音声と映像を同時に制御できる高性能オーディオ/ビデオ・ミキサー

NUMARKAVM01

近年ますます音楽と映像がボーダーレスになりつつあり、音楽クリエイターが映像まで手掛けたり、逆に映像サイドが音まで扱うことも珍しくなくなってきています。となると、当然ライブや制作現場において、すべて1人でコントロールしなくてはならない場面が多々出てくるわけですが、そんな状況の中、DJ機器で定評のあるNUMARKよりオーディオ/ビデオ・ミキサーのAVM01が登場しました。今回は同時リリースされたデュアルDVDプレーヤーのDVD01(124,950円)、3スクリーンLCDディスプレイ、VM03(124,950円)とのセットで早速チェックしてみましょう。

シンプルなレイアウトながら
多彩な映像エフェクトを搭載


まずはAVM01から。オーディオ・ミキサーとビデオ・ミキサーを融合させた本機は予想していたよりシンプルかつ分かりやすいレイアウトで、マニュアル無しでも直感的にどんどん使っていける感じです。上部の銀色のパネルの部分に映像のコントローラーが配置され、下部の黒いパネル部分にオーディオのコントロール部が置かれています。さらにこの映像部分では、2つの映像ソースに対しての合成エフェクト・セクション(パネル上段)とそれぞれのバス(A/B)に独立してかかるエフェクト・セクション(パネル中段)に分かれています。エフェクト・セクションのバス・エフェクト部にはモザイク、ストロボ、フリーズ、ペイント、インバートといったエフェクトがあり、それらを複合して用いることもできるので、かなりのエフェクト・バリエーションを作り出すことができます。 またパネル上部のセクションでは、ミックス、ワイプ、ピクチャー・イン・ピクチャー(PIP)、キーの4つのモードが用意されており、各モードに対応したファンクションとの組み合わせにより、96種類のワイプ、6種類のPIP、2種類のクロマ・キー(ブルー・スクリーン)、2種類のルミナンス・キー(ブラック・スクリーン)などが可能となっています。パネル上部のジョイスティックはワイプやPIPのコントロールに使用します。これらのエフェクトを試してみて、非常に滑らかで繊細なかかり方をするように感じました。さらに便利な機能として、映像用のクロスフェーダーとその上にあるオートフェーダー・ボタンにより瞬時にオートフェードが可能。これは実際の現場ではかなり重宝するのではないでしょうか。このように使い勝手のよいエフェクトを盛り込んだ映像部分に対し、オーディオ部分はあくまでミキシングとキュー・コントロールに徹しており、EQやエフェクトは搭載していないのですが、その点に関しては、入力する外部機器側で十分カバーできると考えているように思います。また最もよく使う映像とオーディオのクロスフェーダーは上下に配置されていて、それぞれのフェーダーの重さが用途の違いに応じて微妙に変えられているなど細かい配慮がなされており、レスポンスも非常によいので使いやすく感じました。1人で映像も音楽もコントロールすることを考えると、扱うパラメーターも膨大になってくるわけで、そうした現場での操作性を第一に考えたレイアウトのように思いました。

さまざまな用途に対応する
豊富な入出力を装備


インプットに関しては映像入力が4つあり(コンポジット×2、 S-ビデオ×2)、どの入力をバス(A/B)に送るかはパネル上で瞬時に切り替えることができるようになっています。またそれぞれの入力に対応したモニター・アウト(コンポジット×4)を装備しているので、外部映像モニターを使えばバスに送る前の映像を常にチェックできるようになっています。オーディオ入力はクロス・フェーダーに対応したステレオ2系統(RCAピン)、さら独立したステレオ入力1系統(RCAピン)とマイク入力(TRSフォーン)があり、ライン入力、マイク入力ともオーディオ・パネル上のそれぞれのフェーダーでコントロールできるようになっています。マスター出力は2セットあり、それぞれステレオ音声、コンポジット・ビデオ、S-ビデオの出力端子を装備。音声の出力レベルはマスター・フェーダーでコントロールできるようになっています。これらの入出力とパネル上でできることを付け合わせて考えていくと、一見シンプルなレイアウトにもかかわらず、かなりフレキシブルな使い方が可能でしょう。もちろん次に紹介するDVD01のようなデュアルDVDプレーヤーとの組み合わせだけでも十分面白いのですが、さらにビデオ・カメラからのリアルタイム映像や、コンピューターからの映像出力なども入力ソースとして並列させておき、それらをバス・アサインで切り替えていくといった使い方など考えると、かなりいろいろなシチュエーションに対応できるのではないかと思います。またオーディオ入力もステレオで3系統(+マイク入力)あるわけですから、例えばそこに外部入力としてABLETON Liveなどを組み込めば、音楽側からでも映像側からでも相当自由度の高い相互リアクションが可能になり、素材をリアルタイムで"パフォーマンス"にまで仕上げていくことさえできると思いました。

シンプルでコンパクトな
デュアルDVDプレーヤーDVD01


さて、次はデュアルDVDプレーヤーDVD01。本機はプレーヤー部とコントローラー部に分かれているのですが、コントローラー部の外観は青色のLEDとラバータッチのボタン類が美しく配置されていて高級感があります。このコントローラー部は外部のビデオ・ミキサーを使わなくても映像の切り替えができるようになっており、またトラックやチャプターの再生順番をプログラムできたり、ループ再生やキュー・ポイントの設定など基本的操作が非常にやりやすくなっています。このプログラム機能は、素材をたくさん詰め込んだDVDでパフォーマンスを行う際に非常に有効だと思います。さらにDVDのメニューにも簡単にアクセスができ、DVDのフォーマットによってはアングルやキーといったファンクションも使用できるようになっています。再生速度はコントロール部のフェーダーを使って±50%で調整可能な上、さらに微調整もできるようになっているので、通常のCDターンテーブルのようにテンポ合わせが行えるほか、片方のプレーヤーではDVDの映像の再生スピードをコントロールし、もう一方ではCDの再生コントロールに使う方法なども考えられます。映像出力端子はコンポジットとS-ビデオ端子が各プレーヤーにあり、さらにマスター映像出力としてコンポジットが1系統あります。オーディオ出力端子は各プレーヤーにRCAピン(ステレオ)とコアキシャル(サラウンドのデジタル・オーディオも出力可能)が備わっています。また映像の出力方式がNTSCとPALの両方に対応しているので、海外での使用もスムーズです。インターフェース的には同社のデュアルCDプレーヤー、CDNシリーズを引き継いでいるようですが、残念ながら本機にはジョグダイアルは装備されていません。キュー・コントロールのためにはジョグダイアルがあった方がいいかなと思いますし、スクラッチ機能も欲しいところです。ただ前述したように、このセットで完結させて使うのではなく、さまざまな映像ソースを並列させて使うことも考えていくと、本機ではDVDのベーシックなコントロールに徹したのも理解できるような気がします。何より、今までだとDVDプレーヤーを2台用意しなくてはいけなかったものが、これだけ操作性よくコンパクトにまとまっているだけでも十分利便性があるように思います。

最大6つのソースをモニター可能な
3スクリーン・ディスプレイVM03


そして最後は3スクリーンLCDディスプレイVM03です。各スクリーンはTFT方式の5インチ液晶ディスプレイでスクリーンのアングルは96度まで自由に調整できるので、置き場所には融通が利きます。外観的にも非常にスマートで、それだけでも自分のシステムの中に組み込んでおきたい感じです。それぞれに2系統のコンポジット入力を備えており、各モニター下のスイッチにより最大6つの入力ソースを切り替えながらモニターすることが可能です。さらにそれぞれの入力に対応したバス・スルー端子(コンポジット)も備えているため、スルーしてほかの映像機器の入力に接続することもできます。この余裕ある入出力は、前述したようなAVM01にフルに映像を入力しているケースや、さらにシステムを発展させた際にも十分威力を発揮します。また、こちらもNTSCとPALと両方対応しているので、海外での使用も可能になっています。これらは3機種ともテーブルトップにもラック・マウントにもなるように設計されているので、ライブ・スペースなどの常設機器としても重宝するように思います。今回の3機種は、ともすると映像と音を同時に制御することで煩雑になりかねない状況を見越して、手に余るような多機能型ではなく、むしろ必要な機能だけを使いやすくまとめ、かつさまざまなシステムを組むだけのフレキシビリティを持たせたコア・システム的な位置付けのように感じました。個人的にはこの組み合わせは大変魅力的で、ソロ・ライブの際これにラップトップを加えて使うことを考えると、今までとは違ったアプローチが可能になりそうです。

◀DVD01



◀DVD01プレーヤー部のリア・パネル。左よりビデオ・アウト(S-ビデオ)、ビデオ・アウト(コンポジット)、オーディオ・アウト(RCAピン)、デジタル・アウト(コアキシャル)、コントローラー・コネクター。中央のマスター・ビデオ・アウト(コンポジット)を挟んで右側も同構成



▲VM03



▲VM03のリア・パネル。左よりビデオ入力×2、ビデオ出力×2(コンポジット)。右の2つのディスプレーも同じ構成



▲AVM01のリア・パネル 左よりマイク入力(TRSフォーン)、ビデオ・モニター出力×2(コンポジット)、ステレオ音声入力×2(RCAピン)、ビデオ入力×2(コンポジット)、ビデオ入力×2(S-ビデオ)、ビデオ・モニター出力×2(コンポジット)、ライン入力(RCAピン)、ステレオ音声出力×2(RCAピン)、ビデオ出力×2(コンポジット)、ビデオ出力×2(S-ビデオ)

NUMARK
AVM01
124,950円

SPECIFICATIONS

■ビデオSN比/48dB(コンポジット) 、 50dB (Y/C)
■オーディオSN比/60dB
■外形寸法/475(W)×100(H)×250(D)mm
■重量/4kg