マルチ録音にも対応できるリーズナブルなマイク8本のパッケージ

JTSMic-Set
価格破壊にもほどがある!と言いたくなるようなとてもリーズナブルなマイクロフォン・セットです(それぞれ単品でも販売)。コンデンサー・マイクが1機種、ダイナミック・マイクが4機種、中でもドラムなどに多く使われるであろうタイプのものは4本、合計8本がケースに入っています。JTSは1980年代初頭に設立された台湾のオーディオ・メーカー。ブランド・コンセプト自体が“最高の品質を低価格で提供すること”だそうで、なるほど今回のセットの仕様も納得できます。

コンデンサー・マイク1本を含む
8本のマイクを専用ケースに収納

セット内容を詳しく見ていきましょう。バスドラム用のNX-2(11,550円、ダイナミック、超単一指向性、周波数特性:20Hz〜12kHz、感度:−85dB)が1本、楽器&ドラム用のNX-6(9,975円、ダイナミック、超単一指向性、周波数特性:60Hz〜16kHz、感度:−72dB)が4本、楽器&ボーカル用のNX-7(8,400円、ダイナミック、超単一指向性、周波数特性:50Hz〜16.5kHz、感度:−72dB)が1本、ボーカル用のNX-8(8,400円、ダイナミック、超単一指向性、周波数特性:50Hz〜16.5kHz、感度:−72dB)が1本、楽器用のNX-9(9,975円、コンデンサー、単一指向性、周波数特性:60Hz〜18kHz、感度:−70dB)という構成です。これらが保管や移動に便利な専用のケースに入っているのですが、このセットが6万円以下で購入可能というのは驚きの一言に尽きます。実際にそれら8本の価格の合計よりも、このセットの方がかなりお得になっていますしね。各マイクの大きさ/重量に関しては、NX-8が一般的なハンドヘルド・マイクと同等と言えば分かりやすいでしょうか。

派手な味付けが好印象なNX-8
ボーカリストは試す価値あり

さて、いくら安いからと言って、レコーディングで使えなければ意味がありません。早速セッションで試してみましょう。まずはリズム収録のセッションで、ハイハットにコンデンサー・マイクのNX-9を使用してみました。押し出しの強さにはやや欠けるもの、必要にして十分なサウンドと言えるでしょう。もう少し指向性がシャープだったら……と思ったくらいです。

次にキックにNX-2を試したところ、これもまた問題無し。かなり派手めな味付けで、一言で表現するならドンシャリな傾向です。シビアなレコーディングだと、このマイクだけでは物足りなく感じるかもしれません。ちょうどドンシャリのへこんだ部分の周波数帯がやや大きいため、太さを出すにはもう1本違うマイクが必要になるでしょう。と言っても価格を考えれば十分な音質で、プロが使っても問題無いと思います。

個人的に使用してみて一番難しかったのが、タムなどに使用したNX-6です。サウンド・キャラクターは地味めで、若干のEQが必要に感じました。それと、超単一指向性にしては指向性が広いため、スネアに使うと意外とハイハットのかぶりが大きいのです。

さて次は、ボーカルにNX-7とNX-8をチェックしてみましょう。どうしても比べたくなってしまうのがSHURE SM58だと思います。価格差は承知で、心を鬼にして比べてみましょう。

SM58は聴き慣れているせいもあるのでしょうが、やはり安定しています。ハンドリング・ノイズもNX-7とNX-8の方が大きいようです。感度はJTS全体に言えることですがあまり高くないので、その分はマイクプリで補うことになります。

NX-8は非常に前向きな味付けがされていて驚きました。声のつややスピード感は好印象で、独特の粘りと明るくドンシャリなサウンドはかなりいいです。ドンシャリといっても嫌な感じは全く無く、粘りのあるドンシャリです。ボイス・パーカッションやラップに合うのではないでしょうか。特に唇がマイクに触るぐらいのオンマイクのときが非常にいい感じなので、マイクに近付いて歌うタイプのボーカリストにはマッチングがいいと思います。NX-8とNX-7はスペック上全く同一なのですが、サウンド・キャラクターは異なり、NX-7はどちらかと言うとナチュラルなサウンドです。楽器で言うと、ギター・アンプや打楽器などをオンマイクで収録する際に有利なように感じました。

品質的にも、持った感じの重さや雰囲気は価格からは想像できないものでした。このセットにドラムのトップに使うマイクがあと2本入っていれば良かったのですが……まあ、それは高望みというものですよね。


▲製品は8本のマイクがコンパクト・ケースに収納される

JTS
Mic-Set
57,750円

SPECIFICATIONS

(ケース収納時)
■外形寸法/300(W)×450(D)×160(H)mm
■重量/6.7kg