ステレオ8系統の入力に加えコンプ/リミッターを備えたサミング・アンプ

AUDIENTSumo

1997年に設立されたAUDIENTは、PAおよびレコーディング用の大型コンソールやサラウンド・モニター・システムなどのアナログ・タイプのプロ・オーディオ・システムを送り出してきたブランド。今回紹介するSumoはAUDIENTから発売されたサミング・アンプで、8系統のステレオ入力を搭載しています。そもそも、サミング・アンプとはDAWからの最終的な出力をアナログ回路によってミキシングをするシステムですが、本誌的にはミックス・バッファーという表現の方が分かりやすいかもしれません。最近、同様の製品をよく見かけますが、その辺りのことも意識しつつ実際の使い方を紹介し、Sumoのポテンシャルを探っていきたいと思います。

機能的にレイアウトされた
ツマミ群と入出力部


まずは簡単にSumoの概要を説明しましょう。インプットは8系統のステレオ入力 (ch1〜4はモノラル設定も可能)を装備。本機を4台カスケード接続することで64chのシステムを構築できます。ステレオのマスターとモニターを別々に出力できたり、外部エフェクターなどのインサートも可能です。さらに、コンプとリミッターも装備しています。フロント・パネルにはミックス・ゲイン (−20〜0dB)、ダイナミクス・セクション(コンプ/リミッター)が並び、レシオは1:1.5/2/4/10/20、アタックは0.1/0.3/1/3/10/30ms、リリースは0.1/0.3/1.2/2.4sもしくはAUTOをクリック式で設定可能。スレッショルド・メイクアップ・ゲインは可変式で、ほかにも、マスター出力ゲイン (∞〜+6dB)、モニター出力ゲイン (∞〜0dB)が並び、1Uのボディは機能的にデザインされています。 リア・パネルは8chがセットとなっている2つの入力部(1〜8/9〜16)とエクスターナル入力 (8in)の計3つのD-Sub25ピン端子が並び、ステレオのマスター/モニター用のXLR出力端子も用意されています。ほかのサミング・アンプにはあまりないモニター・アウト (可変)を装備しているのはうれしいところです。同社のレコーディング・コンソールASP 8024などと同様に、ユーザーの視点に立った設計が施されていることがうかがえるのはうれしいところです。さらに、別売りのオプション・ボードを装着すれば、AES/EBU、S/P DIF(コアキシャル)による出力およびワード・クロック (44.1kHz〜192kHz)の入力も可能です。

ダイナミック・レンジや定位感が広がり
サウンドは自然な印象に


では、実際にSumoを使ってみましょう。筆者はDIGIDESIGN Pro Tools|HD Accelを使用し、本機とDIGIDESIGN 192 I/Oを4つのステレオ出力に分けて接続し、ミックスの完了したセッションを数曲聴いてみました。比較対象はPro Toolsの内部ミキサーの出力です。Sumoに通すと、音の立ち上がり、つまりスピード感が増し、さらにダイナミクス・レンジやステレオ感、定位感が広がります。192 I/OのDAコンバーターを複数の出力に分割した影響で、音の解像度がさらに上がっているのかもしれません。続いて、モノラル入力設定にしてチェックしましょう。ステレオで出力したときよりも音像がハッキリしたのに加えて、ベースやキック、スネアなどは抜けが良くなります。ボーカルやリード楽器は特に存在感が増し“一皮むけた”印象です。次はダイナミック・セクションです。実際にソースを入力してみると意外に細かく設定できることが分かります。ただし、深くかけ過ぎると途端に抜けが悪くなるので注意してください。コンプやリミッターは一般的なアウトボードと同じような設計です。スレッショルドやメイクアップ・ゲインは最終出力に使うことを考慮して、もう少し細かいところまでコントロールできればなお良いと思います。それと、リダクション・メーターが振れる前に若干効果が出始めることがあるので、欲を言えば、もう少しデリケートなメーターが欲しいところです。Sumoを使いミックスを仕上げていくと、リバーブの切れ際の感じや空間系エフェクターの影響によって起こる位相の変化、EQやコンプをかけ過ぎたところなどの内部ミックスでごまかされていた部分が明確になりました。実際、ミックスの最終段階でSumoを使うと、ミックス・イメージが変わってしまうので、作業のスタート時から使うといいかもしれません。デジタル・ミックスによる整然とし過ぎた音をSumoのアナログ回路内で処理すると、サウンドは自然な印象となります。しかし、Sumoによる音の変化は実際に体験してみないとイメージするのは難しいかもしれません。プロの現場から、アマチュアの人まで一段階上のDAW環境作りを目指すのであれば一度体感してみてはいかがでしょうか。

▲リア・パネルにはモニター出力 (XLR)、メイン出力 (XLR)、エクスターナル入力 (D-Sub25ピン)、インプット9〜16 (D-Sub25ピン)、インプット1〜8 (D-Sub25ピン)、インサート・センド、インサート・リターン(ともにフォーン)が並ぶ。 AES/SPDIFアウトプット・オプション装着すればS/P DIF出力(コアキシャル)、AES/EBU出力、ワード・クロック入力を追加可能

AUDIENT
Sumo
281,400円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/22Hz〜22kHz±0.1dB (−3dB@135kHz)
■最大入力/+28dBu
■入力インピーダンス/10kΩ
■出力インピーダンス/75Ω
■ヘッドルーム/24dB ref +4dBu、27dB ref 4dBu in mix amp
■クロストーク/−80dB@1kHz
■ノイズ/−92dBu
■ひずみ/0.003%@1kHz
■ダイナミック・レンジ/120dB
■外形寸法/482 (W)×278 (H)×45 (H)mm
■重量/4.5kg