ステレオ・ワイズ機能で空間的な演出も可能な2chコンプレッサー

JOEMEEKMC2

今回紹介するのはJOEMEEKのステレオ・コンプレッサーMC2です。本製品は伝統的なJOEMEEK回路に新たなパーツなどを加えて新設計が施された、新世代JOEMEEK製品と言えるもの。従来設計の製品が持っていた音質的な個性を残しながら操作性や機能面での良い部分を強調し、新機能も搭載しています。さらに価格も抑えめで、コスト・パフォーマンスも高くなっているなどいいことずくめ。これからの市場をにぎわせること間違いなしのコンプレッサーとなることでしょう。

フォト・オプティカルで動作する
伝統的なJOEMEEK回路を使用


伝統的なJOEMEEK回路というのはフォト・オプティカル(光素子)で動作する回路のことで、音の立ち上がりがよく、強烈にかかるコンプレッションという個性を持った同社製品の根幹を成しています。MC2はその回路を中心に、30年にわたってミキサーやアウトボードなどを設計してきた実績を持つアラン・ブラッドフォードが完全再設計した製品。最新のパーツと技術で、より高性能かつ信頼性を向上させつつ、新たな機能や従来通りの個性を生かしたサウンドを実現している点は一流の仕事と言えるでしょう。まず外観から説明していきます。デザイン的にはグリーンのフロント・パネルなど、マイクプリやコンプといったラインナップのJOEMEEK VCシリーズを引き継いでいます。ハーフラック・サイズなので持ち運びにも最適で、設置にも場所を取らなくて良く、電源が独立していることも含めてとにかく軽量という印象です。フロント・パネルには8個のつまみと2種類のインジケーターおよびスイッチが3つ付いており、左から6個目までがコンプレッションに関するつまみです。順に説明すると、まずINPUT GAINは入力信号を増幅させてコンプレッションの効き方を調節する部分で、入力信号を−6dB〜15dBの範囲で調節可能。つまみの右上には入力ゲインがクリップ・ポイントの6dB下まで達したときに点灯するピークLEDが設置されており、それを見ながら最適なレベル調整が行えます。続くCOMPRESSはJOEMEEK製品ならではの言い方で、スレッショルドのこと。その隣のSLOPEはレシオを指します。この2つである程度コンプを設定した後、その右に続くATTACK、RELEASEによってコンプの立ち上がりや減衰のスピードを調整すると入力信号へグルーブを付加することができます。MAKE UP GAINは圧縮により小さくなったレベルを全体的に持ち上げるつまみ。そしてCOMPのON/OFFスイッチがあり、原音とコンプ後のサウンドも比較可能。ただ完全なバイパス機能は残念ながら付いておらず、INPUT GAINのみはこのスイッチをOFFにしてもかかったままなので注意が必要です。

中低域の減衰を極力排除した
ステレオ・ワイズ機能


続いて、MC2に装備されているそのほかの機能について説明しましょう。まずゲイン・リダクション・ホールド機能。これは入力信号が設定した音量以下になったときにMAKE UP GAINがかからないようにする機能で、バックグラウンド・ノイズなどが不用意に増幅されてしまうのを抑えます。不要なノイズが持ち上げられることを防ぐことができるので、ギター・アンプからの入力信号などノイズの多く含まれている音源に有効。この機能はGR HOLDつまみで調整します。また、このつまみの右下にGR HOLD ON/OFFスイッチおよび確認用のLEDが装備されています。その隣にあるのはステレオ・ワイズ機能を操作するSTEREO WIDTHつまみとON/OFFスイッチおよび確認用のLED。これは入力信号のステレオ・イメージをコントロールする機能で、つまみを左から右へ回すと入力信号がモノラル→通常のステレオ→入力信号に広がりと奥行きを与えてくれるエクストラワイド・ステレオへと変化します。言ってみればマイク録音のMS方式のステレオ・プロセッサーです。それでは、実際に音を通してみましょう。まず感じるのはJOEMEEKの個性がそのままということ。ここはやはり“こうでなくては”といった感じで、JOEMEEKならではの粘りと良い意味での荒さは健在。このキャラクターはパーカッションやエレクトリック・ピアノ、ベースなどに活用するとピッタリでしょう。パキッとして粘り強くガッツのあるコンプ感が、それらの音源を一歩前に押し出してくれます。そしてステレオ・ワイズ機能によって、それらの音源をより空間的に生まれ変わらせることが可能。通常この手の機能は中低域が減ってしまうのですが、MC2ではJOEMEEK独自のテクニックにより中低域の減衰を最小に抑えています。音に明りょう感が出てキラびやかになるので、2ミックスをがらりと変化させたいときにも有効でしょう。筆者はライブ録音のアンビエンスに使用してみましたが、素晴らしい音場が作れました。そのほかには、特定の周波数帯域をコンプレッションするときに便利なサイドチェイン入力、正確なレベル・コントロールや設定のためのゲイン・リダクションおよびレベルのインジケーターや、プロフェッショナル機器で必要不可欠なバランス入出力を装備しています。JOEMEEKの伝統を受け継いでいる上に魅力的な価格帯のMC2。きっと、あなたを納得させるに違いないでしょう。

▲リア・パネル。左からアナログ出力×2(TRSフォーン)、サイドチェイン入力端子、アナログ入力×2(TRSフォーン)

JOEMEEK
MC2
28,140円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/10Hz〜70kHz(−3dB)
■ゲイン可変幅/−6dB〜15dB
■入力インピーダンス/LINE:20Ω
■出力インピーダンス/75Ω
■定格出力レベル/−10dB/+4dB
■全高調波歪率/0.001%
■スレッショルド/−6dB〜20dB
■レシオ/1:1〜10:1
■アタック/1〜100ms
■リリース/0.1〜3s
■GR HOLDスレッショルド/−50dB〜−10dB
■外形寸法/220(W)×44(H)×180(D)mm
■重量/1kg