専用ソフトで正確に調整可能なデジタル入力対応パワード・モニター

TANNOYPrecision 6D

モニター・スピーカーは、部屋の鳴りや設置場所で音が変わり、また人それぞれ好みもあるので、“これでOK!”と納得して使っている人は少ないと思います。筆者自身、鳴らす場所や音楽ジャンルに合わせてスピーカーを変えることも少なくありません。今回紹介するパワード・モニターTANNOY Precision 6Dは、専用の音質調整ソフトを活用できるとのことで、期待が持てます。老舗のTANNOYがどのような音を出すかのか、早速チェックしてみましょう。

TANNOY伝統の同軸ユニットに
スーパー・ツィーターを追加


Precision 6Dはウーファーの中心部にツィーターを備えた同軸ユニットと、その上部のスーパー・ツィーターによる3ウェイ構成となっています。スーパー・ツィーターは超高域を担当するユニットで、周波数レンジの狭いCDを聴いた場合には、鳴っているのかどうか分からないほどです。TANNOYは古くから同軸スピーカーを作っており、その定位の良さは昔から定評があります。入力端子はアナログとデジタル(S/P DIFコアキシャル)の両方があり、どちらを使うか背面のスイッチで簡単に切り替えられるのも特長です。また、本機の機能面での特長は、細かい音質調整ができる20個のDIPスイッチです。ここまで細かく設定できるものは筆者も見たことがありませんでした。どう設定したら良いものかと悩んでしまうほどの数ですが、その環境に合わせた本機の最適な設定を教えてくれる測定ソフトActiv-Assistが用意されているので心配は要りません。そのほか、サブウーファー接続時に不可欠なローカット・フィルターも搭載しています。

Activ-Assistで最適な設定にすると
奇麗な高域とタイトな低域を奏でる


まず、設定をフラットな状態にして聴いたところ、随分地味だと思いました。もちろん部屋によって鳴りが変わるので、あくまでも“設定フラット時の筆者の環境”であることを付け加えておきます。音質的にはマイルドな傾向です。早速、筆者の環境に合わせて音質調整をしてみようと思ったのですが、DIPスイッチが多いので、マニュアル片手にやるのはさすがに面倒。そこで、Activ-Assistを使ってみることにしました。Activ-Assistを立ち上げると、測定に使うマイクをコンピューターのオーディオ入力に、Precision 6Dを出力に接続するように指示が出ます。指示通りに接続して測定を開始すると、スウィープ信号がPrecision 6Dから流れ、その結果をグラフで表示してくれます。フラットな設定で聴いていたときの印象と同じ特性のグラフが出てきたので、筆者が受けた印象は間違いではなかったということでしょう。そのままActiv-Assistのステップを進めていくと、この解析結果を反映したDIPスイッチの設定が画面に現れます。そこで、Precision 6Dの設定を画面と同じようにして聴いてみると、これがびっくり!! 今までとは全く違う印象の鳴りを聴かせてくれました。良い意味で全く別物のスピーカーになったようで、感心してしまうほどです。この状態であらためて試聴を続けたところ、とても奇麗な高域を奏でるスピーカーであることが分かりました。同軸スピーカーの特長でもある耳に痛くない、聴きやすい音です。低域もボワッとせず、量感はありつつもタイト。特に定位感は素晴らしく、ボーカルもバシっとセンターにいました。どんなジャンルでも奇麗に聴かせることができるので、どちらかと言えばハイファイ・オーディオ的なモニターだと思います。すべての音を良く聴かせ過ぎている感じはわずかにありますが、高域の抜けの良さは、スーパー・ツィーターが付いているだけのことはあると思いました。またデジタル接続時には、若干デジタルっぽいニュアンスが加わるのですが、レンジが一段と広がります。一般的なモニター・スピーカーで、リスニング的に音楽を聴くと意外と疲れたりするのですが、本機ではそういうことはありませんでした。また、とにかく、コンピューターがあれば気軽に音質補正ができるので、どんな場所でも同じような鳴り方に調整できるのはうれしいところです。とにかく高音域を奇麗に鳴らしたい人や、ハイファイかつ耳に優しい音で聴きたい人には最適なモニターと言えるでしょう。

▲Activ-Assist(Windows XP&Mac OS X 10.3以降に対応)での測定結果(左上)と、それを反映した推奨設定を示す画面(右下)。画面の指示に従うだけで簡単に設定できる

TANNOY
Precision 6D
105,000円/1本

SPECIFICATIONS

■周波数特性/59Hz〜51kHz
■最大SPL/116dB
■歪率/0.5%未満
■拡散パターン/90°(@−6dB)
■S/P DIF対応サンプリング・レート/44.1〜96kHz
■アンプ出力/75W(LF)、35W(HF&Super Tweeter)
■キャビネット/高密度MDF(バスレフ型)
■外形寸法/220(W)×356(H)×378.5(D)mm
■重量/13kg(1本)