色付けの無い自然なサウンドを誇る2ウェイ・パッシブ・スピーカー

REQST PRODSW-T1

REQST PROはレゾナンス・チップ、オーディオ機材のアクセサリーをリリースしているREQSTのプロ向けのブランドです。今回チェックするDSW-T1は、先に発売された上位機種DW-S1より一回り小さいサイズの2ウェイ・パッシブ・スピーカー。ユニットはDW-S1同様にカー・オーディオで有名なALPINE製のものを採用しています。ちなみに、オーディオの世界でも、同社のユニットを採用しているスピーカーもあり、高い評判を得ているそうです。ただ、DSW-T1は単なるリスニング用スピーカーではなく、開発時からプロのスタジオなどでの試聴を繰り返し調整、音決めしたモニター・スピーカーとのこと。さて、その実力はいかに?

こだわり抜かれたパーツによる
高級感あふれる仕上がり


DSW-T1のサイズは奥行き、幅共にYAMAHA NS-10Mとほぼ同じで、高さは4cmほど低くなっています。重量はNS-10Mに比べて少し軽い印象。ウーファーはまるで皮製のような、独特の質感です。バッフル形状は平面でなくツィーターを中心に緩やかなホーンが形成されていると同時に、ウーファー・ユニットが若干傾斜しています。バッフル面を含む本体のカラーリングはつや消しのブラックと落ち着いていて、ツィーター・カバーとウーファーのセンター・キャップは濃いシャンパン・ゴールド。高級感漂う仕上がりになっています。仕様はALPINE製の170mmDDリニア・ウーファーを採用。通常のウーファーに比べて倍以上の振幅に対応していて、大音量時の低域再生に対応できるようになっているようです。ツィーターのスペックは可聴域をはるかに超える60kHzまでフォロー可能。ドーナツ型リング・ダイアフラム、2基のボイス・コイルなどユニットの仕様は上位機種のDW-S1と同等ですが、異なるのは密閉型エンクロージャーを採用している点です。また、コイルを使わない独自のネットワーク(レゾナンス・コントロール・ネットワーク)やウール85%の吸音材、内部結線は金、銀2層メッキ圧着接続(ハンダを使用していない)などDW-S1の仕様を受け継いでいます。

伸びやかな高域と余裕のある低域
優れた定位感とバランスを実現


では、実際に音を出してみましょう。今回は自宅スタジオで、アンプはYAMAHA P-2200を使用し、NS-10Mと聴き比べます。第一印象はDSW-T1の方が若干出力が小さいというもの。しかし、NS-10Mは中域に音が集まっているためそう感じたのかもしれません。周波数レンジの差はスペック通り歴然と差があります。ウーファーの大きさ自体はNS-10Mの方が明らかに大きいのですが、DSW-T1のウーファーは見た目以上に、余裕のある低域が出ています。高域は強調された派手さが無く、スムーズで伸びのある印象。全体的にまとまっていて、自然なサウンド・キャラクターです。さて、ここで正面に向けたセッティングから、若干内振りに変更。モニター・エリアは狭くなりますが、より定位感が増し、若干ですが高域が強調された印象です。ユニット同士の距離が近くなり、部屋の壁や天井、床などの反射の影響が少なくなったのかもしれません。個人的に好みの音です。このことから分かるように、DSW-T1を使用する際は、通常のニアフィールド・モニターよりも近距離でのモニタリングをお勧めします。当然、部屋の反響による影響を比較的受けなくなりますしね。そういう意味でも、DSW-T1はあまり広くない部屋での使用にも向いていると言えるでしょう。恐らく、開発コンセプトも、その辺りの環境を意識していると思われます。続いては、ツィーターを外側にして横置きにしてみます。ウーファーがバッフル面に対して角度が付いていることが影響しているのか、正面に置くと少し低域が暴れるようです。今度はウーファー面が一直線上になるように少し内振りにセッティングすると、まとまり感が出てきました。音量的には、私の自宅スタジオでの最大音量(自主規制内)でも、バランスが安定しています。逆に音量を下げてもバランスの変化が少なく、好印象です。一般的にモニター・スピーカーに要求されるのは、音に対する特別な味付けが少なく、定位が明確、音量変化によるバランス/サウンド・キャラクターの変化が少なく、長時間の作業でも疲れない……などだと思います。DSW-T1はこれらの条件の多くを備えていると感じました。また、経年変化による音質の劣化が少ないこともモニター・スピーカーの条件の1つですが、DSW-T1のユニットはカー・オーディオの世界で採用されているALPINE製なので、スタジオなどよりも過酷な条件下でも強い耐久性を発揮することが予想できます。ただ、システム構築にはアンプの選択を含めて、コストのアップを覚悟しなければなりません。しかし、数ランク上のモニター環境を構築可能なのは間違いないでしょう。
REQST PRO
DSW-T1
231,000円(ペア)

SPECIFICATIONS

■スピーカー構成/170mm DDリニア・ウーファー、30mm Dual Emissionツイーター
■周波数特性/45Hz〜60kHz
■インピーダンス/6Ω
■出力音圧レベル/86dB
■外形寸法/230(W)×355(H)×200(D)mm
■重量/4.5kg