ボイス関連機能を満載し、さらに進化した高品位ボーカル・プロセッサー

TC・HELICONVoicePro

TCの中でも声に関する製品だけを扱うのがTC・HELICONで、Finalizerなどを扱うT.C.ELECTRONICとは別ブランド。今回紹介するVoiceProは従来のVoicePrismPlusに代わるボーカル・プロセッサーの新ハイエンド・モデル。ピッチ・コレクトやハーモニー、ボイス・モデリングなどボイス関連機能をフル装備して、より洗練された製品に仕上がっているようだ。

声に最適化された効きのよいコンプ
過激な効果も可能なボイス・モデリング


まずは本機の主な特徴を把握しておこう。
●自然な効果のピッチ・コレクト(補正)
●4声のハーモニーを生成可能
●人格を変えられるVoiceModeling
●フレーズを伸縮できるFlexTime
●ハーモニーにも専用EQ&ダイナミクスを装備
●定評あるTCの空間系Multi-FX
●ひずみ系までカバーするTANSDUCER
●2イン/8アウトのデジタル入出力端子
●24ビット/96kHzに対応
●250ユーザー+250ファクトリー・プリセット
●ハイエンドにふさわしい高い操作性それではLEAD(メイン・ボーカル)セクションから見ていこう。入力信号は最初にEQとDYNAMICSで整音するのだが、このコンプがよく効いて気持ちいい。やはりボーカル専用にチューニングされているからだろう。次のTIMEはタイム・バッファーを利用してフレーズの伸縮ができるエフェクト。RateFreestyleモードではテープの回転を落としたような効果も作り出せる。PITCHでは上3/下5オクターブの大幅なピッチ・シフトや正確な音程に補正してくれるピッチ・コレクトに対応。補正した上でのトランスポーズもできる。そしてCHARACTERボタンから入るボイス・モデリング部では声質が最も大きく変わるResonance、EQより自然な効果のSpectral、音程のしゃくりを与えるInflection、人をスタイルごとに解析してデータベース化したVibratoといったエフェクトを用意。少々人工的にはなるが、人格まで変えられるような効果が得られるのがすごい。これらの構成は同社VoiceOneと大まかには同じだが、パラメーター名やプリセット数などが若干違い、細かく改良されているのが分かる。

Humanizeをオンにすることで
かなり生っぽい仕上がりに


次はEFFECTSセクションだが、HARMONYパート用にも独立したEQ&ダイナミクス系エフェクトが用意されているのがいい。本機では生成するハーモニー音を指定するのにスケールやコード名の入力など複数の手段が用意されているが、やはり最も手軽なのはMIDIキーボードを弾いての音程入力。実作業では音程を切り替えるタイミングを必ず微調整したくなるので、MIDIシーケンサーでの編集が断然速くて仕上がりも良い。ハーモニー音のレイテンシーも34msと少なく、テンポが速い曲でなければリアルタイムでも十分、実用範囲内だろう。そして、最も重要なのがHumanize(8スタイルを用意)というパラメーター。これをオンにすることでかなり人間的なかっこいいハーモニーに変化させられる。センド・タイプとして用意された空間系エフェクトのMulti-FXには定評あるTCのリバーブ&ディレイに加え、μModと呼ばれるモジュレーションも同時に使用可能だ。また、本機には予備入力としてダイナミクスやモデリング部分を通らないAUX入力があり、このMULTI-FX部分を単独のエフェクターとして使うこともできる。次のTRANSDUCER部ではメガホンや電話、ラジオ、アンプやディストーションなど、26種類のエミュレーション系エフェクトを用意。それほど音作りの幅が広いわけではないが、ボーカル・パートの加工用としては十分だろう。Matrix画面では上記エフェクト群にモデリングを加えた一覧から各ブロックのオン/オフの設定できるのがとても便利。この辺りは操作性は文句なくトップ・クラスだ。そして、やはり320×240ピクセルのカラーTFTは非常に快適で操作するのが楽しい。なお、リア・パネルのデジタル入出力端子(2イン/8アウトのAES/EBU)からはLeadVoiceVirtuaLeadを含め全ボイスをパラで出力可能だ(D-Sub25ピン&XLR変換ケーブルが付属)。さらにイーサーネット端子が付いており、オペレーション・プログラムのアップデートが可能となっている。以上、各機能を見てきたが、本機の一番の魅力はやはりヒューマナイズによる自然な4声ハーモニー生成能力だろう。もちろん、素材となるトラックをしっかりと録音&ケアしておくことや本機での細かいアジャストが前提だが、うまく設定すればかなりかっこいいコーラス・パートが作れるポテンシャルを持っていると感じた。現在TC・HELICONブランドだけでも新旧8機種あり、どれを買うか迷う人も少なくないだろう。機能を比較する上でのポイントは“ピッチ・コレクトの有無”“ハーモニー生成のボイス数と質”“ボイス・モデリングの有無”である。当然、新機種ほど各機能は洗練されているのでVoiceProとVoiceLiveが第一候補となるだろうが、実売価格で並べてみるとこの2台の間に入る旧機種も十分に検討に値するのが分かる。さらにT.C.ELECTRONICのIntonatorや各種ボイス関連のプラグインの方もチェックするのをお忘れなく。

▲リア・パネル。アナログ入力(XLR)×2,アナログ出力(XLR)×2、デジタル入出力(AES/EBU、2イン8アウト)、ワード・クロック入力、イーサネット端子×2(オペレーション・プログラム・アップデート/コントロール用)、MIDI入出力、RS-232(D-Sub9ピン)

TC・HELICON
VoicePro
オープン・プライス(市場予想価格/252,000円)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/12Hz〜20kHz(+0/−0.1dB)
■AD/DA変換/24ビット(デュアルビットΣサンプリング@6.1kHz)
■内部サンプルレート/44.1/48/88.2/96kHz
■インピーダンス/入力:11/4kΩ、出力:40/20Ω(バランス/アンバランス)
■外形寸法/483(W)×89(H)×274(D)mm
■重量/5.4kg