自由なセッティングが可能なセパレート式小型コンデンサー・マイク

RODENT6
RODEから、NT6というコンデンサー・マイクが発売になりました。宅録やバンドのレコーディングはもちろん、とても小型のマイクなので、通常のマイクでは設置するのが難しい映画制作の現場や劇場、狭小のライブ・ハウスなど、目立たないところにマイクを設置したい現場にも対応できそうです。

中域のだぶつきがなくすっきりした
粒立ちの良い立ち上がり

まず仕様から見ていきましょう。箱を開けると、ダイアフラム部とアンプ部が別々になったセパレート式になっています。ダイアフラム部は直径20mm、マイクの面からケーブル端子までの長さは88.5mmととても小型です。指向性は単一で、同社のNT5と同じダイアフラムを使用しているとのこと。そしてアンプ部は、直径20mm、長さが188.4mmで、−10dBのPADと、80Hz(−12dB/oct)のローカット・フィルターが付いています。そのほか、ダイアフラム部とアンプ部をつなぐケブラー繊維で強化された3mの専用ケーブルとウィンド・スクリーン、アンプ部専用のマイク・ホルダーが付属しています。ダイアフラム部に装着しているスイベル・ホルダーと付属のホルダーは、いずれも1/4インチという特殊なカメラ・サイズなので、SHURE5/8インチとAKG3/8インチという2種類の変換ネジも付属しています。

まずアコースティック・ギターを録ってみることにしました。70cmほど離れた距離から12フレット付近を狙う感じです。ダイアフラム部の角度を変える部分はスイベル・タイプになっているので、スムーズに自分の狙った角度へアジャストすることができます。また、上下方向だけではなく水平方向へ回転させることもできますから、さまざまな角度を試して音のキャラクターを変化させてみると面白いのではないでしょうか。

このようにマイクをセッティングしてみると、見た目もケーブルの引き回しもすごくシンプル。通常のセッティングより格段にきれいですし、何よりスペースを取りません。そして音色の印象は、ペン型のマイクを立てた感じに似ていて、AKG C451より少し固めな感じ。そのためアルペジオの1音1音の粒立ちがよくアタックもきっちりと出るという印象です。それはストローク奏法の場合でも同様の傾向で、中域の余計なだぶつきもなくすっきりとした音質は、レコーディング限らず、ライブでの使い勝手も良いのではないでしょうか。 また個人的には、RODE特有の4kHz、 8kHzあたりにピークがあるNT6の音色は、その帯域に特徴がある三味線や琴などの和楽器、マイキングが難しい形状の民族楽器などにも相性が良いのではないかとも思います。

低域を抑えアタック感をより強調できる
アンビエンス・マイクにも適任

次に、目立たないところにセッティングができるのもNT6の特長なので、オフマイクとしての性能を調べてみようと思い、部屋の天井ギリギリの高さにセッティングしてみました。その位置で人の会話やルーム・アンビエンスを録ってみると、アコースティック・ギターを録ったときと同様に、音がすっきりしていて中域もだぶついた感じにはならず、オフマイクとしても十分な性能を持っています。またオフマイクのピーク特性がテレビのスピーカーや、ラジオで再生される場合などに最適な帯域にあると思います。さらに今回はドラムのオーバーヘッドとしてもセッティングしてみましたが低域を抑えた少し固めの音質で、空気感を与えていくというより、ドラム・セット全体にアタック感を足していくという感じが適しているのではないかと思います。

NT6はRODE独特の音質を持っているので、その特性をうまく生かしてマイキングやアンプの選択をすることで、宅録のみならずスタジオ・レコーディングでも十分使えると思います。しかし筆者のお薦めとしては、省スペースでスマートにセッティングできる利点を生かし、ライブ・ハウスなどで使用すると最も効果を発揮するのではないかと思います。特に小規模スペースでのアコースティック・ギターやパーカッションを収音する際など、ダイアフラム部に装着されたスイベル・タイプのアダプターはスタンドなどの脚部が入り組んだステージでも、しっかりと楽器を狙うことができるからです。

余談になりますが、先日知り合いになった映画監督がドキュメンタリー映画を制作していて、“安くてフィールド・レコーディングや、室内のインタビューにも使用できるようなマイクはないか”と言っていました。ちなみにそのときはこのNT6を薦めましたが、そういった場面での用途も考えると、電池で駆動することができるとさらに便利でしょうね。

高音質でなおかつ低価格なのでバンドのライブ演奏に、そしてレコーディングにと、所有マイクの内の1本として持っていれば、手軽にバンド・サウンドの臨場感を変化させることができると思います。またライブ・ハウスやバーの常設機材としてや、自宅でルーム・アンビエントをレコーディングしたいときなどダイナミック・マイクだけではなく、こういったタイプのコンデンサー・マイクも持っていれば、音に差を付けられるのではないでしょうか。

RODE
NT6
42,000円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/40Hz〜20kHz
■入力感度/−35dB(0V=1V/Pa)
■出力インピーダンス/200Ω
■最大音圧レベル/135dB
■ダイナミック・レンジ/116dB
■外形寸法/ダイアフラム部:20(φ)×88.5(H)mm アンプ部:20(φ)×188.4(H)mm
■重量/386g(本体合計)