精度の高いAD/DAを搭載した24ビット/96kHz対応マイクプリ

PRESONUSDigimax FS

マイクプリのDigimaxシリーズが高い評価を得ているPRESONUSから、この度AD/DA機能を搭載した24ビット/96kHz対応の8chモデル、Digimax FSが登場した。ルックスはおなじみの"PRESONUSブルー"が随所に織り込まれてさわやかにまとまり、Digimaxシリーズや同社のオーディオ・インターフェースFirepodなどと同系統のデザインになっている。豊富な入出力端子やクロック・ジェネレーターを備えた本機を、早速チェックしていこう。

S/MUX対応のADAT入出力など
豊富で柔軟な入出力端子を装備


まずは、フロント・パネルに並ぶ8つのアナログ入力端子から見ていこう。8chすべてにNEUTRIK製のXLR/TRSコンボ・ジャックを採用し、"入力段ではマイクなどをきちんとバランスで受けたいが、ときには楽器を直接入力したい"という欲張りなユーザーの要望にも応えてくれる。ch1〜2はハイインピーダンス対応で、ベースやギターをつないでそのままレコーディング可能。ch3〜8は、マイク/ライン・レベルに対応している。ゲインも60dBと非常に余裕があり、マイク/ライン・レベルの切り替え無しで使用できるので、出力が高めのマイクや楽器でも安心して受けられる。また、ファンタム電源はch1〜4、ch5〜8の2系統に分けてかけることができる。ぜいたくを言えば、ch1〜2、ch3〜4、ch5〜8と3系統に分けて、2ch分だけファンタムがかけられたらドラムとほかの楽器を合わせて録るときにもっと扱いやすくなっていたのではと思えた。中央右に配置されている入力ゲインつまみは、ブルーで塗装されたアルミ素材のステップ式で好感が持てた。このクラスだと、アルミ素材とステップ式を両方満たしている製品はそう無い。その右側には、内部サンプリング・レートを切り替えるInternal Clockスイッチ、外部同期のためのExternal Syncスイッチが並ぶ。リア・パネルには、アナログ系として各チャンネルのダイレクト・アウト×8(TRSフォーン)、デジタルで受けた信号をアナログに変換して出力できるDACアウト×8(TRSフォーン)、インサート端子×8(TRSフォーン)を装備。再生能力の高くなったここ最近のDAW環境において、このインサート端子は重要だと思う。録音時にコンプレッサーやEQをインサートして音を作り込んでおくことは、音楽的にも非常に重要なファクターだと感じるからだ。本当にこのサイズでよくこれだけ並べたと感心させられる。それだけで十分なのだが、ハイインピーダンスで受けられるch1〜2に、アンプなどに引き回せるようにスルー・アウトも装備していれば申し分なかったと思った。デジタル入出力には、S/MUX対応のADATオプティカル2系統を装備し、ワード・クロック入出力(BNC)も用意。今さらながら、8ch分がオプティカル・ケーブル1本で転送できる(44.1/48kHz使用時)というのは便利だ。88.2/96kHz時には、2系統を使用してハイサンプリング・レートの信号を転送する。

キャラクターを付加せずに
クリアで素直なサウンドを実現


実際に、ベースやシンセをXLRとTRSフォーンでそれぞれ入力して聴き比べてみた。すると、どちらも音のアタック感や輪郭がしっかりしてヌケが良く、オケの中でも扱いやすい。飾り気の無い素直で明るいサウンドで、中域から低域にかけての帯域で少し膨らんだ印象があったが、決して音が細いわけではない。むしろ無理に音質のキャラクターを付加していないのが好印象だ。豊富な端子類が用意され、メロディやフレーズを思い付いたときに楽器をすぐにつないでプレイができるというのも、自宅やプリプロ・ルームなどでコンポーズしている方には使いやすくクリエイティブだと思えた。さらに注目してほしいのが、ジッターを自動で排除するジッター・リダクション・テクノロジー"JetPLL"の採用だ。これが内部クロックをマスターに使用したAD/DA時のクリアなサウンドを提供している。また、本機とDAWシステムやデジタル・コンソールを組み合わせて使う環境も多いと思われるので、今回は本機と同等もしくはそれ以上のクラスのさまざまなクロック・ジェネレーターと同期させて試してみた。すると、こちらもよりクリアでしんのあるサウンドに変化する。楽器や重ねる音色によって、マスター・クロックを切り替えていくというような音質選択の一つとしても、大いに活用してほしいと感じた。本機は、特別なキャラクターは放っていないのだが、それが使いやすさに直結している。現状のシステムを生かしつつ、より使い勝手、機能を特化させるのにもとても便利だ。この豊富な入力端子群で、ユーザーのアイディアによっていくらでも使い方が広がる音の"便利収納"的製品と言えるだろう。

▲リア・パネル。左からワード・クロック入出力(BNC)、75 OHM TERMINATEスイッチ、ADATデジタル入出力×2(オプティカル)、DACアウト×8(TRSフォーン)、ダイレクト・アウト×8(TRSフォーン)、インサート×8(TRSフォーン)

PRESONUS
Digimax FS
オープン・プライス(市場予想価格/90,000円前後)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/Microphone Preamp:20Hz〜40kHz(+0/−0.5dB)、20Hz〜100kHz(+0/−3.0dB)/Line Input:20Hz〜60kHz(0/0.5dB)、20Hz〜150kHz(+0/−3.0dB)
■量子化ビット数/24ビット
■サンプリング周波数/44.1/48/88.2/96kHz
■全高調波歪率/Microphone Preamp:0.003%以下、Line Input:0.0015%以下
■最大入力レベル/Microphone Preamp:11dBu、Line Input:22dBu
■外形寸法/483(W)×44(H)×140(D)mm
■重量/2.2kg