2ミックスの処理に最適なエフェクター3種を収めたアウトボード

WAVESMaxxBCL

ここ数年、DTMの技術革新は日進月歩の勢い。おまけにコンピューターやソフトの価格下落で今や誰でも気軽に音楽を作れるチャンスが与えられるようになった。DAWソフトに内包されているプラグイン・エフェクトだけでも、それを操る能力があれば望みのサウンドを作り上げることはできる。うん、できるよ。だけど、それにはそれなりの努力と根気が不可欠なんだよね。何でもトライ&エラーでやってみなければ分からないってことは、何も音楽に限ったことじゃないけれど。でも、その時間を少しでも短縮できたらなぁ……なんて思うのが普通の人間。弱さでもありますな。

豊富なデジタル入出力に加え
JENSEN製トランスも採用


前置きはこれくらいにして、早速レビューを。本機はプロ用プラグイン・メーカーとして既に世界中で絶大な信頼を得ているWAVESの24ビット(内部演算処理は48ビット)/96kHz対応アウトボードです。以前本誌で同社のMaxxBassという機種をチェックしているのだが、今回はさらに強力な機能がプラスされているらしい。ワクワク。まずはモデル名であるMaxxBCLって何?とカタログを見ると、B=MaxxBass、C=Renaissance Compressor、L=L2 Ultramaximizer Peak Limiterの3機種合体マシンだったのだ。なるほど、プラグインでも有名なこの3機をまとめて2Uに収めたというわけか。アウトボードにしたということは、当然ライブでの使用も考えてのことなのだろう。入出力関係はアナログ、AES/EBU、S/P DIFがあり、独立したリア・パネル上の6段階入力および出力ヘッドルーム・キャリブレーション(+9/12/15/18/20/24dBu)、そしてADコンバーターへのアナログ入力にはJENSEN製トランスを使用と、万全の構え。

セクション間の連携で
2ミックスの質感を自在に調整


まずはつい先日スタジオで出来上がった曲をMARK OF THE UNICORN 828のS/P DIFから直接MaxxBCLのS/P DIFへ入力。で、そのアウトをさらにYAMAHA 03DのS/P DIFへ。まずは一番左のRenaissance Compressorをかけてみる。つまみは単純にレシオとスレッショルドの2つのみ。アタックは0.5〜50msをボタンで切り替えるシンプルな操作性だ。浅くかけているときはマイルドな感じだが、少しきつめにしていくと、かなりエグイ効き方をするぞ。グシャッとつぶした音も出せるので、幅の広い音作りが可能だ。次はコンプレッサーをバイパス(このボタンも操作しやすくていいよね)して、中央のMaxxBassをいじってみよう。これはその名の通り低域を増強するセクションだ。25〜120Hzでプロセッサーの周波数を調整した上で、生成された倍音のミックスの割合を0〜100%で調整可能なのだ。これは特に小さなスピーカーや音量を上げていないときに聴こえづらくなる低域部分の音の補正に使うんだな。もちろん、もっとエフェクティブに増強する使用方法もアリだ。そんでもってこのMaxxBassは、コンプレッサーの前にも後ろにもボタン1つで切り替えが可能。つぶしてからローを足すのか? ローを足してからつぶすのか? これができるかできないかでは大違い。シンプルながら無くてはならない機能だね。最後はご存じL2リミッター。もはやパソコン内部では当たり前だが、過入力を防ぐ先読み処理ができる優れもの。スレッショルド(0〜18dB)や上限出力(0〜18dBFS)も調整可能だから、オーバー・レベルで悩む心配も無しってわけ。ソースを鳴らしながらコンプレッサーのかけ具合を変えつつ、MaxxBassで低域を足してみる。すると、いとも簡単にふくよかなサウンドになる。特にキックとベースのなじみ方が抜群に良くなる。マスタリングでこの手のアウトボードやプラグインを複合的にかけても、なかなかこうは簡単に気持ちのいい低音にはならないよなぁ。う〜む、参った。しかし、これだけではハイが足りなく感じてしまう。そこで、これまでバイパスしていたL2をかける。すると、これがまた足りなく感じていた帯域の音を見事に引き上げてくれる。そのおかげで楽器の定位感が、作り手のイメージ通りにくっきりと出てくるのだ。各セクションの少ないつまみをいじるだけで音のバランス、カラーが見事に変わってしまう。これってありですか?(笑)いろいろと悩んで最終段階まで来ていたものをここまで変えることができる本機は、あまりに危険過ぎて絶対に欲しくなります。特に小音量で制作している人には効果てきめん。ある意味、今どきのメジャー・サウンド向けの秘密兵器かもしれん。ライブPAにも絶対に合うと思うなぁ。

▲リア・パネル 左よりワード・クロック入力、S/P DIF入出力(オプティカル/コアキシャル)、AES/EBU入出力(XLR)、アナログ出力(フォーン、XLR)、アナログ入力(フォーン&XLR)

WAVES
MaxxBCL
オープン・プライス(市場予想価格/378,000円)

SPECIFICATIONS

■最大アナログ入力ゲイン/24dBu
■入力インピーダンス/32kΩ@1kHz(バランス)
■出力インピーダンス/600Ω@1kHz
■周波数特性/−0.4dB@20Hz、 0.05dB@21kHz
■外形寸法/482(W)×88(H)×243(D)mm
■重量/7.8kg