2種類のダイアフラムを交換できるユニークなコンデンサー・マイク

SEIDEPC-B1

プロ/アマ問わず宅録がスタンダードとなった昨今、各メーカーは、高性能でリーズナブルな製品を提供するというのが当たり前となっている。個人的な意見ではあるが、現在メーカー各社の価格に対してのクオリティは足並みがそろってきていると言っていいと思う。各メーカーが製品に格差を付けるとするならば、突出したアイディアやデザインで勝負するほかないだろう。今回紹介するSEIDEブルードット・シリーズのPC-B1は、そういった中でもユニークなアイディアの、ピュア・コンデンサー・マイクだ。

高域の伸びが良くバランスの取れた
サスペンション内蔵ボール型ユニット


PC-B1の特徴は、何と言っても2種類のマイク・ユニットを用途によって交換できるというところだ。1つはボール型ユニットで21mmダイアフラムを内蔵。低域から高域までを幅広くカバーし、ボーカルやアコギ、ドラムなど、さまざまな録音に対応する単一指向性のタイプだ。この球体の中にショックマウントも装備されているので、特別にサスペンション・ホルダーを使用する必要はない。もう1つはフラット型ユニットで17mmスモール・ダイアフラムを搭載する。小口径ならではのレスポンスの良さと高域の周波数特性に優れ、ハイハットやシンバルなどアタック音の強いソースに適している。また本体には3段階のローカット・スイッチ(リニア/75/150Hz)と、同じく3段階のPADスイッチ(0/−10/−20dB)も装備されているので、ギター・アンプやドラムなどの大きい音量の楽器収音にも対応できる。まずは、この価格にしては非常に高級感のあるケースを開けてみると、既にボール型ユニットが装着されていたのでこちらの方からチェックしてみることに。ミキサーに接続してファンタム電源をオンにすると、本体正面下の小さなLEDがブルーに点灯し、ファンタム電源が通電されたことを知らせる。またマイクの正面がどこを向いているかを確認する意味でも非常に便利だ。まずアコギでチェックしてみよう。今回は音色を比較するために同価格帯のRODE NT1も用意してみた。SEIDEマイクの回路に関して詳しくは分からなかったが、新設計のアンプ回路と口径の大きなダイアフラムの組み合わせの印象はなかなか感じが良い。ノイズは非常に少なく、低域はあまり差を感じなかったが13kHz辺りからの高域の伸びはPC-B1の方が明らかに良い。自宅のモニター特性もあるが、ハイの伸びが良いのは確かだ。ストローク奏法の“命”と言ってもよい音の立ち上がりも良く、非常にライブな印象だ。さらにサスペンション・ホルダーが必要ないため、セッティングの自由度も高く、卵型のユニット形状なので、どこに向いているのか分かりやすい。

アタックのレスポンスも良い
小口径フラット型ユニット


さて、次は17mmの小口径ダイアフラムを採用したフラット型マイク・ユニットをチェックする。マイク・ユニットの交換は至って簡単。ミキサーのファンタム電源を落とし、ボール型のユニットを回して交換するだけだ。各ユニットの正面上部には、正確な装着を確保するために凹凸があるので、ユニットを交換する際にも常に正面は保たれる。ただ、ボール型ユニットに比べてフラット型ユニットは多少入れづらい感もあった。ボール型と同じくアコギでチェックしてみた。まずユニットでこれだけ重さが変わるのか?という感覚だ。しかしながら音の印象は非常に良い。ボール型に比べ小口径になっているのだから低域はカットされているが、そのカットのされ具合がアコギのプレイには非常に向いている。また、力いっぱいのストローク時にもアタック/リリースのレスポンスが良く、クオリティの高いレコーディングにも対応できそうだ。あまりに好感触だったので声でも試してみたが、ショックマウントがなくダイアフラムとウィンド・スクリーンの距離が近いため、思ったよりも印象は良くなかった。やはりソースによってユニットを変えるべきなのだろう。今回ドラム・セットではチェックできなかったので、ギター・アンプでもチェックしてみた。フラット型のユニットでは透明感のある音色ではあるが今ひとつ低域の音圧は感じられなかった。ボール型ユニットの方が、低域もギター特有の高域も十分に録れていて非常に好印象だ。大音量とは言えギター・アンプの場合、ほとんど一定のレベルで出力されているからレスポンスよりもレンジのハイエンドがしっかり録れた方がよい。形も音も異なった2つのマイクで、さまざまな楽器の録音が可能と言えるほど自由度が高い。これから宅録を始める人はもちろん、初めてコンデンサー・マイクを購入する人にもお薦めだ。
SEIDE
PC-B1
49,000円

SPECIFICATIONS

[ボール]
■周波数特性/20Hz〜20kHz
■最大音圧レベル/125dB
■出力インピーダンス/200Ω
■外形寸法(ボディ含む)/50(W)×60(H)×220(D)mm
■重量(ボディ含む)/350g
[フラット]
■周波数特性/20Hz〜18kHz
■最大音圧レベル/120dB
■出力インピーダンス/200Ω
■外形寸法(ボディ含む)/20(W)×25(H)×160(D)mm
■重量(ボディ含む)/200g