新設計の回路を搭載したマルチパターン真空管コンデンサー・マイク

TELEFUNKENRFT M16

TELEFUNKEN RFT M16という真空管コンデンサー・マイクが発売された。新たにTELEFUNKEN NORTH AMERICAが開発を手掛けるようになってオリジナル・マイクロフォンの復刻などにかなり力が入っているが、今回は新製品のリリースである。値段的にはかなりリーズナブルではあるが、果たして実力はどれくらいのものだろうか。

新設計の回路を採用し
デッドストックの真空管を搭載


まずは外観。TELEFUNKEN特有のシンプルな見た目である。大きさ、カタチ的には同社のEla M14、他社製で言えばAKG The Tube、C12辺りとほぼ同一。色合いはおなじみのTELEFUN KEN色でビンテージ・マイクをほうふつさせる。仕様については“マルチパターンの真空管コンデンサー・マイクで、真空管にはデッドストックのPHILIPS JAN 12AX7Aを使用。また、かつて無い回路の採用により、低価格でありながら高級機種をも凌駕しかねない音質を誇る”ということで、電源ユニット側で無指向から双指向まで選択可能。特に驚いたのは価格で、マイク本体、電源ユニット、ケーブルなどの通常セットであれば販売価格169,000円。これは破格である。なお、今回のレビューはいわゆる通常セットで行うが、ラインナップとしてはRFT M16 Special Edition(販売価格239,000円)、RFT M16 Platinum(販売価格299,000円)という限定バージョンも用意。Special Editionは真空管マイクロフォン用ケーブル(シャンパン・ケーブル)を採用し、ノイズを完璧にシールド。さらに内部回路の一部をチューンナップ、真空管にTELEF UNKEN ECC83を採用したもの。PlatinumはSpecial Editionの仕様に加えてTELEFUN KEN K47同等品のカプセルに交換済みとのこと。ケーブル類はそれだけでガラッと変わることが多く、個人的には一緒に比較してみたかった。

TELEFUNKENサウンドを踏襲し
現代のポップスでも活用可能


肝心のRFT M16のサウンドが気になるところ。まずはアコースティック・ピアノで試してみよう。ステレオで狙って確認したいところだが、あいにく今回のレビュー用には1本しかない。そこで、モノラルで成立するようにピアノ全体をカバーするようにセッティングしてみた。少しオフマイク寄りのセッティングだが、オフマイクの臨場感にプラスされて1つ1つの音の粒立ちがよく分かり、かなりブライトな印象を受ける。ダイナミック・レンジが広く、ほかのTELEFUNKENのモデルの中でも特に勢いのあるサウンドだ。指向性の特性は単一指向であってもやや広いようである。次にアコースティック・ギターで試そう。細かなニュアンスまでよく拾うことができ、ピッキングの強弱も非常にリアルである。ただ、非常に敏感なマイクのようで、プレイヤーのちょっとした身ぶりや振動、服の衣擦れも気になったので、あまりオンマイクでのセッティングには向かないかもしれない。セッティングによってはカッティングのフレーズでも音を拾い過ぎて音が飽和してしまうという状態にもなる。続いてボーカル。ボーカルは張りのあるサウンドで、簡単に言ってしまえば“EQ要らず”。通常の歌のレンジで、もうちょっと歌詞が分かるようにハッキリさせたいといった部分は、M16の特性で既に調整されているように感じる。声量があまり出ず、音質的にもこもりがちになってしまうコーラスの低域パートでもEQで補正しなくても存在感は十分だ。音質的にはハイファイという感じではなく、全体的に元気な音である。ただ、そのときに気になったのはリップ・ノイズ。メイン・ボーカルで使う場合、言葉の最初の部分の立ち上がりが意図せずに鋭くなり、ソフトに歌っているはずが強めに感じることがあるのだ(コンプなどは使用していない状態)。ここまで試してきて感じるのは、確実にTELEF UNKENサウンドを受け継いでいるということ。その中でも位置づけを言葉にするなら“現代のポップス向け”“若いサウンド”というところだろうか。エッジがハッキリしていて張りのある音はまさしくTELEFUNKEN。しんが強く分厚いバックのサウンドの中でも負けないキャラクターである。気になる部分を紹介するとすれば、レビューしたM16の音は機材としてなじんだものなのかということ。というのも、音が少し硬く感じるのだ。確かにTELEFUNKENサウンドだということは分かるが、最初に感じるのは“ん? 硬いかな?”という印象。パッと聴いた時にはその硬さでキャラクターが立ち、良いように聴こえるが、曲によっては行き過ぎのような硬さを感じることがあるのだ。この辺りはしばらく使い込んでみたいところである。あと、欲を言えば中低域の温かみ、膨らみがもう少しあると楽器や声質で迷わずオールマイティに使えると思う。元気があって良いのだが、いつでも全開!という感じがして情緒を出したいバラードやアコースティックなサウンドでは音が立ち過ぎるような感じがする。とは言え、総論は“この値段でこの表現力は高レベル”というもの。まさにEQ要らずで、偉そうだが、私がイメージしたようなサウンドを求める向きは重宝するだろう。新品の状態では硬い感じはするが、間違いなくTELEFUNKENサウンドだということは明らかで、使い込むうちに深みも増してくると思われる。それがリーズナブルな価格で手に入るのだから、持っていて損はないはずだ。
TELEFUNKEN
RFT M16
オープン・プライス(市場予想価格/169,000円)

SPECIFICATIONS

■指向性/無、単一、双
■外形寸法/45(φ)×241(H)mm
■重量/830g(本体)
■付属品/マイク・ケース、電源ユニット、ショック・マウント、専用ケーブル