群を抜いた太いサウンドと頑丈な作りが魅力のリボン・マイクロフォン

SALRib One

オールド・モデルのテイストが盛り込まれたマイクが、復刻版や新製品として発売されることが多くなってきました。ハイビット&ハイサンプリングをうたうハイファイ指向の機材の増加に従って、オールド・テイストの機材も増えているような気がします。今回は、そんなオールド・テイスト満載のリボン・マイク、SAL Rib Oneをチェックしてみましょう。リボン・マイクと言うと、読者の皆さんはなかなかその音を聴く機会が少ないと思いますが、一昔前はこのリボン・マイクでいろいろな音をレコーディングしていたのです。自然な印象で耳に優しい音質が再注目され、最近のレコーディングの現場でもときどき見かけるようになりました。きっと今までに無い質感を聴かせてくれることでしょう。

ポップ・フィルター要らずの
吹かれにも強い丈夫な構造


Rib Oneの外見は、まさにオールドそのもので、インテリアにもなりそうな雰囲気。マイク・ケーブルは直にマイクから出ており、マイク・ホルダーもマイクの一部という構造です。取り扱いは、リボン・マイクだからといって難しいことは無く、普通のマイクのようにこのままスタンドに立ててマイクプリに入力してあげるだけ。ただ、リボン・マイク全般に言えることですが、注意点としてファンタム電源は絶対にオンにしないこと。そして衝撃や風に弱いので故意に息を大きく吹きかけたりしないようにしてください。また、横に寝かせて保管するとマイクのダイアフラムに当たるリボンが伸びてしまうので立てて保管する方が良いでしょう。では、早速音をチェックしてみましょう。まずボーカルで試してみたのですが、オンマイク気味で聴いてみると、ものすごく太い音で録音されていて、ほかのどのマイクの音も軽く聴こえてしまうほどです。悪く言えばこもっているのですが、高域がナチュラルな分EQで高域を思いっ切り上げてあげると、古く作った感じの音質になります。また、通常リボン・マイクは前述した通り息などの吹かれに非常に弱いので、ちょっと離れ気味で歌ってもらったり、ポップ・フィルターを使ったりして対策することになります。しかしRib Oneはメッシュが細かく、風に対してかなり丈夫な作りをしているので、ボーカリストによってはポップ・フィルターを使わなくても良いほどでした。オンマイクにすると太くなり、オフ気味にすると軽くなっていくので、マイクの距離でキャラクターを作ることもできます。

エレキギターにも最適な
温かく懐かしいサウンド


次に、筆者もよくレコーディングでリボン・マイクを使うエレキギターの録音で試してみました。レビュー用の機材ということもあり、思い切った使い方はできませんでしたが、クリーン・トーンのエレキギターで非常に良い結果が得られました。一般的にクリーンなエレキギターは、ピークが耳に付きやすく音が硬くなる傾向にあるのですが、Rib Oneで録った音は、温かく懐かしい感じがします。ただ音は丸いので、パキーンとした音が欲しい場合には向いていません。アンプの音量を極端に上げなければディストーション・ギターでも大丈夫でしたが、どちらかと言えばクリーンの方が好印象でした。また、試しにドラムのアンビエンスでも試してみたのですが、シンバルのシャンシャンした感じも気にならず、これもまた耳に優しい音を聴かせてくれました。ジャンルによっては非常に有効でしょう。Rib Oneは、他社のリボン・マイクに比べても音質的に太い傾向にあります。また、感度が若干低いので、オンマイク気味のセッティングの方が良い印象でした。コンデンサーやダイナミック・マイクとは全く違う質感を聴かせてくれるので、とにかく太く温かい音が欲しい人には最適でしょう。現代の音とは逆行していますが、このナチュラルな太さを聴いてみる価値はあると思います。高域は正直あまり伸びていないのですが、なだらかに落ちているので、EQでの高域ブーストも気兼ねなく積極的に行うことができます。録音をしていて最近のマイクが軽過ぎると感じ、多少こもってもいいから太い音が欲しい人は、ぜひチェックしてみるとよいでしょう。聴いたことの無い質感を味わえますよ。
SAL
Rib One
オープン・プライス(市場予想価格/62,790円前後)

SPECIFICATIONS

■指向性/双指向
■周波数特性/30Hz〜18kHz(@3dB)
■感度/−55dB(0dB=1V/Pa)
■最大SPL/165dB
■インピーダンス/200Ω
■ノイズ・レベル/18dB
■外形寸法/73(φ)×182(H)mm
■重量/850g