時間屋外で使用するときへの気配りでしょう。接続端子は、MIC/LINEを切り替えられるステレオ入力(フォーン×2)とステレオ出力(フォーン×2)が各1系統に加え、MIDI入出力を1系統装備。USB端子もありますが、MPC4000のように専用ソフトAk.Sys.を使ってコンピューターから管理することはできません。USB経由では、外部記録メディアのコンパクト・フラッシュに記録したWAV/SMF形式のデータをやりとりすることができます。

MPC特有の操作感はそのままに
"演奏"に便利な機能を凝縮


では、実際にMPC500を使ってサンプリングに挑戦してみます。まず"MODE"ボタンを押してパッドの4番="RECORD"を選択。これでサンプリングの準備は完了。この時点で右上部の"DO IT"ボタン(12 LEVELSと兼用)のLEDが点滅するので、そこを押したらサンプリング・スタート。サンプリングが終了したら、アサインしたいパッドを押して、再び右上部の"DO IT"ボタンを押せばアサイン完了。パッドをたたくとサンプリングした音がすぐに鳴ります。この操作の手軽さこそ、MPC2000から続くAKAI PROFESSIONALの伝統芸。一度覚えれば、どの機種でも説明書無しで余裕で動かせます。サンプリングした素材の編集に関しては、カット、ループ、リバース、ストレッチ、ノーマライズなど、標準的なエディット機能を一通り装備。さらにMPC1000と同様の2系統のマルチエフェクト+マスター・エフェクト(4バンドEQ/コンプ)も搭載し、マスター・アウトのリサンプリングもできます。ただし、MPC500はディスプレイに波形が出ないので、MPC3000時代に逆戻りし音と耳でスタート/エンド・ポイントを設定しなくてはなりません。これには少々骨が折れました。フレーズの自動分割機能も無いのですが、この辺りのトラック・メイカー向きの機能は、楽器として演奏するには必要無いということで省略された感じ。今の時代、波形編集はコンピューターの編集ソフトなどで行って、コンパクト・フラッシュを経由してMPCへ使いたいデータを転送すれば良いわけですな。また、サンプルを並べたプログラムは、同時に24まで扱えます。最後にシーケンス機能ですが、ディスプレイに表示される文字が2行までなので、ステップ入力で打ち込むときは1つのタイミングで1つの音の情報しか確認できません。グリッド・エディットも無いので、リアルタイムで打ち込んで、補助的にステップ入力にするのが使いやすいと思われます。MPC500は、トラック・メイクの主力としてはやや力不足ですが、MPC特有の操作感覚や使いやすさを残して、手軽に演奏するには十分な性能を持っているマシンです。既にセンター・マシンとしてMPCを持っている方や、コンピューターもあるけれどMPCに興味のある方などに、セカンド・マシンとしてぜひお薦めしたい。レゲエのSEをサンプリングして"ピュンピュン・マシン"として一度クラブで使ってみたら、それこそ大活躍でした。電池駆動であることも含め、"家から持ち出して使いたいMPC"です。

▲リア・パネル。左からヘッドフォン端子、ステレオ出力R/L(フォーン)。その隣がステレオ入力R/L(フォーン)で、中央にはLINE/MICの切り替えスイッチを用意。さらにUSB端子、バック・ライトのオン/オフ・スイッチ、電源スイッチとDC INを挟んでMIDI OUT/IN

AKAI PROFESSIONAL
MPC500
オープン・プライス(市場予想価格/74,800円前後)

SPECIFICATIONS

■内部メモリー/標準16MB(最大128MBまで拡張可能)
■外部記録メディア/コンパクト・フラッシュ(128MBが付属)
■録音可能時間/136秒(16MB/MONO)、24分28秒(128MB/MONO)
■最大同時発音数/32
■量子化ビット数/16ビット
■サンプリング周波数/44.1kHz
■外形寸法/266(W)×44(H)×175(D)mm
■重量/1.34kg(本体)