オーディオI/Oやエフェクターを内蔵した汎用性の高い小型ミキサー

ALESISMultiMix 16 FireWire

DAW環境の構築時に大切な問題となるのは、やはりアナログ信号の出入り口であるオーディオ・インターフェースのチョイスだろう。使用するコンピューターやソフト、ドライバーなどの関係からある程度は絞れるとはいえ、さまざまなスペックの魅力的な製品があふれている。今回チェックするMultiMix 16 FireWireは、マルチエフェクター内蔵のアナログ・ミキサーとオーディオ・インターフェース(Mac/Windows双方に対応)の複合機という変わり種だ。

アナログ・ミキサーとして盤石な作り
24ビット/48kHzデジタル出力も装備


まずはアナログ・ミキサー部について。本機はMultiMix FireWireシリーズのフラッグ・シップ・モデルであり、シリーズ最多の16ch(2-TRACK INもカウントすると18ch。ほかに8ch/12chのモデルがある)の入力が用意されている。ch1〜ch8まではファンタム電源対応のマイク/ライン入力仕様になっており、この8系統にはゲイン・コントロールと75Hz以下をカットするハイパス・フィルターが用意されている。ch9〜ch16は4系統のステレオ・ライン入力だ。各チャンネルにはそれぞれパン、3バンドのEQ(高域は12kHz以上のシェルビング、中域は2.5kHzのピーキング、低域は75Hz以下のシェルビング)、そして後述する内蔵エフェクターやAUXセンド・アウトに信号を送るAUXツマミが2系統(1系統はプリ/ポストを選択可)。このパンとEQのツマミはセンターにクリックがあるタイプで、回転もネットリと重く、なかなか高級なレスポンスである。それに対してAUXのツマミは回転のトルクがあっさりと軽く設計されているのがうれしい。これはAUXセンド・ツマミのコントロールでエフェクターを"演奏"するダブ的なアプローチを可能にした、非常に音楽的な設計と言えるだろう。また、プリフェーダーの信号を確認できるPFL/ソロ・スイッチや、押すと同時にメイン・フェーダーの横にあるALT 3/4フェーダー(ALT 3/4 OUTに出力可能)に信号を立ち上げられるスイッチなどの仕様により、非常にフレキシブルなルーティングが可能になっている点も好印象だ。出力は基本的には2chアウトという設計だが、メイン出力とモニター出力音量をそれぞれ設定できるほか、いわゆるTAPE IN/OUT的な2-TRACK入出力や、外部DAT等のデジタル・オーディオ機器とのコネクト用に24ビット/44.1kHz/48kHz仕様のS/P DIFデジタル出力も用意されていて、必要な条件を満たしつつ、無駄を削ぎ落とした設計になっている。また、内蔵のマルチエフェクターはディレイ/リバーブなどの空間系やコーラス/フランジャーといった揺れモノ系を中心に、シンプルだが使い勝手の良いプログラムが100プリセット用意されている。特にリバーブ関係は、往年のALESIS製品をほうふつとさせる高域の伸びた透明感のあるキャラクターで、懐かしいやらうれしいやら。全体的なサウンドは素直な感じで、効きの良いEQの印象も手伝ってか、カラっとした明瞭感とボトムのパワー感が印象的だ。

18イン/2アウトのオーディオI/O機能
Cubase LEの付属も魅力


さて次に、本機の最大の特徴であるオーディオ・インターフェース機能を見てみよう。コンピューターへの接続はFireWireケーブルを介し、送られる信号は各チャンネルのポストフェーダー出力(16ch)+メイン出力(2ch)。逆にコンピューターから本機へ出力できる信号は2chだ。Core Audio(Mac OS X)とASIO(Windows)に対応しており、Mac OS 10.3以上であれば、特にドライバーのインストールを必要とせず、つなげるだけで設定完了だ。付属のCD-ROMにはMac/Windows用ドライバーのほかに、オプションでDAWソフトのSTEINBERG Cubase LEも入っているので、コンピューター・レコーディングを始めたいというビギナーにもうれしいパッケージとなっている。ちなみに、気になる転送速度だが、今回のテスト環境(Mac G4/1.25GHz&APPLE Logic使用)では、ほとんどストレスを感じなかったことも報告しておこう。以上、駆け足でMultiMix 16 FireWireのスペックをご紹介したわけだが、本機の最大の特徴はDAW環境にアナログ・ミキサーを融合させたというコンセプトに尽きるだろう。外部MIDI音源や各種楽器を接続して、ホーム・スタジオでの信号制御の中核として使うのも良し、豊富な入力数を生かしてちょっとした生音録りにも活用できるだろうし、ラップトップ・マシンを使用したライブ・シーンにも重宝しそうだ。とにかくミキサーとしての基本性能の高さ、安定感とDAW機器としての汎用性の高さは、コスト・パフォーマンスも含めて非常に魅力的だ。

▲リア・パネルにはFireWire端子を2系統用意。16ch分の入力、メイン/モニター/ALT 3/4出力、AUXセンド&リターン、デジタル出力などはトップに集約されている

ALESIS
MultiMix 16 FireWire
94,500円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/22Hz〜22kHz
■S/P DIF&FireWireデジタル出力/24ビット、44.1/48kHz
■外形寸法/22.8(W)×8.3(H)×18.5(D)mm
■重量/4.4kg