臨場感を鮮やかに表現する小型/軽量のバウンダリー・マイクロフォン

AKGC542 BL

AKG C542 BLは形状が普通のマイクロフォンとは異なる平板形のバウンダリー・マイクロフォンで、床や壁、天井、机の上などに置いて(張り付けて)使用します。バウンダリー・マイクロフォンは、ユニットを反射板に埋め込んでマイク周辺からの反射音を収音しないように設計されていて、直接音と第1次反射音との干渉が少ないため、オフマイクでも比較的クリアに音を収録できるのが特徴です。一般的には、例えばテレビのトーク番組などで、テーブルの上にセットされているのを見た記憶がある方もいらっしゃると思います。では、早速C542 BLを紹介していきましょう。

どこにでも設置可能な
小型で軽量なデザイン


C542 BLの特徴ですが、外見的に私が知っているこれまでのバウンダリー・マイクロフォンに比べ、小型軽量となっています。デザイン的にもすっきりしていて視覚的に目立たないのと同時に、この軽さは壁や天井などに張り付けてセットする場合たいへん便利です。またマイクロフォン本体から直接ケーブルが出ており、その先のXLRコネクターの部分にベース・カット・フィルターが付いているところなど、なかなか面白いアイディアだと思いました。C542 BLをレビューするにあたり、私が今までに実際のレコーディングでバウンダリー・マイクロフォンを使用した経験を振り返ってみると、リズム録りの際にドラムのアンビエンス・マイクとして使用したり、ストリングス・セクションのレコーディングにオフマイクとして使用したりしたことがほとんどです。また、ライブ・レコーディングの際、ステージ上の客席側にセットし、オーディエンス・マイクとして使用したこともありました。

空気感をリアルに表現する
ブライトなサウンド


今回は西麻布にあるワーナーミュージック・レコーディング・スタジオのA studioにて、実際のレコーディングで使用してチェックを行いました。当日は、某男性シンガー・ソングライターの方のレコーディングで、その日、新たに1曲を録音してミックス・ダウンまで行うというものでした。オケの編成はピアノと本人のアコースティック・ギターのみのベーシック・トラックに、ストリングス・カルテットをダビングするという、シンプルかつ生楽器の音が要となる曲でした。まずベーシック・トラックのレコーディングの際に、アコースティック・ピアノのオフマイクとして、本機を楽器から約2m離れた床にセットしてみました。次にストリングス・カルテットのダビングの際にメインで使用したステレオ・ペア・マイクをセッティングした位置の真下の床にセットして試してみました。その結果、音色的にはどちらも同封されている周波数特性表が示すように、聴感上でも高音域が持ち上がった、かなりブライトなサウンドに感じられました。この周波数特性は意図的なものなのか、それとも構造上のものなのか、ちょっと興味があります。また、セットする位置を変えることによる音色の変化、音源からの距離感の変化が大変分かりやすいという印象も受けました。最終的なミックス・ダウンの際には、それぞれメインで使用しているマイクロフォンの音にプラスして、スタジオの空気感を表現するために、バウンダリー・マイクで収録した音を実際に混ぜて使用し、サウンドの隠し味として役立てました。今回は試せなかったのですが、例えばロック系のドラムのレコーディングにアンビエンス・マイクとして使い、コンプレッサーなどで音色を調整すると、効果的なサウンドを作ることができそうな感じがします。また、ライブ・レコーディングなどではアコースティック・ピアノを録音する際、ピアノのふたを閉めた状態で収録しなければならないケースも多いので、その場合ピアノのふたの裏に、このバウンダリー・マイクを張り付けて使用すると良い結果が出るのではないでしょうか。それから今回は1台でのチェックでしたが、2台をステレオ・ペアで使用した場合、どのような臨場感(ステレオ感)になるのか、機会があればぜひ聴いてみたいと思います。またスタジオなどにとっては、マイクロフォンのバリエーションを増やすにあたって、購入しやすい価格も魅力的です。C542 BLは、レコーディング・スタジオでの収録やライブ・レコーディング。会議やインタビューの収録、また、小型/軽量の利点を生かし、街中でのSEの収録などでも活躍することでしょう。今回C542 BLのチェックをさせていただいて、私自身バウンダリー・マイクロフォンの存在をあらためて認識する良い機会になりました。今後も自分の仕事の中での、マイクロフォンの選択肢の1つとして積極的に使用していきたいと思います。 中での、マイクロフォンの選択肢のひとつとして積極的に使用していきたいと思います。
AKG
C542 BL
39,900円

SPECIFICATIONS

■指向性/無指向性(半球型)
■周波数特性/20Hz〜20kHz
■感度/20mV/Pa(−34dBV)
■最大SPL/130dB
■SN比/78dB
■インピーダンス/600Ω以下
■ベース・カット/150Hz、12dB
■寸法/80(φ)×5(H)mm
■重量/56g(ケーブルを除く)