クリアで落ち着きのある音質を実現した音楽的なモバイル・レコーダー

M-AUDIOMicroTrack 24/96

最近、ライブ演奏をする機会が多いのですが、現場ではセッティング時間に余裕が無いことが多く、同時録音用機器の準備には毎回悩まされていました。コンピューターへの転送まで考えると、コンパクト・フラッシュを使用する小型レコーダーが欲しいとあれこれ調べてみたのですが、なかなか満足できる物が見つからなかったのです(あるにはあるのですが、数十万円)。そんなときに登場したM-AUDIO MicroTrack 24/96は、筆者の求めていたモデルなのかも?という訳で早速チェックしてみました。

軽量/コンパクトなボディに
多彩な入力端子をしっかり装備


まずはフロント・パネルから見ていきます。電源、LCD画面、消去スイッチ、入力レベル調整スイッチ(L/R独立)、出力レベル調節スイッチ、録音スイッチと並び、上部にはステレオ・マイク入力端子、MIC/LINE入力端子、ヘッドフォン出力端子、下部にはモニター出力端子、デジタル入力端子、USB端子が搭載されています。左側面にはメニュー・ボタン、ホールド・スイッチ、入力レベル切り替えスイッチ、ファンタム電源、右側面にはNAVホイール、メディア・スロットが装備されています。重量も140g弱と非常に扱いやすい上に、よく考えられたレイアウトです。また、その名の通り24ビット/96kHzに対応しているほか、コンピューターとUSB接続するとリムーバブル・ストレージとして認識されるのでドライバーは必要ありません。加えてステレオ・マイクと、ファイルの読み込み/編集/書き出しができるソフトウェア、Audacityも付属されています。

爆音から繊細な音まで
幅広く対応するインプット


実際に付属のステレオ・マイクで録音してみましょう。今回はライブで使用してみます。ここでいきなり面食らってしまったのですが、MicroTrack 24/96にはポーズ・ボタンがありません。録音ボタンを押すとすぐにレコーディングがスタートするのです。慣れてしまえば特に不便はないのですが、ファームウェアのバージョン・アップで対応してほしい点ではあります。液晶画面でのレベル・メーターの反応も良く、インプット・レベル調整はスムーズでなかなか快適と言えるでしょう。気になる音質は、落ち着きのある余裕のサウンドとでも言いましょうか、大変クリアでハイが痛くない扱いやすいトーンです。付属のマイクも低域が少なめでライトな感じではありますが、このサイズのモデルとしては十分な性能で、使えます。フィールド・レコーディングやライブ・レコーディングでクリップに弱いデジタル・レコーダーを使用する際には、突発的な大音量に備えインプット・レベルをかなり抑えめでレコーディングすることになります。このような状況で24ビットの恩恵は大きいと言えるでしょう。また、入力レベル切り替えスイッチが3段階あるのも大変ありがたいポイントです。爆音のライブをレコーディングしているときにインプットが絞り切れないということも無く、逆にメニュー画面から“27dB TRS Boost”をオンにすることで、非常に小さいレベルのソースにも対応できます。カメラに例えるならば、望遠から接写まで幅が広くあらゆる状況に素早く対応できるモデルといった感じです。本体で行うことのできるファイル編集は選択と削除のみなので、コンピューターとの連携は必須になりますが、付属するソフトウェアのAudacityで必要十分な作業ができます。僕はモバイル・レコーディング用に、DAT、MD、SONY Walkman Pro、NAGRAを愛用し使い分けています。それぞれ一長一短があり、サウンドのクオリティでは“NAGRA→DAT→Walkman Pro→MD”の順で、録音可能時間では“DAT→Walkman Pro→MD→NAGRA”になり、携帯性では“MD→Walkman Pro→DAT→NAGRA”となっています。その結果、総合成績で最も優秀なWalkman Proを多用していますが、コンピューターへの転送の手軽さを加えるとMicroTrack 24/96は総合成績で間違いなく1位と言えるでしょう。欲を言えば、USBオーディオ・インターフェースとして機能するモードがあれば最高なのですが、ファームウェアのアップデートでの対応を期待するのは欲が深過ぎでしょうか?MicroTrack 24/96がASIO対応になったら、かなり無敵だと思うのですが。

▲本体上部。左からマイク入力(ステレオ・ミニ)、MIC/LINE入力×2(TRSフォーン)、ヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ)



▲本体下部。左からモニター出力(RCAピン)、デジタル入力(S/P DIFコアキシャル)、USB端子

M-AUDIO
MicroTrack 24/96
オープン・プライス(市場予想価格/38,850円前後)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz
■サンプリング周波数/32、44.1、48、88.2、96kHz
■量子化ビット数/16/24ビット
■入力レベル/−14dBV(エレクトレット・マイク入力)、+4.3dBu(MIC/LINEバランス入力)、+2.1dBV(MIC/LINEアンバランス入力)
■外形寸法/61(W)×109.5(H)×28.5(D)mm
■重量/138.9g(コンパクト・フラッシュ・カード含まず)