
SAGEELECTRONICSSE-BB1(通称BovaBall)を触る前に同社のWebサイト(www.sageelectronics.com/bb1.html)を確認したところ“なんぢゃこりゃぁ!”とジーパン刑事よろしく叫び声をあげ、本当に驚いてしまいました。果たしてこのマイクで音が拾えるのかいなと興味津々。まことにユニークであります。マイク・フロム・カナダ。カナダから届くのはラブレターだけではないのです。さて、このマイクはいかなるものでありましょうか。
球体ゆえに実現する
さまざまなマイク・アレンジ
外観から観察すると……はい、見ての通りまん丸です。球です。スペック表には“sphericallymountedcondensermic”と見たままの説明が……。ソフト・ボール大の本体に小型の高感度ダイヤフラムを搭載したエレクトレット・コンデンサー・カプセルをマウント。オール・ディスクリート、クラスA回路、無指向性、48Vファンタム駆動で、PADやローカット・スイッチなどの余計なものは一切無し。ハンド・メイドで1年間の保証付き。実に男らしい構成であります。レトロ・フューチャーなデザインと真ちゅう製のパーツも美しく、頑強な印象を受けます。まるで『スターウォーズエピソード4』に出てきそうなデザインですね。ちなみに、今回のチェックに協力してもらったミュージシャンたちは“目玉オヤジ”なるニックネームを付けていました。さらに、このマイクには特徴はあります。それは、マイキングの際の角度調整など、セッティングが非常に楽なところです。その大きさ故、狭いところにはセットできませんが、XLRコネクターが邪魔にならない範囲であればほぼ360°で好きな角度にセッティングできるし、スタンドとのジョイント部分の構造も秀逸。さまざまなマイク・アレンジが実現するところがとても気に入りました。
アコギやドラム録りに威力を発揮する
すさまじくエッジの効いたサウンド
まずは、アコースティック・ギターを録音してみましょう。比較用にSOUNDELUXU99を立ててチェック。マイキングはオーソドックスにネックのジョイント部辺りを狙い、40〜50cm離して、セットします。すさまじくエッジの効いた鮮明なサウンドというのが第一印象。U99も弊社にあるマイクの中では、比較的エッジの効いた抜けの良いマイクなのですが、SE-BB1はハイエンドに向かってさらに高域が強調されます。音数の多い楽曲の中でアルペジオなどを目立たせたいときにも良いかもしれません。ただし、少しSN比が悪いところと、出力は十分あるのですがゲインが上がり気味になる静かな曲だと少しヒスがわずらわしく感じるかもしれないところが気になりました。次は、ドラムで試しましょう。オーバーヘッドに立ててみたところ。中低域が足りないというわけではないのですが、高域が強めに出ているのでEQを使わなくてもすっきりとしたオフ・サウンドが拾えました。ペアでそろえてドラムのオーバーヘッド、あるいはキットとして全体を狙ったり、小モノが多いパーカッションを一気に録りたいときに重宝しそうです。また、ほかのマイクでスネア・ロールを録音しているときに、オン・マイクだけではザワザワした感じだったので、1mほど離れた場所からスネアに向かってSE-BB1を立ててみたところ、スネア全体が鳴り響いている感じを録音できました。距離感も自然で遠過ぎないのも好印象です。音源から少し離してセットすると良い結果が得られるのかもしれません。続いて、ルーム・アンビエンスもチェックしてみましょう。比較用のマイクとしてNEUMANNU87Aiを使いましたが、SE-BB1の独特な音色はしっかりキープされています。ただし、ボワついたアンビエンスが欲しいときには不向きかもしれません。何でもかんでもすっきりしていれば良いというのではないのが録音の難しいところで、当然マイクによって得手不得手というものがあります。また、無指向性とはいえ、球体の表面の1点にしか口(小型ダイヤフラム)がない構造ゆえ、U87Aiのようにほぼ360°に指向性があるわけではなく、真後ろからの音は入りにくいようです。つまり、大勢でマイクを囲んで歌うような録音にはあまりオススメできません。真横からははっきりと音を拾っていたので、音源をマイクに向かってコの字に並べた方が良いでしょう。個性的な製品を送り出してくれたSAGEELECTRONICSが今後どんな製品を届けてくれるのかも気になるところ。個人的な希望ですが、もう一回り小型の“BovaBallMini”や指向性違いの“カーディオイドBova”などはどうでしょうか?
SPECIFICATIONS
■指向性/無指向 ■最大音圧レベル/140dB ■インピーダンス/100Ω ■外形寸法/150(W)×190(H)×98(D)mm ■重量/0.9kg