自然な出音と高いコスト・パフォーマンスを誇るラージ・リボン・マイク

ALPHA-MODEStellar RM-1

宅録環境において、近年はDAWの高機能化により、何でも高音質に録音できるようになりました。しかし、実はワイド・レンジ化による弊害も出てきたのです。すべての楽器をワイド・レンジで録音すると、ミックス・ダウンの際に音がぶつかりあってバランスがまとまらなかったり、音が前に来なかったりするので、録音の際のマイキングに工夫が必要になってきました。なぜならば、ワイド・レンジなマイクだと、不必要な音まで気付かないうちに録音されてしまうからです。例えば、レベルの低い低域のノイズ、ボーカリストのリップ・ノイズ、ミュージシャンの演奏ノイズや足音などが知らず知らずのうちに録音されていて、後で気付いて困ったことはありませんか?

ワイド・レンジ主流の現在だからこそ
使いこなしたいリボン・マイク


ALPHA-MODE Stellar RM-1はリボン・マイクです。リボン・マイクの特徴として、私の経験では、音質、音量感、そして距離感が自然で、人間の耳の感度に近い点が挙げられると思います。普段の生活感がそのまま録音される感じとでも言うのでしょうか。リボン・マイクを使うメリットとして、ナロー・レンジな周波数特性により、耳障りな音に反応しにくいという点があります。また、私はナロー・レンジで録音した方が格好良く聴こえる楽器もあると思います。例えば、ドラムのシンバル、パーカッションのカウベル、タンバリンなどの金属もの、FENDER Telecasterで弾くコード・カッティング、ウッド・ベースの自然な低音、メタル・マウスピースのサックス、そしてナレーション用のボイスなどに本機を試してみてはいかがでしょう? きっと新しい世界が開けるはずです。

中域にパンチがありながら
距離感に不自然さの無い出音


今回レビューの依頼を受け、受け取った白い箱を開けたら、本機が出てきました。一瞬ボディの青い光り具合と、併せてホルダーもブルーであることに違和感を覚えましたが、ある意味、レトロな良いデザインとも言えます。さて、私の隣に優秀な男性ボーカリスト&ラッパーがいるので、彼のプライベート・スタジオで本機をチェックをしてみることにしました。使用機材は本機→プリアンプのMILLENNIA HV-3B→MACKIE. 1604-VLZ Proとつなぎ、そしてもう1本、私が普段使用しているビンテージのリボン・マイク、STC 4038を用意して、比較試聴することにしました。まず4038を聴いて次に本機を聴いたら……驚きました! すごくいい音。具体的には4038より中域が出ていて声に自然なパンチがあります。自分の声がハリウッド・スターばりになったような、そう、あのナレーションの声質の感じなんです。声を録っていたボーカリストもいきなり“これいくらですか?”と聞いてきたので、価格を教えたら2度ビックリしていました。“いいマイクですね”とのコメント。また別の機会に本機→HV-3B→SSLコンソールにつないで、4038と比較試聴でドラムとパーカッションのチェックを行いました。2本のマイクをドラムの正面に立て、ドラム全体の音を拾えるようなセッティングです。ドラムのアンビエンス用にコンデンサー・マイクを使用したときに、やけにシンバルとハイハットが近く、キックが遠くに感じられるようなバランスになってしまったことはありませんか? ドラム全体の距離感が一致せず、不自然に感じることがあると思います。そうした際にリボン・マイクを使うと、距離感が自然に聴こえるのです。まず4038から試したところ、いつもの聴き馴れた自然なバランスでしたが、次に試した本機にはヤラれました。素晴らしい距離感と太い音質……これでこの価格なら、もう十分でしょう。次にタンバリンでチェックをしてみました。経験がある方もいると思いますが、タンバリンはなかなかいい感じに音量感が出ない、録音するのが難しい楽器です。で、私はいつも4038を使っていたのですが、代わりに本機で聴いてみました。するとバッチリ、耳障りな帯域が取れ、自然な音量感で聴けました。本機は比較的リーズナブルで手に入れやすいマイクです。クリスマスも近いことですし、パッケージに青いリボンをかけて、友人や先輩または後輩へのプレゼントにいかがでしょう?
ALPHA-MODE
Stellar RM-1
29,800円

SPECIFICATIONS

■タイプ/ラージ・リボン・マイクロフォン
■リボン・タイプ/ピュア・アルミニウム(2μm厚)
■周波数特性/30Hz〜18kHz
■感度/−65dB
■SN比/70dB以上
■最大入力許容音圧/165dB
■外形寸法/68(φ : ヨーク含まず)×240(H)mm
■重量/1,23kg