軽量、小型ながら高品位な録音を実現するフィールド・レコーダー

SOUND DEVICES744T

ついに出ました。SOUND DEVICES 744TはDATレコーダーやNAGRAのレコーダーなどに代わるかもしれない、4トラックのフィールド・レコーダー。しかも、24ビット/192kHz対応です。早速チェックしましょう。

軽量、小型にもかかわらず
豊富な入出力を装備


744Tはとにかく小さい。ウェスト・バックに入ってしまうほどです。重量もバッテリーなしで1.2kgしかありません。記録メディアは40GBの内蔵ハード・ディスク(最大2TBまでのハード・ディスクに取り替え可能)、もしくはコンパクト・フラッシュを使用。ハード・ディスクは裏ぶたを開ければ交換できます。電源はビデオ・カメラなどで使われるリチウム・イオンのバッテリーを使用。充電が楽だし、ビデオ・カメラと共用できるので便利です。フロント・パネルには液晶画面とボタン、LEDが並んでいて、再生、録音ボタンなどはやや大きめ、MENUなどのボタンは小さめになっています。液晶画面には時間やファイル・ネーム、量子化ビット数、サンプリング周波数などが表示され、視認性にも優れています。左側の小さなLEDは現在の入力状態が一目で分かるようになっています。例えば、入力の種類やローカットの有無、リミッターのオン/オフ、ファンタム電源のオン/オフなどが確認可能。右側のLED群は録音されるトラックの状態、そして各トラックの入出力レベル・メーターになっています。左右のサイド・パネルにはアナログ/デジタル入出力、FireWire端子などが並んでいます。入出力は豊富で、本体の大きさから考えると驚異的。私の愛機NAGRA IV-Sに通じるものがあります。うれしい!744Tがスゴイのは豊富な入出力を利用してレコーディングできるところ。例えば、ch1にマイク、ch2はライン、ch3/4はデジタルでレコーディング、なんてことができてしまいます。ただしch3/4は直接マイクをつなげられないので、2本はch1/2のマイク入力、ほかの2本は外部マイクプリを使ってライン入力に送るといいでしょう。また、録音モードとしてプリセットが用意されており“Factory Set”“Film Set”“Repoter Set”“Music Set”から選択可能。さらに、Setを作成して、ロードすることもできます。

ローカットなどの便利機能に加えて
コンピューターとのやり取りも可能


それでは、744Tを持って外に出てみましょう。SENNHEISER MKH-415を2本使って、電車のSEを録音してみます。マイクにはウレタン製ウィンド・スクリーンを装着。今回は2chだけなので録音モードは“Music Set”を選びます。“Music Set”は16ビット/44.1kHzなので、24ビット/96kHzに設定を変更。マイクの入力レベルのゲインは2つの設定から選択可能で、“NORMAL”を選ぶと25〜75dBになるので通常はこちらでいいでしょう。もう1つは“LOW RANGE”で10〜55dB、つまり大音量系に対応可能。ライブ・レコーディングの際は“LOW RANGE”にするといいかもしれません。レンジを決めた後、フロント・パネル左のボリューム・ツマミでレベルを設定。ボリューム・ツマミは押せばロックが外れ、もう一度押し込むとロックされます。しっかりロックされるので、録音中に接触してしまった際も安心です。さて、電車が来るのを待つとしましょう。風が結構吹いてきたので、MENUで“LOW CUT”を選びます。ロー・カットは40/80/160/240Hz@12/18/24dB/octから選択可能で、かなり強力。240Hz@24dB/octに設定したところ、風速5〜7m程度の風でも遮断できました。準備ができたところで、RECボタンを押し、録音を開始。24ビット/96kHzをメインに24ビット/192kHz、16ビット/32kHzでも録音してみます。続いて、録音した音を再生してみましょう。まずは744Tのアナログ出力で確認。出音はとても素直で、サンプリング・レートの違いもはっきりと分かります。24ビット/192kHzの録音はS/Nがものスゴク良い。つまり、744TのDAコンバーターはかなり良質なのです。今度はFireWireを介してAPPLE PowerBookG4につなげてみます。コンピューターに接続すると、744Tが認識されるので、後はファイルをコピーすればOK。読み込んだWAVファイルをAPPLE Logicに立ち上げ、M-AUDIO Ozonicから出力。出力はYAMAHA DM1000を介して、MUSIKELECTRONIC GEITHAINのスピーカーに送ります。試聴したところ、ダイナミック・レンジや音質などの変化はありませんでした。私のように日ごろからフィールド・レコーディングをしている人たちが本当に欲しかったのは、軽くて、操作が早くて、動き回っても音飛びしない……そんなマシンです。744Tはまさしくその要望に応えてくれます。さらに音は良いし、入出力が豊富。“NAGRAが一番”という私の信念がグラッときています。両方持っていても重くないし……。正直に言うと、欲しい!

▲サイド・パネル(左側)にはマイク/ライン/AES入力切り替えスイッチとインプット(XLR)×2、ライン入出力(TA3M)×2、ステレオ・ライン出力(ステレオ・ミニ)、ヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ)、ヘッドフォン用レベル調整ツマミが並ぶ



▲サイド・パネル(右側)。上段左からタイム・コード入出力、AES/S/P DIFデジタル入力(コアキシャル/BNC)×2、FireWire端子、C.Link入出力。下段左からMENUセレクト用ツマミ、AES/S/P DIFデジタル出力(コアキシャル/BNC)×2、ワード・クロック入出力、DC電源入力



▲コンパクト・フラッシュ・スロットはリア・パネルに配置

SOUND DEVICES
744T
693,000円

SPECIFICATIONS

■トラック数/4
■記録メディア/ハード・ディスク(40GB)、コンパクト・フラッシュ
■量子化ビット数/16、24ビット
■サンプリング周波数/32/44.1/48/48.048/88.2/96/96.096/176.4/192kHz
■A/Dダイナミック・レンジ/114dB(A-weighted 帯域幅)、110dB(20Hz〜22 kHz 帯域幅)
■D/Aダイナミック・レンジ/112 dB(A-weighted 帯域幅)、108 dB(20Hz〜22 kHz 帯域幅)
■外形寸法/209(W)×45(H)×125(D)mm
■重量/1.2kg(バッテリーなし)