最新の圧縮技術を採用した高音質ハイエンド・ワイアレス・システム

SHUREUHF-R Wireless Systems

先ごろSHUREからワイアレス・システムの最上位モデルUHF-R Wireless Systemsがリリースされました。日ごろ同社のワイアレス・マイクを使用していることもあり、いっそう期待が高まるところです。このシリーズにはハンドヘルド型や楽器などに使用するボディパック型のトランスミッターがあり、レシーバーにはシングル/デュアル・チャンネルの2タイプが用意されています。その中から今回レビューするのはSM58タイプのハンドヘルド型トランスミッターUR2/SM58-JBXと、デュアル・チャンネル・レシーバーUR4D-ABJでの組み合わせです。早速チェックしてみましょう。

情報量の多い量感のある音質と
さらに向上したハンドリング性


最初にワイアレス・マイクに使用する電波について概要を説明しましょう。本機を含む業務用ワイヤレス・マイクでは、使用できる周波数帯域がA型、A2型、B型の3つに分類されます。A/A2型は放送局も使用している帯域のため使用には無線免許が必要なのですが、B型はA/A2型よりも高い周波数に設定された専用帯域なので、放送局などとの干渉が無く、無線免許も必要ありません。そこで今回は無線免許の要らない身近なB型帯域を使ってレビューしていきます。本製品から新たに、独自の圧縮技術"Audio Reference Companding"が導入されています。これは送信時の音声信号に使われている音圧レベル圧縮技術で、従来のダイナミクス全域を一定の比率で圧縮していたモデルとは異なり、音圧レベルに応じて圧縮比率を変化させるというものです。これによりダイナミック・レンジをしっかり確保しながら、ワイアレス・マイク特有のノイズをカットすることができるということです。早速ボーカルに使用してみると、まずワイアレスらしからぬ声の太さに驚かされます。有線マイクのSM58と同じような印象で、全く違和感がなく"本当にワイアレスなの?"と思うほど。また、私が普段使用している以前のモデルと聴き比べみても、声の太さはもとより、音の密度が濃いと言うか情報量の多いしっかりした音質。特に低域はクリアで量感があり、かなり良い方向に改良されています。本体の形状も考慮されていて、手の握りがウィンド・スクリーンに近くなり過ぎたり、かぶってしまうような心配も少なく、マイクの持ちづらさが軽減されています。またグリップ部にバックライト内蔵のLCDディスプレイを搭載し、送信チャンネルや出力ゲインのほか、バッテリー残量も確認可能。明かりのついていない暗い会場でも視認性が高く、エンジニアにとってもうれしい機能の1つですね。なお、今回使用しているハンドヘルド型トランスミッターは、SM58タイプのほかにも全部で6種類のマイク・ヘッドが用意されていて、ダイナミック型にはSM58、Beta 58、コンデンサー型にはSM87、SM86、Beta 87A、Beta 87Cをラインナップ。それらすべてをオプション・マイク・ヘッドとして交換することができます。ほかにもラベリア型やヘッドセット型も用意されていますので、用途に応じてマイク・タイプを選択できます。

より安全で確実な周波数設定
自動検索と赤外線機能を搭載


次にレシーバー部であるUR4Dを見てみましょう。本機の一番の特長は、使用できるチャンネルを自動的に検出してくれる周波数自動検索機能でしょう。今回使用しているB型の帯域は合計30chあり、それらは6つのグループに分類されています。まず空きチャンネルの一番多いグループを"グループ・スキャン"により検出。検出されたグループ内から、より安定したチャンネルを"チャンネル・スキャン"で検出することで、混信などの少ない安定したチャンネルをレシーバーへ自動的に設定してくれる便利な機能です。また赤外線リンク機能を使用することでレシーバーのグループ/チャンネル設定をそのまま送信機へ転送することが可能。これはワイアレスの使用本数が多い大規模な現場では特に有効で、マイクとレシーバーの設定を確実に合わせることができる便利な機能と言えるでしょう。そのほか背面部にはイーサーネットとUSBの端子を装備。レシーバー同士をカスケード接続した大規模ワイアレス・システムを構築することもできます。本機を使用しての感想としては、有線マイクに匹敵する高音質が実感でき、さらに現場での操作性が向上したことだと言えます。トーク・イベントから、ワイアレス・マイクを多く必要とするホールなどの大規模システムまで対応できる本製品は、さまざまな会場で安定したワイアレス環境を提供してくれることでしょう。

▲レシーバー部のアンテナを装着したところ

SHURE
UHF-R Wireless Systems
439,950円〜(送信機+受信機のセット価格。セット内容により価格は異なる)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/UR2/SM58-JBX:40Hz〜15kHz
■送信周波数/UR2/SM58-JBX:806〜810MHzの中から任意の1chを選択
■受信周波数/UR4D-ABJ:806〜810MHz、797〜806MHz、779〜788MHzの中から任意の2chを選択
■外形寸法/UR2/SM58-JBX