2本の真空管がキメ細かで上品なひずみを生むギター用プリアンプ

DAMAGE CONTROLDemonizer

大槻ケンヂ率いるバンド“特撮”でギターを担当しているnarasakiと申します。今回“ひずみにうるさい人”ということで抜擢されました。実際ひずみにうるさい、というよりもひずみがうるさい、といったところですが(ちなみに特撮の激ひずみバッキング・ギターはほぼラインで録っているのですよ)、それはともかく、LINE6の開発部に居た人がDAMAGE CONTROLというメーカーを立ち上げたそうです。今回は、その第一弾である真空管プリアンプのDemonizerをチェック。激しいディストーションも生み出せるギター用ツールです。

真空管プリアンプに加え
2種類のEQとオプト・コンプを搭載


入出力端子は、ギター入力が1つに対し、出力はアンプ・アウト/ダイレクト・アウトの2種類があり、レコーディングやライブによって選択ができるようになっています。アンプ・アウトはその名の通りアンプ接続用ですが、ダイレクト・アウトの方は、12インチ・スピーカーを4つ搭載したモダン・ハイゲインのアンプ・シミュレート・サウンドが最終段で加わります。パネル中央に並ぶコントロール・ノブはLEVEL、DRIVE、OPTO COMP、PRE EQ&POST EQ(真空管の前後)。PRE EQは200Hz〜1.2kHzを−6dB/+14dB、POST EQは500Hz〜2.2kHzを−20/+15dBで調整できます。またOPTO COMPは右に回すほどコンプレッションが強くなる仕様で、高いコンプレッションでもトーン変化の少ないサウンドが得られます。プロ・スタジオに置いてあるような高級なコンプに似た感触の良さがありました。正直びっくりでした。そしてパネルの左右下にあるのが、バイパス・スイッチとヌークリア・スイッチ(後述)。また中央上部には“マジックアイ・バイオフィードバック・メーター”と名付けられた、入力信号によって色や発光パターンが変化するユニークなウィンドウが設置されています。暗いところで見るとモヤ〜っと発光していて何ともミステリアスです。

秘密兵器のヌークリア・スイッチは
高品位なひずみ具合が特長


では実際に使ってみての印象を述べていきます。まずはクリーン・トーン系から。使用ギターはストラト・タイプです。ソロやアルペジオなど弾いてみました。う〜ん。うっとり。はっ! 楽しく弾いていたら1時間も経過してしまいました。次はファンク・カッティング。OPTO COMPのつまみは2時くらい、POST EQで2kHz辺りを少しだけブーストしました。いけます! かなりいけます!今度はブルース系。ドライブはお好みで、PRE EQで太いところを軽くブースト。これまたいけます! いなたいギターも十分いけます。同社より同時発売されたWomanizerは本機よりもっと渋め路線のプリアンプだそうですが、本機でもその辺りのサウンドに十分対応できると思われます。さて、ではひずませるかとヌークリア・スイッチをオン! これは真空管のゲインを20dBブーストするもので、お〜、素晴らしく高品位なひずみ方です。ギターのレンジにばっちり収まりつつ低域から高域までキメ細かいひずみが並んでいる感じ。PAUL REED SMITHのギターを使用しているアメリカのモダン・ヘビネス系のバンドのような雰囲気です。スラッシーな高速カッティングも気持ちよく、歯切れよいのが好印象。アンプ・シミュレーターはエッジ部分のリアリティが出せないものが実際多いのですが、本機は平気でした。POST EQでエッジ感を調整するといいでしょう。このPOST EQは実際の録音の際、マイクの位置をスピーカーのコーン部分から横にどれだけずらすかという変化に似ています。ハイを上げるとコーンの中央に近づく感じです。ブルース・ギターはもとより、ファンク、ハード・ロック、メタル、ビンテージなシューゲイザーもかなりいけそうです。ちなみに小生、本誌とは縁遠いデスメタル・フリークなのですが、どこまでダウン・チューニングに対応できるか7弦ギターで試してみました。この場合は本機のひずみが上品過ぎると感じたので、外部のEQでローエンドをブーストして600Hz辺りをQ狭めにズバッとカットしたところ、極悪なデスメタルっぽいサウンドに変身。燃えます!実は、原稿を書き始めて丸1日経ってしまいました。なぜかというと曲を書き始めてしまったからです。音色を聴いて曲を書きたくなる衝動に駆られるというのは何とも素晴らしいことではないでしょうか? ギターは弾いているだけでこんなに楽しい楽器なのだ……Demonizerはそんな気持ちにさせてくれる機材でした。

▲リア・パネル。左からギターイン、アンプ・アウト、ダイレクト・アウト

DAMAGE CONTROL
Demonizer
オープン・プライス(市場予想価格49,800円前後)

SPECIFICATIONS

■通常入力インピーダンス/1MΩ
■通常出力インピーダンス/100Ω
■最大出力レベル/0dBv
■外形寸法/228(W)×83(H)×185(D)mm
■重量/1.4kg