MILABと聞いて“おお、あのスウェーデンの！”とすぐに出てくる人は、日本ではまだ少ないようです。私の所属する湾岸音響でもMILAB VIP-50という素晴らしいマイクを所有しておりますが、今ひとつ出動回数が少ないのが残念なところ。しかしながらそのクオリティは高く、マイク一筋60年の実に歴史あるメーカーなのであります。そんな北欧屈指、筋金入りのマイクロフォン・メーカーから新製品のコンデンサー・マイク、DC-196がこの夏日本上陸と相成りました。同社のヒット作でもあるDC-96Bをベースに改良を重ねたニュー・モデルということで、カラーも黒から白へと変更されております。早速チェックしてみましょう。
−12dBのPADで
大音量の録音にも対応
ボディ部分はベース・モデルのDC-96Bよりもわずかに直径が太くなっているくらいで何ら変わりないように見えますが、幾つかスイッチ類が組み込まれており、正面から見て右サイドに指向性切り替えスイッチ、その下にPADが装備されています。指向性は単一／双／無指向と基本はばっちり押さえてあります。PADは−12dBのアッテネートといった内容。通常使用での最大音圧が132dBなのに加えて、PAD併用時には144dBまで耐えられる設計になっており、このマイクがかなり広い守備範囲を持っているであろうことが期待できます。そのほか、かぶせて使うウインド・スクリーンとスタンド用ホルダーが１つずつ付属。ちなみにこのホルダー、結構きつめで横からねじ込むようにパチンとはめ込む感じに装着するのですが、しっかりはまるので簡単に動いてしまうこともなさそう。こういう、ちょっとしたことに好感が持てます。カプセルの取り付け方にもショック防止のラバーを使うなどして設計段階から振動対策にも余念がない模様。付属のホルダーだけでも十分使えそうですが、これにオプションで用意されているショック・マウント（オープン・プライス／市場予想価格10,080円前後）を使えば鬼に金棒、併せてお買い求めになっても損はなさそうですよ。
大音量でもつぶれずに
アンプのニュアンスを収録可能
ではホルダーにマイクをセットして、まずはアコースティック・ギターを収録してみましょう。サウンド・ホールをネック側から狙い、比較用にNEUMANN U87AIを並べてみます。録れた音を聴いてU87AIを基準に比べてみると、音量レベルが聴感で５dBくらい小さいようですが、U87AIはほかのマイクに比べても録り音のレベルが大きい方なので、十分なレベルではないでしょうか。音色的には低域から高域まで奇麗に収録できており、非常に低い帯域が少し持ち上がっていて、それが心地良さになっている感じです。また、ストロークの録音でボディが響き過ぎて心地よくザクザクと鳴ってくれないときに使うと、その辺りがすっきり聴こえるマイクだと感じます。特にどこかの帯域が持ち上がっているわけでもないので、ここはMILABの技術のたまものでしょう。続いてウッド・ベース。正面から駒のやや上辺りを狙って収録すると、本体のコンパクトさの割にしっかりと低音をとらえています。しかし、中域で粘りの欲しいあたりが少しさみしい感じで、クリアなのに少し暗めといった印象。この場合はU87AIの方が元気のある音色という感じです。ピアノでは高域を弾いているときに5kHz辺りでちょっとだけピークを感じます。しかし、狙い方を工夫すると程良くブライトに録れるので、厚いオケの中でヌケが欲しい場合に使えそうです。最後にPADを入れてエレキギターを収録してみましょう。クリア・トーンでボリュームは大きめ、マイキングはFENDER Twin Reverbのセンター・キャップに向けてネットから５cm程の位置にセッティングしました。アコースティックの得意なマイクかと思っていましたが意外にもマッチしている模様。結構な大音量でもつぶれたりすることなく、Twin Reverbの張りやスピード感といったアンプから鳴っているニュアンスにかなり近い状態で録音することができるようです。全体的にどんな楽器にもそつなく使えるマイクだと言ってもいいのではないでしょうか。バランスのいいマイクなのでステレオでそろえて、ドラムのオーバーヘッドやセット全体狙いで使ってみるのもいいでしょうね。個人的にはアンプに立てた音がかなり気に入りました。DC-196、何本か手に入れたいマイクであります。
◀ボディ横のスイッチ類。指向性切り替えスイッチ（左から無／単一／双指向）および−12dBのPADとなっている
SPECIFICATIONS
■指向性／３段切り替え（無／単一／双指向）
■周波数特性／20Hz〜20kHz
■最大SPL／132/144dB（PAD併用時）
■出力インピーダンス／＜200kΩ
■外形寸法／30（φ）×145（H）mm
■重量／240g
