宅録からPAの現場にまで対応する24ch仕様のアナログ・ミキサー

SOUNDCRAFTLX7 II

ハード・ディスクによる自宅でのデジタル録音が主流の現在、一度録音した音をわざわざ取り出してアナログ機器を通したりと、クリエイター、ミュージシャン、そしてエンジニアが"アナログ"なサウンドに一層の魅力を感じ、それを求めているのは間違いありません。今回はそんな一歩上を行く"宅録エンジニア"や"音質重視のPA現場"の強い味方になってもらえそうなアナログ・ミキサーの紹介です。

コンパクトながらワンランク上の
豊富な入出力/機能を装備


LX7 Ⅱには16chモデル(304,500円)もありますが、今回は24chの方をチェックしてみたいと思います。外見はかなりのコンパクト・サイズ。重量も21.8kgと決して重くはありません。フェーダーもこのクラスにしては珍しく100mmのものが採用されています。これならPAの現場でも細かいバランスが取りやすそうですね。次に各チャンネルを見てみましょう。まず気になるのはパラメトリックEQの下に付いている2つのスイッチです。1つはEQのON/OFFスイッチ。これなら瞬時にEQした音とフラットな音を聴き比べられます。もう1つの赤いスイッチは......何と、より高価な卓に装備されているチャンネルのダイレクト・アウト機能を備えているのです! このスイッチを押すことにより、フェーダー1〜16のプリかポストの信号を取り出せます。本機のヘッド・アンプは音が良く、宅録でも通すだけで高品位な"アナログ・サウンド"を得ることができます。また、録音にどうしてもコンデンサー・マイクを使用したいときがあります。プロのPA現場もしかり。小さい卓はファンタム電源が一斉式のものが多く、使いづらい思いをしていましたが、このLX7 IIは4chずつファンタム・グループがセパレートしてあるので、思いのままにインプット・プランを立てられます。EQもこのクラスでは贅沢な4ポイント構成。Midの2つがスウィープ、Hiが13kHzの固定(輪郭を付けるポイント)、またLowも80Hzの固定と、最近の流行にも十分対応できるよう、サブローを意識した仕様となっています。さらに特筆すべきは、LX7 IIは中規模の会場にも十分対応可能なL/R/C、4グループ、6AUXの豊富な出力系統を装備していること。また小型ながら、各チャンネルの1〜4AUXは2系統ごとにプリ/ポストフェーダーに切り替えられ、エフェクターやモニターへの出力など状況に応じた設定が細かく行えます。ちなみに残り2つはポスト固定。楽器や声はプリで送って、フェーダーを使うCDやMDのオケ用チャンネルだけはポストで送るなんてことも可能です!

ヘッド・アンプに余裕のある
原音に忠実なサウンド


ではテンションが上がりきったところで、実際にPA現場に持ち込んで使用してみたいと思います。今回はライブ・ハウスの許可を得て、常設のミキサーと入れ替えて使用してみました。最初にキックを入力してみて、ヘッド・アンプの余裕のあるサウンド、再生能力の豊かさに驚かされました(ちなみにヘッド・アンプはこの卓のために開発されたそうで、高入力インピーダンスと低ノイズを実現し、原音に極めて忠実です)。先述のEQも非常に正確で、Q幅も広過ぎず狭過ぎず、ちょうど良いです。スウィープのMidを少し切り、80HzのLowを少々足しただけで、タイトで体に感じるキックがアウトボード無しでも簡単に作れました。非常に好感触です!次にキーボードを再生してみました。思った通り、高域から低域まで極めてフラットで、どの帯域にも無理が無く、ゲインを上げれば"引き出しをスッと引くように前に出てくる"という表現がふさわしい感じです。ほかの楽器、さらには声を入力しても"上品で余裕がある"というイメージは変わりませんでした。チェックさせていただいたライブ・ハウスは以前から何度か仕事をしたことある所なのですが、いつも苦労して作っていた音が難なく出ることに、自分でも感動しました。SOUNDCRAFTは豊富な経験と現場からのフィードバックをこの小さなミキサーにも反映させ、こだわって1つ1つの製品を作り続けていることに本当に驚かされます。コスト・パフォーマンスが高く、良い音が出る本機が出回ったら、エンジニアの立場が危うくなりそうなので、コッソリ自分だけが買いたいミキサーです!

▲リア・パネル。左上よりインサート×8、ライン入力×8(TRSフォーン)、その下にマイク入力×8(XLR)、グループ入出力×4、ミックス・インサート×1(TRSフォーン)。中央のマスター・セクションは左上よりモニター出力(TRSフォーン)、2トラック入力(RCAピン)、ステレオ・センド/リターン×2、AUX出力×6(TRSフォーン)、メイン出力L/R/C、トークバック・マイク入力(XLR)、右側の入出力セクションは左上よりインサート×16、ライン入力×16(TRSフォーン)、マイク入力×16(XLR)、ダイレクト・アウト×16(TRSフォーン)

SOUNDCRAFT
LX7 II
388,500円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz (+0/−1dB)
■高調波歪率/<0.008% (+10dBu、1kHz)
■外形寸法/856(W) ×174 (H : つまみ、フェーダーを除く)×503(D)mm
■重量/21.8kg