低価格ながら多機能かつ高品位な音質を実現したコンデンサー・マイク

CADGXL3000

DAWをはじめとしたデジタル機器が普及した現在、レコーディングを行っていてマイク関係の機材によって音質差が出やすくなったと思います。今まで以上にマイクやマイクプリの選択をシビアに行わなければならないと感じるのは筆者だけではないでしょう。そんな状況を反映し、低価格でありながらも高品位なコンデンサー・マイクが数多く登場しています。本誌のレビューが読者の皆さんの選択の基準になっていると思うと責任重大だな……と思う今日このごろです。さて、ここではCADの比較的低価格なコンデンサー・マイクGXL3000をチェックしてみましょう。あまり聞き慣れないメーカーかもしれませんが、実はCADのマイクはプロの間では昔から使われています。名前は出せませんが、有名なあのボーカリストの歌はCADのマイクで録音されたという実績もあるのです。では、GXL3000はどうでしょうか。

指向性切り替えスイッチに加え
ローカット/PADも装備


GXL3000のダイアフラムはデュアル仕様になっており、単一/双/無指向性の切り替えが可能です。さらに、ローカット・スイッチと−10dBのPADを装備。これだけの機能が付いているので、さまざまな用途で使うことができるしょう。早速、箱から取り出してみると、ボディはポピュラーとされているシルバー・ニッケル仕様となっています。実際に持ってみると意外と重量感があり、結構しっかりとした作り。指向性の切り替えスイッチはアウトボードなどでもよく使われているタイプで、耐久性の面でも安心です。また、ダイアフラムの編み目も細かく、凝った作りになっているので、息や風など吹かれによるノイズにも強く、使いやすそうです。さらに、GXL3000にはショック・マウント・マイク・ホルダーが付属。ホルダーは広げて装着するタイプで、ホールド感などは問題ありません(扱うには少し力が必要ですが、無理に広げて壊さないように注意)。低価格にもかかわらずよくできています。

クリアなサウンドで
ボーカルやアコギ録りにぴったり


では、肝心の音をチェックしてみましょう。ボーカル、そしてアコースティック・ギターとドラムのアンビで試し、比較用コンデンサー・マイクはポピュラーなNEUMANN U87Aiを使用します。聴いてみると……とてもクリアな印象です。悪く言えば軽い音なのかもしれませんが、GXL3000の音をしばらく聴いてからU87Aiに変えてみると、U87Aiがこもって聴こえてしまうほどクリアです。その要因はGXL3000のハイ上がりの特性にあります。ただ、高域はEQで変にハイエンドを上げましたという感じではなく、自然に持ち上げたようなニュアンスなので、シビランスや高域ノイズは気になりません。特にボーカルの場合は吹かれによるノイズにも強く、ダイアフラムの細かい編み目のおかげで、ポップ・フィルターが無くても録音できてしまうほどです。宅録などでも使いやすいと思います。クリアな女性ボーカルでは特に好印象(もちろんボーカルの声質によって変わりますが)。男性ボーカルは少し中低域のふくらみが希薄なことが多いので、EQなどで調整するといいでしょう。フロア・ノイズなど低域のノイズに関しても全く気になりません。アコースティック・ギターの場合も非常にクリアな音で、変に“チャリチャリ”したところばかりが強調されるわけでもなく好印象。サウンド・ホール狙いでもほかのマイクに比べて低域のボコボコ感が少ないので、初心者でも扱いやすいでしょう。また、ドラムのアンビエンスでは少し空気感が狭く軽い印象ですが“バシャバシャ”とうるさくはなく、EQなどで補正するといい感じになりました。全体的な感想は、どの用途でもオフマイク気味よりもオンマイクにした方がクリアかつふくよかさが出て好印象。最大SPLが135dBであること、PADや編み目の構成上、オンマイクで使っても問題ないので、ぜひオンマイクでの使うことをお薦めします。GXL3000の音質は本当にクリアなので、ほかのマイクを使っている際に、EQでハイを上げている人や、ハイを上げたいけど、EQでうまく調整できず妥協している人は試してみる価値があると思います。中低域のふくよかさはEQなどで作ることはできますが、高域をEQくさくしないで持ち上げるのは結構苦労しますからね。音がこもってしまう……と悩んでいる人は、GXL3000を使用すれば音楽的にハイが持ち上がるので、ぜひ試してください。
CAD
GXL3000
39,900円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz
■指向性/単一、双、無
■感度/ー33dBV/Pa
■インピーダンス/200Ω
■最大SPL/135dB
■外形寸法/51(φ)×193(H)mm
■重量/602g